孤独や不安を感じる年末年始
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私は年越しを新宿・歌舞伎町や上野などで飲みながらすることが10年以上も続いていました。それが3年程前から違って来ています。私も関わっている「Live on」(リヴォン)は、2010年の大晦日は大阪の應典院で「年越しいのちの村」を行いました。生きづらさを抱えている人たちがともに過ごしたのです。
年末年始は孤独や不安を感じることがあります。浮つく時期でありながらも孤独感を抱いたり、親族と会う機会が増え、例えば精神疾患を抱えている人にとっては居場所のなさを感じるシーズンなのです。普段から回線がいっぱいの「いのちの電話」にも、繋がらないと知りながらも電話してしまう人も増えます。私のところにも電話があったりします。そんな人たちが少しでも安心できる空間で過ごしたのです。
2011年と2012年は、石巻市のにっこりサンパーク仮設住宅で年越しそばを配る企画をしました。2010年のときにも沖縄そばをいただいた沖縄の女性から、今年も沖縄そばの寄付をいただきました。このときも年越しそばを送っていただきました。また、尾角さんが住んでいる近所の八百屋さんからもみかんもいただきました。
年越しそばを配る企画は、震災取材を通じて知り合った、栗原市の通大寺住職、金田諦應さんらが行なっている移動喫茶「カフェ・デ・モンク」、また以前から自死遺児支援などのグリーフサポート活動を行っている一般社団法人「Live on」(リヴォン)の尾角光美代表らが中心となったものです。
今回はリヴォンの幹事で、公認会計士のロアン・エリザベス・コーマンさんも参加しました。出身国・ニュージーランドでも2011年2月22日、クライストチャーチで大地震がありました。ロアンさんの知人の母親がクライストチャーチの地震で亡くなっりました。ロアンさんの母親もクライストチャーチの学校で教えているそうですが、当日にはたまたまいなかったので無事だったといいます。こうした経験があるロアンさんには、東日本大震災の規模は違うものの、仮設住宅で暮らす人たちの苦悩を想像することができるそうです。
昨年知り合った女の子はもう中学生になっていました。その女の子はもう中学一年生。仮設住宅で暮らす人の話では、吉浜小学校唯一の卒業生だといいます。ほかの子たちは転校していったそうです。その女の子は私の顔を覚えていて、「遊ぼうよ?」と声をかけてくれました。帰るときには「もう帰っちゃうの?」と残念そうでした。一年に一度しか会わないのに覚えていたという意味では、年越しそばの企画が楽しみだったのかもしれません。
同小学校は校舎が津波の被害にあいました。同校の近くには、市役所の北上総合支所がありますが、そこに避難していた57人中54人が亡くなりました。このうち、小学校の児童7人が含まれていました。
ちなみに、「カフェ・デ・モンク」は移動喫茶ですが、住職らが行なう傾聴活動も信頼を得ている要因です。金田さんらは被災者の想いをじっと聞いています。活動のメドは8月だといいます。活動を初めて二年目となる8月を境に、被災地のお寺の住職たちにバトンタッチをしようとしています。
金田さんが住職を務める通大寺は栗原市という内陸部ですが、石巻市などの沿岸部では、寺自身が被災していなくても、檀家さんたちを数多く亡くしています。金田さんは「沿岸部ではこれまで大変な想いをしてきたんです。ケアで一生懸命。私たちはその中でサポートしているだけ。地元の宗教者も少しずつ元気になってきている。私たちはそこで終えるのが理想」と話しています。
「できることをできる範囲で行なう」。それが被災地支援です。そして被災者自身でしていくことは自立のためにも妨げてはいけないのです。私もそうしていきたいと思います。と同時に、私は取材者でもあります。今年もまた、被災地の人々のことを記録し続けて行きたいと思います。
[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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