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「悪質な暴力指導」ではないのか

社会 ニュース
大阪市立桜宮(さくらのみや)高校のバスケットボール部のキャプテンの二年男子生徒(享年17)が自殺した問題で、その一因に顧問による体罰が指摘されています。朝日新聞の「橋下大阪市長、『体罰容認』を反省 高2自殺、遺族へ謝罪」という記事によると、遺族との面会後、橋下市長は学生時代にラグビー部員で、「スポーツの指導で頭をたたかれたり、尻を蹴られることは普通にあると思っていた」と話していましたが、「顧問と生徒は絶対的な上下関係」であり、暴力を排除することが必要との認識を示しました。

また朝日新聞には、元プロ野球選手の桑田真澄さんのインタビューが掲載されています。早大大学院にいたとき、論文執筆のためにプロ野球選手と東京6大学の野球部員550人にアンケートをとったといいます。それによると、体罰を「指導者から受けた」のは中学で45%、高校で46%、「先輩から受けた」は中学36%、高校51%でした。その上で、「多罰を受けた子は、『何をしたら殴られないで済むだろう』という思考に陥ります。それでは子どもの自立心が育たず、自分でプレーが判断できません」と語っています。

ちなみに、プロ野球でさえも、暴力的な指導が行なわれることがあります。しかし、落合博満・中日ドラゴンズ前監督は、監督就任時にコーチに対して「選手に対して絶対に手をあげてはいけない」と約束をしました。プロ野球でも暴力的指導が容認されることがあるのですが、それを落合氏は否定したのです。そして選手にとっては一瞬の体罰よりも練習を続けるほうが辛いことを知っているのです。その結果、落合氏の監督時代には、中日球団史上、例を見ないほどの好成績でした。上昇・落合ドラゴンズの背景には暴力排除があったのです。

部活にもよるでしょうが、勝つことを至上命題にする場合、厳しい練習は必要になります。しかし、暴力では何がいけないのかはまったくわかりません。繰り返される練習によって、体の動きが身に付いていきます。野球部に所蔵していたことがある私の経験上もそうでした。暴力的な指導を受けたことがありますが、そのとき、何がいけなかったのかは未だにわからないままです。

そもそも学校教育法は懲戒の方法として体罰を禁じています。「教員等は、児童生徒への指導に当たり、いかなる場合においても、身体に対する侵害(殴る、蹴る等)、肉体的苦痛を与える懲戒(正座・直立等特定の姿勢を長時間保持させる等)である体罰を行ってはならない。体罰による指導により正常な倫理観を養うことはできず、むしろ児童生徒に力による解決への志向を助長させ、いじめや暴力行為などの土壌を生む恐れがあるからである」(「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について」平成19年2月5日)。

ただ、今回のケースは教師が行なったのは「体罰」なのか、という議論があります。体罰というのは懲戒権の一形態です。自殺した生徒に対する懲戒に値する「問題行動」があったのかといえば、何も見当たらないのです。むしろ、他の部員を奮起させるための「暴力」という側面があったと思わせます。暴力を伴う部活指導の是非が問われる。ただ、指導と言えるのかも怪しいところです。その意味では、今回の件は「体罰」よりも悪質だと言えるのではないでしょうか。


[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]

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