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自殺予防週間を前に考えたこと

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ミュージシャンの宇多田ヒカルさんの母で藤圭子さんが8月22日、東京・西新宿の高層マンションから投身自殺をし、亡くなりました。宇多田ヒカルさんの母親というばかりではなく、藤圭子さん自身が人気歌手だったことなどで、報道の量が多く出されました。

私が新人記者のころ、「自殺は原則報道しない」と言われていました。そのため、記者1年目のときに、ある中学生の自殺を耳にし、取材を重ねましたが、一行も掲載されませんでした。ただ、事件性がある場合、または、社会的な関心が高いケースの場合は報道がされたりします。この場合、いじめの疑いがありましたが、遺書もありませんし、そうした確定的な証言が得られず、記事にはしていませんでした。

藤圭子さんの場合、社会的な関心が高いケースと考えられますので、一報だけでは終わらないだろうと思っていました。トップ扱いで報道する週刊誌もあったほどです。書かれている内容が事実かどうかは、周辺取材をしていない私にはわかりません。しかし、有名人の自殺報道の後は、自殺が連鎖するリスクがあるとも言われています。

自殺は社会の質を表すものだと私は思っています。自殺という行為そのものは個人的なものかもしれません。しかし、社会的な要因が背景にあるとすれば、自殺は社会的な問題となります。最近では50代の自殺が減少傾向です。借金対策が講じられたため、その世代が自殺に追い込まれるリスクが減ったのが一因だと思われます。一方、若者の自殺が増えつつあります。原因は一様ではなく、実態の解明が待たれます。警察庁の調査では「進路に関する悩み」、とくに「就活の失敗」によるものが増えています。そこに社会的な原因があるとすれば、その手立てをすれば、自殺者が減るかもしれません。

私は取材者として1998年以来、自殺願望のある、あるいは未遂経験のある若者たちの話を聞いてきました。その立場上、私は自殺を否定も肯定もしません。なぜ否定しないのか?と、活動家や研究者から問われたことがあります。「もし、否定してしまえば、自殺に肯定的な当事者の声を否定することになるし、そもそも声を聞くことさえできないかもしれない」と応えることにしています。自殺を否定したり、数を減らすことではなく、声を聞き、その人の人生の痕跡を残すことのほうが私には関心があります。その過程で自殺願望がゼロにならなくても、軽減する人もいたりしました。

ただ、心情としては、一度でも話を聞いた人には「もう一度、会いたい」と思います。その意味で亡くなってしまうのは私自身も辛いと思ったりします。もちろん、当事者たちの辛さとはいろんな意味で違いますし、その辛さを軽減できるかどうかはわかりません。

自殺対策の一つの手段で「つながり」を強調することがあります。専門家同士、あるいは、当事者/遺族がつながることで、辛さを軽減し、生きる選択肢を増やすことができるのではない、というイメージでしょうか。私の取材実感からすると、すでにつながっているのです。問題は「つながり」そのものではなく、質なのです。現場では葛藤を抱えながら、接している人がほとんどです。また、現場は疲弊しています。人材が少ないことが大きく関係していると思います。

9月10日は、世界保健機構(WHO)が定めた「世界自殺予防デー」です。それから一週間は自殺予防週間です。自殺対策を推進するために、自殺についての誤解や偏見をなくし、正しい知識と普及啓発するために、2007年6月に閣議決定された「自殺総合対策大綱」で設定されました。しかし、「つながり」の質を向上させるために、人員を増やし、研修を積み重ねることが重要だと思います。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]

《NewsCafeコラム》

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