単純所持の処罰化か?提案された児童ポルノ改正案
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自主規制がされたのは、「映画ドラえもん のび太のひみつ道具博物館」で、3月6日にテレビ朝日系列で放映されました。「ハイパー掃除機」という道具でしずかちゃんが裸になってしまうシーンがありました。もちろん、劇場版では裸になるシーンですが、テレビ版では「謎の光」が出て、一部が見えませんでした。
しずかちゃんのお風呂のシーンは、実は、アニメやマンガの規制問題ではよく例としてあげられます。東京都の青少年健全育成条例改正議論のときも話題となりました。都では、「ドラえもん」(しずかちゃんの入浴シーン)、「サザエさん」(ワカメちゃんのパンチラシーン)、「キューティーハニー」(如月ハニーの変身シーン)、「クレヨンしんちゃん」(しんのすけがお尻を出すシーン)、「ドラゴンボール」(ブルマが裸になるシーン)、「新世紀エヴァンゲリオン」(レイやアスカのヌードシーン)と具体例をあげて、規制対象ではないと説明したくらいです。
自主規制の波は、テレビばかりではありません。インターネットでも行なわれたのです。taecupのブログAoutopageのブログが閉鎖となったのです。児童ポルノまたはそれに類するものをブログに掲載している、という判断が外部機関から指摘されたというのです。
しかし、指摘されたブログで実在児童のポルノ映像、写真などが掲載されたという形跡はありません。ブログに掲載されたのはフィギュアの写真なのです。非実在児童の、しかも模型です。その写真を掲載しても、処罰法には違反しない。
児童ポルノ処罰法改正案で、過度な規制に疑問を投げかけているのは、みんなの党の山田太郎参議院議員。以前、国会の質問で、山田太郎という名の主人公が登場する漫画「ドカベン」で、太郎の妹の入浴シーンは規制対象か?と質問して話題になりました。
山田議員はブログ削除問題について、「広告主のクレームによるものでした。自主規制の範囲が広がっている。最終的には運営会社側は、フィギュアは児童ポルノではない、と謝罪をしたものの、ブログの閉鎖が決まってしまってしまいました」と話す。この問題の背景には、「青少年の健全育成と、わいせつ物と、児童ポルノの概念が混乱していることがある」と指摘している。
児童ポルノに関する改正案の論点は二つ。規制対象となる「児童ポルノ」に漫画やアニメ、ゲーム等を含めるかどうか。そしてもう一つが単純所持を処罰化するかです。今回、自民党から打診があったのは、単純所持規制だけです。
たしかに、児童ポルノの実写や動画は、被害児童を苦しめることになるでしょう。しかし、インターネット経由の単純所持をすべて禁止するのは議論が必要となる。なぜなら、意図しない所持もあるからです。
京都府や栃木県では「児童ポルノ規制条例」が制定されました。正当な理由がなく、児童ポルノを所持することを禁じた上で、府知事は期限内に破棄を命じることができる、というものです。そして必要に応じて立ち入り調査ができる。廃棄命令等に反すると30万円以下の罰金となる。
たまたまアクセスしたサイトに児童ポルノ画像があり、キャッシュが遺ってしまい、あるいは、知らずにダウンロードした場合に、こうした規定があると、いきなり違反とならずに、一段階置くことができる。
ただ、そもそも児童ポルノの定義や、「児童ポルノ」という用語でいいのか、という問題があります。児童ポルノの作成過程では、必然的に性的虐待が起きます。現在の定義であれば、作成過程に性的虐待があっても、写真や動画でポルノ表現がなければ、規制対象ではないのです。今一度、定義から見直したいものです。
[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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