賛否真っ二つ…「美味しんぼ」騒動は"表現の自由"か
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そんな同作が、東京電力福島第一原発事故をめぐる描写で騒動を起こしたのは記憶に新しい。問題視されているのは、主人公・山岡士郎が放射線被曝の影響で鼻血を流す、登場人物が「福島はもう住めない」と発言するなどショッキングな内容だ。これがフィクションであれば"不謹慎"の一刀両断だが、制作サイドが「取材に基づいたノンフィクションである」と主張したため、事態は混迷の度合いを深めている。
そのあたりの事情や真偽は現在、外部の人間の知るところではない。しかし、実在の人物ではない山岡士郎が"鼻血を出す"という描写…これは確実に作り手の意匠ということになる。
NewsCafeでは「『美味しんぼ』の鼻血描写は表現の自由だと思いますか?」というアンケートが実施されたらしい。ランキングとともに寄せられた声をご紹介しよう。
※回答総数…814件
【掲載するのは不適切だ(38.7%)】
■反原発ブームな内に自身の反原発心をぶちまけたかったんでしょうね、せっかくの作品が台無しです。料理漫画は好きですが「美味しんぼ」はしばらく控えます。[男性/20代/その他]
■実名・実在の地域を名指ししてるくせに、立場が悪くなるとフィクションで逃げる。表現の自由は責任も伴う。[女性/30代/主婦]
■イジメのネタになりそう。鼻血が出た子がいたら、被爆者と言われたりとか…。[女性/30代/主婦]
■リアルタイムの現実的事象を取り上げているのに、細心の実証的裏付けなしにアバウトな想像で、表現者としては無責任で失格です。[男性/50代/専門職]
■理屈じゃないと思う。良い悪いは別にして現実に多くの人が不快になっている。[男性/50代/会社員]
【表現の自由だ(38.1%)】
■作者は取材した真実を掲載したと言っているのですから、それを信じるかは読者次第だと思う。ただし、作者には、説明責任があるので、掲載した雑誌で、経緯を明らかにしてもらいたい。[男性/50代/会社員]
■調査報道とは違う。被害を訴える人が実際いるのだからそれを題材にマンガ的に誇張するのは許される。事故の実態に迫る方が風評を防ぐより社会的意義が大きい。事故を防げなかった政府に風評被害を語る資格はない。[男性/30代/会社員]
■クサイものから蓋を外す雁屋さん、ご立派です![女性/50代/会社員]
■低線量被曝を受け続ける医学的データが実際にないんだから、そういう症状が出るかもしれないだろ? これが原子力安全神話ってやつ?[男性/40代/専門職]
■たかが漫画じゃん。騒ぐほど大変なことかいな? と傍観。[女性/10代/その他]
【どちらともいえない(15.5%)】
■難しいところと思います。世情をはばかって表現の自由が萎縮してしまうのは大きな問題だと思うし、かといって野放図な内容も社会的影響を考えると…兼ね合いがなかなか。[女性/50代/自営業]
■訴えたい気持ちも解るが「美味しんぼ」以外で描いたら!?[女性/10代/主婦]
■本当の事が解るのは何十年後でしょう? 孫ひ孫に放射線の影響が出ない事を願います。[男性/50代/その他]
■被災者の方々の心情を考えるとやめた方がいいのだが、実は公表されてない真実かなとも思うから。[男性/40代/会社員]
【わからない(4.8%)】
■読んでないから。必要だったのかな。[女性/20代/会社員]
■わからないけど、事実なら伝えるべきだと思います。[男性/30代/その他]
「掲載は不適切だった」という意見が最多ではあるが、「表現の自由だ」と考える人との票差は、わずかに0.6%。これは賛否真っ二つと言っていい状況だ。
また、回答選択肢の枠にとどまらず、様々な意見が寄せられた。「あくまでも作品! 映画・ドラマ・小説等と同じだと思う」「事実を描いて何が悪いんだ」「そこだけ切り取って騒ぎをねつ造して、原発推進派が善人ぶってスケープゴートに利用しているだけ。また"福島"の絶対弱者としての利用価値を測っている側面もある」「今まで読んできたけど本当なんだろうな、って錯覚する人もいるはず。いくら漫画でも内容はナイーブな問題だから戦慄だったと思う」「表現の自由とは違うと思うが、取材に基づいて書いている。風評だと言うのが変」…まさに喧々囂々といった様相を呈している。
現時点では有識者の間でも意見が割れている。また漫画の内容は、取材に基づいたものであったとしても、医学的データに裏打ちされているとは言いがたい。それでもこれほどの議論を呼ぶ理由は、私たち一般市民が「原発についての各種メディア報道に懐疑心を抱いている」からに他ならないだろう。
[文・能井丸鴻]
《NewsCafeアリナシ》
