スクールソーシャルワーカーの再点検を
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名古屋市の中学1年の男子生徒は11月1日午後3時過ぎ、「ドーナツを買いにいく」と言って外出しました。その後、家族が「いじめを受けた」とする遺書を見つけました。そのため、携帯電話で「いじめ大丈夫か、お前」と聞くと、「大丈夫、大丈夫。冗談だ」と答えたといいます。しかし午後3時55分頃、市営地下鉄舞鶴線・庄内通駅で電車にはねられ、間もなく死亡が確認されました。
学校側は2ヶ月に一回、いじめの有無について生徒を対象にアンケートをしていましたが、いじめの事実は確認していませんでした。また、男子生徒の自殺後、担任や部活の顧問に聞き取りをしましたが、いじめと判断できるような行為や自殺の兆候は確認できないとしていました。しかし、生徒の自殺後、アンケート調査をした結果、20人がいじめの現場を見たと回答していました。
ただ、担任の教師が4月の時点で「いじめにあいやすい」という印象をもっていたことがわかっています。理由としては「心も体も強い方ではないから」市教委に説明しています。心理テストでも「要支援」と判定されましたが、学校は具体的な支援は行っていませんでした。市教委が10日、総合教育会議で明らかにしました。
河村市長は2014年、全国で初めて、正規職員のスクールソーシャルワーカー(SSW)を募集し、採用しています。市長がアメリカに視察に行き、道入を決めたのです。スクールカウンセラー(SC)の場合、悩みのある生徒のカウンセリングが主な仕事になりますが、SSWの場合は、人間関係を含む環境の調整が仕事になります。
SSWは所沢市や茨城県結城市、大阪府寝屋川市などで先行事例があります。また、2008年度から現在では全国で配置されるようになりましたが、待遇面や人員数の面で課題があります。名古屋市の河村市長はSSWの重要性を認識したため、正規職員として採用をしたのです。しかしSSWの導入の翌年、いじめ自殺が起きてしまいました。
学校は独自の文化があり、なかなか他の職種との連携が難しい土壌があります。名古屋市のSSWは、社会福祉士や精神保健福祉士の有資格者です。教育職ではないことで「外の目」が入ることの利点がありますが、「外扱い」されたままでは、連携はうまくいきません。今回の男子生徒の情報をSSWがどれだけ得ていたのか、いじめ予防や自殺予防の場面でどんな役割をしていたのか、また、いじめ自殺後、調査にどのように関わっているのか、再発防止にはどのようにかかわるのか。一つ一つ、再点検する必要があります。
[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中
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