舛添氏辞任、でも説明はちゃんとして
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元都知事の石原慎太郎氏を自民、公明は支え続けました。1999年の初出馬のときは、自民党本部と、自民の都連の一部が分裂しました。党本部と公明党は、国連の平和維持活動PKOの、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の事務総長特別代表を務めた明石康氏を擁立しました。また、鳩山邦夫氏も民主党推薦で立候補していました。このとき、現知事の舛添要一氏も出ていましたが、それらの有力候補を抑えて、自民都連の一部が支持した石原氏が初当選を果たしたのです。
2003年の選挙で300万票を超え、当時としては史上最高の得票率(70.21%)だったのです。このときは、対抗となる有力な候補がいなかったことも理由の一つでしょう。また、自民と公明が支援に回ったことも多いと思います。次点の樋口恵子氏は民主からの推薦と、社民、生活者ネット、みどりの会議の支持を取り付けましたが、指示が広がらなかったのです。
07年の選挙では、対抗に元宮城県知事の浅野史郎氏が出馬しました。それでも280万票を獲得し、浅野氏に120万票差をつけて、石原氏が圧勝したのです。余談ですが、このとき、「選挙は多数派の祭りだ」などと言っていた外山恒一氏の政見放送は話題となりました。
11年の東日本大震災後の選挙では、対抗に宮崎県知事だった東国原英夫氏が出馬しました。ワタミの渡邊美樹氏も立候補しました。震災後だったためもあり、盛り上がりに欠けた選挙戦でした。結果、現職の石原氏が四選を果たしました。このときも次点の東国原氏に100万票差をつけて、260万票を獲得したのです。これだけ圧倒的な支持があった石原氏もこの任期半ばで、国政に進出することを理由に辞任します。
12年の選挙では、石原氏から後継指名を受けて、自民、公明、日本維新の会が推した副知事だった猪瀬直樹氏が出馬します。対抗として有力視されたのは、弁護士の宇都宮健児氏で、共産、社民、緑の党、生活者ネットなどが支持をしたのです。29年ぶりの社共共闘でしたが、民主は候補を立てられず、推薦も支持もできませんでした。そのためもあるのか、猪瀬氏が圧勝。430万票を獲得。史上最多の得票数でした。その猪瀬氏も、医療法人「徳洲会」から5000万円を受け取り、返金したとされる問題の疑惑が浮上。辞職したのです。
猪瀬氏の辞職を受けたのが14年の選挙。自民、公明のほか、連合東京も推薦しました。対抗としては前回2位だった宇都宮氏。共産、社民などが推薦。また、元総理の細川護煕氏も出馬。民主、生活が支援。野党分裂のためもあり、舛添氏が200万票を獲得し、当選したのです。この選挙では、家入一真氏が立候補。街頭演説はせず、インターネット選挙に取り組み、供託金もクラウドファウンディングで集めたのです。政策はツイッターで募集したのです。選挙後は「インターネッ党」を立ち上げたことで話題となりました。
こうしてみてくると、03年以降、自民、公明が推薦する候補者の当選が続いています。東京はわりと保守的というイメージですので、都市生活を守るような政策を打ち出せる人が選ばれているという印象です。都の予算は韓国よりも多く、スウェーデン、インドネシア、ニュージーランド、タイなどの予算に匹敵します。力強いリーダーが求められています。しかも、有名人が出たりします。石原氏も猪瀬氏も作家です。舛添氏も国際政治学者としてテレビによく出ていましたし、著作もあります。
また、石原氏と舛添氏は大臣経験者です。猪瀬氏は副都知事は勤めていましたが、都知事に出馬したときが初めての選挙です。ある意味で、選挙の素人ですので、徳洲会問題のようなことが起きるのは仕方がなかったとも言えなくもありません。しかし、舛添氏は参院議員を二期務め、その間、第一次安倍内閣と福田康夫内閣、同改造内閣、麻生内閣では、厚生労働大臣も務めていました。政治家としてはプロ中のプロです。それなのに、今回の政治資金の使い方では、プロとしての納得のいく回答を出すことができなかったのです。第三者とは名ばかりだったかもしれませんが、弁護士に調査させた内容も自己保身のようにも見えました。
それにしても、3代続けて任期途中で都知事が辞任することになりました。それらの知事を支持してきた自民、公明の責任は大きいでしょう。もちろん、有力な候補者を立てられなかったり、立候補者を分裂させた都議会野党第1党の民主党(現在は民進党)の力不足もあります。
それらの都知事を選んできたのは有権者です。もちろん、チェック機能が働いているので任期途中でも辞任になるとも言えます。また必ずしも混乱が悪いわけではありません。知事がやりたいことをしようとしての混乱はある程度評価できます。しかし、本筋とは別のところでの混乱は都政を停滞させるだけです。ただ、辞任をするのなら舛添都知事はきちんと疑問に答えるべきです。
[文:渋井哲也]
《NewsCafeコラム》