「虎に翼」‟残したかった”カットシーン、脚本・吉田恵里香氏が公開 LGBTQ+描写への思い「昔から存在したのです」
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【写真】「虎に翼」性別移行した上野のママ役で登場した人物
◆「虎に翼」性的マイノリティの役柄に当事者俳優
この日の放送では、主人公の寅子(伊藤)が娘の優未(毎田暖乃)、恋人の航一(岡田将生)と共に、友人の弁護士・轟(戸塚純貴)たちの集いに招待される。そこで寅子は、轟の同性パートナーである遠藤(和田正人)の友人であるゲイカップル、上野でバーを経営しているトランスジェンダー女性の山田と出会う。
ゲイカップルの1人、秋田役には、自身もオープンリーゲイ俳優として活動する水越とものりが出演。性別適合手術を受けた女性役には、自身もトランスジェンダーであることを公表しているシンガーソングライター兼俳優の中村中が起用され、SNS上でも注目を集めた。
◆「今の時代まで続いていることが大問題」脚本・吉田恵里香氏の思い
一同は路上生活者に配るおにぎり作りのために集まったが、そこで性的マイノリティとしてのリアルな心情や葛藤を打ち明ける。脚本の吉田恵里香氏は、このシーンに対する自身の意見を、Xにて以下のように語っている。
「今回の話で性転換手術をされた人が登場したことに驚かれた方も多いのではないでしょうか?あの時代に性転換手術をした人がいたことを、この回を執筆するまで恥ずかしながら知りませんでした。もっと最近の話だろうと思い込んでいたのです。
考証の方々から聞く話はどれも知らないことばかりで、いかに自分が思い込みや決めつけで物事を見ているか考えさせられました。決めつける前に、まず調べてみる。頭では分かっていたけれど、もっと徹底していこうと心に決めました。セクシャルマイノリティーの方々も夫婦別姓を望む人も今の時代にポッと生まれたわけじゃありません。昔から存在したのです。多くの問題が解決されぬまま今の時代まで続いていることが大問題なのです。
この時代のセクシャルマイノリティーの方々の境遇は驚くほど過酷です。その当時よりは現在のほうがマシになっているけれど、心から『良くなっている』と言えないのが悲しいところです」。
◆「脚本上には残したかった」女性の同性愛者を巡るセリフを公開
さらに吉田氏は、劇中に登場しなかった女性の同性愛者などについても「この回には登場しませんが、女性の同性愛者の方もこの時代にも当然ですが、存在します」と注釈。「尺的にカットせざるを得ないことは分かっていたけれど、脚本上には残したかったシーン」として、以下の会話を公開した。
航一「……女性の同性愛の方も?」
遠藤「勿論大勢いるでしょう。ただ男性と違い、なかなか表に出てきづらい、出会いを求められない現状はあります」
航一「というと?」
遠藤「理解のある人たちが集まる雑誌を買ったり、お店で飲んだり……ある程度、時間とお金が必要ですから」
梅子「女は時間もお金も、自由にできないものね。家庭に入ってしまえば尚更」
寅子「……ここにまで男女の差があるのね」
同性愛者差別に加え、性差別の対象にもなる女性の性的マイノリティの厳しい現実について、理解を深める会話となっており、吉田氏も「このような背景から女性の同性愛者の方々の資料は、この当時も驚くほど少ないようです。(もちろんゼロではありません。明治大正時代の女性の同性愛者の記録も存在しています)。今現在もセクシャルマイノリティーの方々について語られる際、女性の同性愛者の存在があとまわしにされがちな部分があると思います」と私見。「みなが平等で対等な社会になる道のりは、まだまだ遠いと思いますが、それでもできることをしていきたいです。誰しも何かを強要されることは嫌だと思います。それを他者にするのはやめましょうね」と切なる思いをつづっている。
◆“性別適合手術”巡るセリフに注釈
なお、劇中では山田が「私は男の体で生まれたけど、女の体になるように性転換の手術を受けました」と自己紹介するセリフがあるが、これについて吉田氏は「本作では時代に合わせて『性転換手術』という言い方をしています。ですが現在は『性別適合手術』という言い方が適切です」と説明。実際に、トランスジェンダーの人などに使われていた「性転換(手術)」という言葉は実態に合わないため、 「性別移行」や「性別適合手術」が望ましいとされている。
◆伊藤沙莉ヒロイン朝ドラ「虎に翼」
第110作目の連続テレビ小説となる本作は、日本初の女性弁護士である三淵嘉子(みぶち・よしこ)さんをモデルに描くリーガルエンターテインメント。主人公の猪爪寅子(いのつめ・ともこ)、通称・トラコを伊藤が演じる。(modelpress編集部)
情報:NHK
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