子供の権利とビジネスの接点「子どもESGレポート2024」日本総研 | NewsCafe

子供の権利とビジネスの接点「子どもESGレポート2024」日本総研

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「子どもESGレポート2024」
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 日本総合研究所は2024年10月17日、子供の権利とビジネスの接点を探る「子どもESG調査2024」(以下「同調査」)の結果を踏まえた報告書として「子どもESGレポート2024」(以下「同レポート」)を発表した。

 「子どもESG調査2024」は、少子化が急速に進む日本において、子供の権利の尊重が社会・経済にもたらす影響などを調査し提言および普及啓発を行う、日本総研の「子どもコミッションイニシアティブ構想」の活動の一環として実施されたもの。

 わが国では2023年4月に「こども基本法」が施行され、同時にこども政策の司令塔として「こども家庭庁」が創設された。その後さまざまな政策が進展する中、企業の間でも男性の育児休業制度の整備のほか、野外活動や芸術鑑賞といった体験機会の創出など、子供に関連する支援の取り組みが増加している。しかし、子供の権利の尊重を意識して本業のビジネスに取り入れる企業は、ほとんどみられないのが実態だという。

 こうした企業の実態を明らかにすることを目的に、日本総研では「子どもESG調査」を2023年から開始。調査は、サプライチェーン全体における子供の人権の尊重や国内外の社会貢献活動に加え、企業が事業活動の全体を通じて子供の権利を尊重するべきである、という視点から実施している。2024年は、同調査のほか、「子どもの権利とビジネスを巡る動き」「デジタル社会における子ども」の章なども加えた「子どもESGレポート2024」として発表した。

 同調査では、子供が接触することが多い8種類の製品・サービスに関連するセクター(建設、住宅、電気機器、輸送用機器、空運、陸運(鉄道)、小売、マスコミ(テレビ))のうち、各業界をけん引していると考えられる企業を東証プライム上場企業からそれぞれ複数選定した計43社を調査対象とした。また、調査は、2024年8月末までの有価証券報告書、コーポレートガバナンス報告書、統合報告書などの公表資料を利用して行った。

 調査の結果、子供の権利の4原則のうち、環境(E)および社会(S)の両面に関わる「生命、生存および発達の権利」については、幅広いセクターで製品・サービスを通じた貢献が行われていた。たとえば建設では、学校や病院などの公的な建築物の設計を工夫し、子供の学びや医療サービスの環境の向上に役立てていた。輸送用機器や空運、陸運(鉄道)では、安全性のほか、子供の移動の可能性や体験機会を広げる取組みが見られた。

 建築物や交通に関する気候変動対策の実効性を求める声は、世界的にみても子供世代から多くあがるなど、子供の権利への意識は強まっているという。このような接点を企業が子供の権利の観点から常に意識しながら、ほかの接点での活動への展開を図っていくことが重要だとしている。

 社会(S)の面では、子供たちが置かれる変化として、「デジタル社会」の到来に着目。デジタル社会を牽引する電気機器のセクターでは、小学生~高校生・保護者・教職員を対象にしたインターネット利用に関する啓発・ガイダンス講座の開催や、小学生向けのAIリテラシー教育支援プログラムを提供するなどの取組みがみられた。また、陸運(鉄道)ではICタグを活用した子供の登下校確認ツールを提供するなど、デジタル技術を活用して新たなビジネスを創出している企業もあった。

 日本総合研究所によると、インターネットによる情報提供やオンライン販売、新サービスの開発などに取り組む企業には、今後、子供がどのようにその情報を受け止め、それが「子どもの権利の4つの原則」にどう影響しうるのか、事前のアセスメントやモニタリングが求められる、という。また、小売など子供を自社の顧客として捉えやすいセクターにおいても、決済手段のキャッシュレス化など消費行動を取り巻く環境が大きく変化しており、社会の変化と子供の権利双方を踏まえて自社の事業や取組みを見直し、常にアップデートしていくことが必要だという。

 ガバナンス(G)面から組織の在り方を見ると、一社を除き全企業が人権方針を策定し、そのうち3割以上で「子供の権利とビジネス原則」を掲げていた。さらに、独自の人権レポートで子供に言及する企業もみられたという。一方、人権デューディリジェンスを実施する企業は多かったものの、子供に言及している企業はわずかであった。また、言及されていてもサプライチェーン上における児童労働に関するリスクの特定・評価が中心で、子供を顧客として捉え明示的に評価しているのは小売1社のみだったという。

 2023年からの2回の調査および複数の企業との意見交換を通じ、企業にとって子供の権利とは、サプライチェーン上の児童労働対策か社会貢献活動が中心となっていることがわかったという。そこで、同レポートでは、子供の権利に基づく取組みが、企業のステークホルダー(顧客、従業員、取引先、地域社会・行政、求職者など)との関係性をよりよいものにし、よって企業価値向上への道筋を描けるように、経路の例を提示している。

 たとえば「製品・サービスや相談窓口が子供の視点から改善され、顧客満足が向上する」「人権研修を活用して体罰禁止や子供のプライバシーについて周知し従業員個人による人権侵害を回避する」といったガバナンスの強化を通して、リスクの低減や機会獲得を図るというもの。さらに、子供の意見の尊重は、自己肯定感や社会への関心の高まりにつながり、社会全体での人材育成にも資するとしている。

《中川和佳》

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