私立高生徒、経済的理由の中退が増加…全国私教連
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調査は私立高校・中学校において、2024年4月1日から9月末現在、3か月以上および6か月以上の学費滞納、経済的理由での中途退学した生徒とその状況について調べたもの。加盟校を中心に36都道府県の私立高校345校(生徒数28万5,738人)、26都道府県の私立中学校168校(生徒数6万3,465人)から回答を得た。
私立高校で3か月以上学費を滞納した生徒は、36都道府県209校に1,724人いた。就学支援金制度の拡充により調査史上最少となった2020年の1,407人から、2021年1,432人、2022年1,619人、2023年2,125人と上昇が続いてきたが、2024年は1,724人に下降。3か月以上学費を滞納した生徒の割合は0.6%で、前年の0.68%から0.08ポイント減となった。
全国の滞納率(滞納生徒数/調査対象全生徒数)0.6%を超える自治体は、「岡山」2.18%、「青森」1.7%、「高知」1.68%、「岩手」「大阪」1.63%、「山形」1.03%、「兵庫」0.95%、「愛媛」0.93%、「福島」0.9%、「宮城」0.83%、「新潟」「山口」0.76%、「茨城」0.65%、「埼玉」0.63%、「福岡」0.62%、「熊本」0.6%の16府県。前年9月末調査比で5県増加している。
6か月以上学費を滞納した生徒は、121校に624人。調査対象者に占める割合は0.22%。前年を0.01ポイント下回ったが、高等学校等就学支援金の制度拡充時の2020年0.17%、2021年0.14%と比較すると、0.2%を上回ったままとなっている。
一方、経済的理由で私立高校を中退した生徒は、9都県13校43人。前年より2県5校減少したものの、人数では前年比2倍弱増えた前年より、さらに13人増加している。調査対象生徒に占める割合は0.015%で、前年より0.005ポイント上昇した。
学校からは、「親を助けたいという思いから退学して仕事に就いている」(岩手)、「授業以外の費用負担が重く、弟妹らの将来の進学費用準備も必要なことから退学・転学を決断」(東京)などの報告があった。
また、アンケート調査の結果によると、「退学、学費滞納に至らないが学費納入に苦労している生徒の実態」として、「授業料補助では不足で学費や生活費捻出のためにアルバイトをする生徒がいる」「経済的な理由から進路希望の変更を余儀なくされる生徒がいる」「学費負担が家庭内に不和または兄弟姉妹の進学先制限の原因化している」を選択する回答が少なくなかった。
「その他」として、「保護者が所得要件を超えないよう働き方を制限しているケースも多々ある」(宮城)、「授業料は支払えても、施設設備費や修学旅行積立などの諸経費の滞納が多い」(愛知)などの記述もあったという。国に向けた高等学校等就学支援金の制度拡充要望では、「所得制限(年収910万円未満世帯対象)の撤廃」が特に多かった。
このほか、私立中学校で3か月以上学費を滞納した生徒は15都道府県45校に94人。調査対象者に占める割合は0.15%。前年より学校数、滞納生徒数とも減少しているが、調査した生徒数に占める割合は前年比0.01ポイント増となった。6か月以上の学費滞納生徒は17校26人。前年の40人から減少し、コロナ禍前の2019年と同水準となった。
全国私教連では、国に対して「高等学校等就学支援金制度の支給対象を年収910万円未満世帯までにすること」「私立高校の入学金補助制度を創設すること」、学校に対して「施設設備費等授業料以外の学納金を39万6,000円まで早急に授業料に振り替えること」などを要求。
国の高等学校等就学支援金制度では、年収590万円未満に年間39万6,000円、年収910万円未満に年間11万8,800円の授業料支援が受けられるが、年収590万円と910万円の所得制限の「ガケ」が生まれていることから、自治体に対しては「ガケ」の解消に向けて年収910万円未満世帯までを対象とした自治体単独の加算制度を作ることなどを求めている。
《奥山直美》
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