IFAという言葉をご存じでしょうか。Independent Financial Advisor、直訳すると「独立系ファイナンシャルアドバイザー」。FPと比較すると、IFAは全員「金融商品仲介業者」としての登録があるのが違い。つまり投資信託などの金融商品を直接扱えるので、資産運用に関するアドバイスがより得意です。
「一般に、老後の資産形成は40代までにスタートと言われ、50代になるともう遅いと見捨てられてしまいます。でも、世間の情報には盲点があります。それは、『貯める』情報ばかりで『取り崩す』方法がほぼないところ。私がFPとしての活動に飽き足らずIFAに転向したのは、いかに幸福に取り崩して人生を送るかに寄り添いたかったから。そして、取り崩し方から考えた場合、40代どころか50歳を過ぎていてもまったく遅くないんです。10年あれば何とかなります」
こう語るのはIFA・FPの千田愛さん。なぜ彼女がこの職業に就いたのか? なぜ「50才からの資産形成」を主に手掛けるのか? お話をお伺いします。
ちなみに私、鵜飼慎太郎は、普段は美術や書評を中心に活動している40代男性ライター。正直いってマネー関連は苦手、怖いという感覚があってずっと避けてきたのですが、今からでも老後の資産形成は間に合うのでしょうか……?
【50歳からでも取り残されないお金の話】#1
投資は誰でも「怖い」もの?なぜ怖いのか、その理由は
「もともと新NISAやIDeCoは長期投資を前提とした制度です。20年あればいわゆるインデックスファンド、例えば『オルカン』だけをひたすら買ってもいいかもしれません。50歳の時点でまだ老後資産形成をスタートさせていない場合、これから20年の長期投資が必要だと言われて時間的に間に合わないと投資に及び腰になった人もいると思いますが、50代からのケースでまず考えるべきなのはいつから取り崩すか、『取り崩し方』をどうするかが大切です、そうすれば長期的な運用も可能になってきます」
投資なんて難しいし、漠然と怖いイメージがあって。新NISA口座は開設したものの、まだ投資を始めてないんです。最初にそう伝えた私に、千田さんは優しくうなずいてくれました。
「実は、私も最初はそう思っていたんですよ」
意外な答えを返してくれた千田さん。自身も以前は「貯められない自分」に悩み、投資どころか貯金すらままならなかったそうです。しかし、あるきっかけでIFAとして働き始め、投資を始めることの大切さを学んだといいます。
「私たちは『投資は男がやるものだ』と思い込まされて育ってきた世代です」
「昔は投資は男性や社長がするものだと思い込んでいたんです。言い換えれば、お金って女性がやるもんじゃないと考えていました」
えー意外ですね!でも投資勉強中の私もなんとなく男だから勉強しなくちゃいけないのかもって、常にプレッシャーを感じてますが、それって思い込みで、実は妻の方が投資に対して柔軟な考え方を持っている可能性もあるかもしれません。
「私自身も昔はお金のことを考えるのはストレスでしかありませんでした。父親が会社を経営しながら投資をしていた背中を見て育ってきた影響なのか、大人になっても投資は男性がやるものだという思い込みがあったんです」
世代的にそういう雰囲気があるのは少しわからなくもありません。
「でも、実際には女性でも、少額からでも投資は始められますし、むしろ家計を預かる立場である場合は積極的に取り組むべきことだと気づきました」
実は千田さんが投資に興味を持つようになったきっかけは社会人になってからのこと。千田さんは、2003年に大学を卒業後、製薬会社のMRとして社会人生活をスタートしました。当時、東京での生活や営業職の充実感に満ちており、お金のことについては深く考える必要性を特に感じることはなかったと振り返ります。
当時の話を聞きながら、その頃はお金の不安はなかったんですか?と尋ねると、千田さんは少し笑いながらうなずきました。
「そうですね。当時はとにかく仕事が楽しかったんです。でも、なかなか貯金が上手にできなくて悩むことがありました。今振り返ると、ただ貯金しようとしてるだけではお金は増えないんだと気づかされる出来事がたくさんあったんです」
やがて「新しい業界で営業がしたい」という思いから2005年にインターネット関連の会社に転職。当時の世の中は新しいサービスとしてインターネット広告バブルの真っ只中。千田さんは大手証券会社のWeb広告を担当することになり、金融業界との接点を持つようになりました。その頃、仕事を通じて金融に興味を持ち始めたのでしょうか?
「いえ、その時はまだ。ただWeb広告を提案していただけでした。でも、証券会社の方々と接する中で、金融の世界の奥深さや運用の考え方に触れる機会が自然と増えました」
その後、証券会社がネットの知識を持つ人材を求めていたこともあり、千田さんはグループ会社である運用会社への転職を決断します。運用会社で働き始めた当時は投資に関する知識は豊富になっていたんですか?
「いえ、そんなことはなくて。Web広告の知識を運用会社で活かす人材として求められていたこともあり、実は入社後に幾つかのきっかけがあり投資に対する興味に目覚めていったんです」
長い間、お金は「貯めること」が大事とされてきましたよね。「増やすこと」ではなく
なるほど!運用会社に入ってから、大きな転機があったんですね?
「そうですね。大きな出来事としては2008年のリーマンショックですね。世界的な金融危機の中で、運用の重要性を目の当たりにしました。それまではお金を増やすというよりも、ただ貯めることが重要だと思っていたんです。でも、金融だけでなく投資や資産運用がもたらす可能性を本当に実感したのは、2014年に学生時代の友人から感謝の電話をもらった時でした」
その電話は、千田さんが教えた投資信託を購入した友人からでした。
「想像以上にお金が増えていてびっくり、教えてくれてありがとう、と言われたんです。その瞬間、私の中で投資の価値が一段と明確になりました」
それと同時に、自身も活用する投資信託の運用状況を改めて確認し、その成長ぶりに驚いたことで、IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)を志すようになったそうです。
「その時に、持ち株(個別株)がまだ購入時の価格に戻っていなかったことにも気づきました。やはり個別株は投資信託に比べて難しいと実感しましたね」
プロの方でもやはり個別株って難しいと感じるということなんですね。でも投資信託は別なんでしょうか?
「そうですね、優れた投資信託であれば、一つの商品で分散してリスクを抑えながら、着実に資産を増やせる可能性があります。また様々な投資シミュレーションを考えるきっかけにもなったんです。必要なのはリスクの分散、そして自分の人生トータルを考えてみること、この2つです」
新NISAでは成長投資枠を使った個別株への投資も可能ですが、まずは投資信託でよい。これが結論ですね。ありがとうございました。
さて、老後資金を考えるとき、何よりも大事なのは「どう取り崩していくか」を考えることなのだそう。続くお話ではその「取り崩し方」について詳しく伺います。
つづき>>>50代の新NISAは「オルカンかS&P500か」より「人生が100歳まで続くかもしれない」ことを考えねばならない【IFAが指摘】