入学金二重払い問題、大学生9割が問題視…文科省へ署名提出
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入学金調査プロジェクトは、入学金制度の問題に取り組む20代の若者有志によって結成された団体である。約3年間の休止を経て、2024年6月1日に活動を再開し、団体名を「入学金納入時期延長を求める有志の会」から「入学金調査プロジェクト」へと変更した。4年前に「入学しない大学には入学金を払わなくていいようにしてください!」というオンライン署名を立ち上げ、3万7,000筆の署名を集めた。
2021年に東京都内の大学を対象に行った調査では、私立大学の42%が2月中に入学金の納入期限を設定していることがわかった。国公立大学など、3月に合格発表がある大学を第一志望にした場合、受験生は入学しない大学に入学金を払うことが難しく、42%の入試方式を選択肢から外す必要があるという。
今回の調査は、2025年6月からクラウドファンディングで資金を募り、調査会社や「YOUTH THINKTANK」の協力を得て実施された。背景には、多くの大学で学費の値上げが決定・検討されていることや、「教育無償化」をめぐる与野党の協議がある。また、三原じゅん子大臣による「受験料支援」の言及など、高等教育の負担に関する議論が活発化している。
調査の結果、出願数・入試方式を決めるときに「受験にかかる費用」を考慮した割合は37.8%にのぼる。このうち、35.9%(全体の約13.6%)が「入学するかわからない段階で入学金を払う」可能性のある入学方式を選択肢から外していた。また、受験にかかる費用を考慮した結果、本当は出願したかったものの出願を諦めたと回答した割合は、私立大学の一般入試で25.6%、私立大学の大学入学共通テスト利用入試で17.4%、国公立大学の一般入試で19.8%にのぼる。
同団体は、入学金が入学前にかかる教育費負担として、制度上の支援が受けにくいことを指摘し、議論に加えるべきと訴えている。調査結果の公表を通じて、入学金に関する不平等の実態を広く知らしめ、社会的な議論を促進することを目的としている。
関連する社会的な動向としては、2006年の「学納金返還訴訟」最高裁判決がある。この判決では、入学金が大学に入学するための対価としての性質を有し、事務手続等に要する費用に充てられることが認められている。また、2012年には国際人権規約の社会権規約第13条2(b)および(c)の規定に係る留保が撤回され、高等教育の無償化が漸進的に導入されることが求められている。さらに、2020年には大学等修学支援新制度が施行され、2024年にはその対象が拡大されたが、入学金に関する不平等の問題は依然として残っている。
今回の調査結果の公表を通じて、入学金に関する不平等の実態が明らかになり、今後の政策や制度の改善に向けた議論が進むことが期待される。学生や若者団体の声が、教育費負担の軽減に向けた具体的な施策に反映されることが求められている。
《神林七巳》
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