【共通テスト2025】東大生が「情報I」を解いてみた「思考力・判断力が問われる良問」
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今回、東大生10数名が各科目を解き、例年との比較を行った。今回は、19日に実施された「情報I」に関して、その結果を共有したい。
試作問題と概ね同じ傾向
「情報I」という科目は今年から始まった新課程の共通テストで新しく加わった科目であり、大学入試センターが発表する試行問題や大手塾、予備校による模擬試験ではいくつかマーク型の問題が作成されていたが、正式に共通テスト本番で出題されるのは今年が初めてであった。内容としては試作問題と概ね同じ傾向であり、学習指導要領に基づいて「情報I」の全範囲から満遍なく出題された。
出題内容としては、学校生活、日常生活の中での問題に着目し、それを解決する思考力や判断力が求められるものが中心であった。情報の科学的理解に基づいて問題の発見や解決に取り組む思考力・判断力が問われる良問だったと言えるであろう。
教科書にある知識をもとに考察することで解ける問題がほとんどであり、知識問題は少ない印象を受けた。ただ丸暗記で語句を覚えるのではなく、意味について理解しながら勉強を進めている受験生にとっては優しい難易度であっただろう。分量は試作問題からマーク数は3つ増えて51となり、問題量が少し多いなと感じた受験生もいたことが推察される。
ここからは、実際に東大生が解いてみた上で特に面白いと思った問題について、大問ごとに抜粋して紹介していく。
情報処理能力、文章読解能力を総合的に見るバランスの良い試験
第1問は情報通信ネットワーク、そして情報デザインについての問題が集まった小問集合であった。前半の2問は教科書にある知識を丁寧になぞる問題であったが、それ以降の問題は条件を読み取って必要な計算をこなすという考察問題であった。計算自体はそこまで分量があるわけではないが、どの数字を取り出してどのように計算すれば良いのかは丁寧に吟味する必要があったであろう。
問4で出題されたコンピュータのUI(ユーザインタフェース)についての問題は、今の時流を上手く捉えた良問だと感じた。「情報I」という科目が新しく学習指導要領に追加された背景に、情報のデジタル化、IT化があることを考慮すると、このような実際の情報技術に着目した問題は非常に重要だと言えるだろう。
第2問は前半と後半で2つのテーマが取り扱われた。前半は総合スーパーマーケットの情報システムを題材とした問題であり、後半では表計算ソフトウェアによるシミュレーションがテーマの問題であった。前半の問題は文章や表を適切に読み取る高い思考力が求められたであろう。解いていた自分自身も、図で示された情報システムにおける「情報の流れ」と「商品の流れ」の矢印、そしてその中身を的確に捉えることにとても時間を有した。
後半では、グループの会計係となったMさんがお釣りとして用意すべき千円札の枚数を乱数と表計算ソフトを用いて求める、という問題設定であり、今回の「情報I」の試験の中でも特に日常生活に即した内容であった。状況さえ理解できれば、モデル化からシミュレーション、結果の分析まで誘導に乗ってスムーズに進めることができたであろう。
第3問は、問1から問3までを通してアルゴリズムの理解、そしてそれを担うプログラムの作成がテーマとなった大問であった。1つのテーマに対するページ数がもっとも多い単元であり、ここで時間を消費した受験生は多かったであろう。見慣れない「配列Akibi」や「変数buinsu」などの表記をいかに素早く自分の理解に落とし込めたかが、制限時間内に高得点を取るための重要なポイントであったことが窺える。
第4問は、データの活用に関する知識問題と考察問題であった。観光庁が公開している旅行・観光消費動向調査のデータを参考にしながら、出張、帰省、観光の3種類の旅行者数について分析するというものであり、今の時勢に合った出題だと感じた。
内容としては、「数学I・A」の「データの分析」と非常に近いものであった。数学の共通テストへの対策に時間を費やしている人にとっては、非常にやりやすい大問だったであろう。後半の問題では、1つの問題の正解を選ぶために散布図、箱ひげ図、相関係数などの複合的な理解が必要であるため、今後この共通テストを受験する人にとっては非常に価値のある復習問題となった。
全体的には、難問と言われるような手強い問題はそこまで多くない印象だった。筆者は新課程の「情報I」の授業を履修しているわけではないが、大学で学んだ情報、そしてセキュリティ教育などの知識によって高得点が狙える試験であった。語句や知識を問うだけの問題ではなく、情報処理能力、文章読解能力を総合的に見ている点では、非常にバランスの良い試験であると言える。
今回、共通テスト「情報I」を解いてみて、教科書にあるような基礎的な語彙、知識の習得はもちろんのこと、限られた時間の中で文章内容、そして問題を解くのに必要な数値を炙り出し、実際に値を出す実行力が求められる試験であると改めて実感した。情報の試験に関してはサンプルが未だ少ないので、来年以降の受験者はこの過去問を有効活用してぜひ「情報I」の理解を深めていただきたい。
《カルペ・ディエム 永田耕作》
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