更年期の女性は、ホルモンバランスの変化や代謝の低下、筋肉量の減少等が重なり、太りやすい傾向にあります。そこに更年期特有の仕事や家庭のことなど、さまざまなストレスが加わることでさらに太りやすさが加速しやすいそうです。
1回目の「あなたの「太りやすい体質」、年齢のせいじゃなくてストレスから来 てるかも?「更年期のストレス太り」は回避できる!?【医師監修】」に続き、2回目の本記事では、更年期のストレス太りを回避する “五感リラックス法” について、婦人科・心療内科医の横倉恒雄先生に教えていただきます。
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横倉先生おすすめ!ストレス太りを回避するリラックス法
「同じストレスでも、大きく感じてしまうのか、それとも上手に発散して小さく感じられるのかで、心身の状態は大きく変わってきます。
そのためには、人間本来の感覚である五感を大切にしながら過ごすことが大事なんです。
たとえば、天気のいい日に外を歩く際には空を見上げて雲の流れや風を感じたり、軒先の花に目をやってみたり、食事も香りや見た目を楽しみながら味わったり、休日には綺麗な景色を眺めるなど……
写真集でも十分効果がありますよ。
アロマやコーヒーの香り、森林浴のようなよい香りを楽しむのもおすすめです。
音楽や自然の音を意識して聴くのもいいですね。歩きながら木の葉の揺れる音に耳を澄ませてみるのも効果的です。
そして、人の肌に触れたり、動物の毛を撫でたりするのもストレス軽減に。スキンシップは『オキシトシン』という癒しのホルモンを分泌させ、心を落ち着けてくれます」
さらに、ストレス太りを防ぐため、ちょっとした隙間時間に簡単なセルフケア習慣を取り入れるのが効果的だそう。
自律神経が整ってストレスを小さく感じられるようになると、心身ともによい影響が実感できるようになるとのことで、横倉先生おすすめの3つの方法を教えていただきました。
1)脳がよろこぶ深呼吸で横隔膜ケア
「自分の意志でコントロールしづらい自律神経ですが、唯一、自分の意志で働きかけられるのが呼吸なんです。
ストレスがたまると自律神経が乱れ、呼吸が浅くなりがちです。浅い呼吸を続けていると、横隔膜の動きが小さくなり次第に硬くなるため、深い呼吸をしようとしても出来なくなってしまいます。
しかし、日々の生活の中で気づいたときに、深い呼吸を意識して行っていくことで、横隔膜が柔軟性を取り戻して自然と深い呼吸ができるようになり、自律神経も整いやすくなるんですよ」と横倉先生。
深い呼吸を実践する際のポイントは、自分の呼吸に意識を向けながら、ひと呼吸ごとに丁寧に行うこと。
【深呼吸のやり方】
まず、背筋を伸ばし、軽く目を閉じます。両手をおへその下に置き、その場所に意識を集中させます。
(1)ゆっくり時間をかけて、息を吐き切りましょう。
(2)鼻から自然に、ゆっくり息を吸います。
(3)1と2の動作を2~10回繰り返します。
※可能であれば、寝た状態で行うと簡単にリラックスできます。
「深呼吸の回数は、自分が心地よいと感じる範囲で構いません。何秒吸う、何秒吐くなどを意識しすぎると、逆に脳がリラックスできなくなってしまうため、自然なペースで行うことが大切。
電車の移動時にもできますから、ぜひ気づいた時に深い呼吸をすることを心がけてみましょう」
2)脳が喜ぶハンドマッサージ
「ゆっくりと指をほぐし、ツボを押して心地よい刺激を加えると、脳が『快』を感じ、全身がリラックス。気分がホッと落ち着き、リフレッシュ効果も期待できます。
ハンドクリームをつけるタイミングや移動中、ちょっとした待ち時間などに、ぜひ試してみてください」と横倉先生。
手がポカポカしてくるにつれて、過剰に高まった交感神経の働きを和らげることができ、ストレス太りにも有効だそう。
【ハンドマッサージのやり方】
心地よい香りのハンドクリームを手に取り、手全体によく刷り込みます。香りのリラックス効果も加わり、気分がほぐれやすくなります。
(1)手の平や指の股を、イタ気持ちいい程度の力で押しながらほぐします。指先まで丁寧に行いましょう。
(2)時間があるときには、下記の手のツボも押してみてください。
神門(しんもん)
更年期のイライラやストレスを和らげ、心を落ち着かせるツボ。不眠や不安、抑うつの改善にも効果が期待できる。
労宮(ろうきゅう)
自律神経のバランスを整え、過剰な食欲を抑えるツボ。暴飲暴食が気になる方にもおすすめ。
腎穴(じんけつ)
ホルモンバランスを整え、ストレスを軽減する効果があるツボ。耳鳴り、腰痛、頻尿、抜け毛といった悩みにも。
毎日のちょっとした時間を活用して、ハンドマッサージやツボ押しを取り入れることで、心と体のバランスを整えやすくなります。
3)五感を感じながら食べる “快食療法”
横倉先生が提唱する「五感療法」の一つに「快食療法」という方法があるそうです。痩せたいのに「快食」とは一体どんなものなのでしょうか?
「疲弊した脳を健幸な脳へと戻すためには、視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚といった五感に『心地良い刺激』を与え、それをしっかり感じることが有効です。
その中でも、食べることは五感すべてをフルに使える方法なんです。
たとえば、食べ物を包装紙から開けて見て感じること、食べる前に感じる香り、口当たりや噛んだときの音、そして甘さや酸っぱさなどの味――
これらすべてを脳で感じながら味わうことが重要です。可能な範囲でいいので、ゆっくり時間をかけて食べることを心がけましょう」と横倉先生。
「こうして五感をすべて使って味わうと、脳に余裕が生まれます。これは『考える』時間から『感じる』時間へシフトすることで得られる効果です。
五感を意識した生活を続けることで、疲弊した脳が健幸脳へと戻り、脳が正常な指令を出せるようになります。
これにより過食傾向も落ち着き、満腹ではなく、心からの『満福』を感じられるようになるでしょう。ぜひ今日から試してみてください」と横倉先生は語ります。
五感を使って食事を楽しむだけで、太りにくくなるなんてなんだか嬉しいですよね。
「健幸脳」になれば、更年期太りもこわくない
五感を活かした日々のセルフケアが、“更年期のストレス太り” 改善に大きな効果をもたらすとのこと。
深い呼吸を心がけることや、ハンドクリームを塗る時など短時間でできるハンドマッサージ&ツボ押し、五感を意識しながらの食事など、どれもすぐにできて、日常に無理なく取り入れられる方法ばかり。
先生の「五感を使うことで、満腹ではなく“満福”を感じられるようになる」という言葉がとても印象的でした。
心と体のバランスを整えながら、ストレスを小さく感じられる”健幸脳”になって、ストレス太りを回避していきたいですね。
お話を伺った先生
婦人科・心療内科医
横倉恒雄先生
医学博士。横倉クリニック(東京.田町)院長。慶應義塾大学医学部産婦人科入局。東京都済生会中央病院産婦人科に勤務、同病院にて日本初の「健康外来」を創設。病名がない不調を抱える患者さんにも常に寄り添った診察を心がけている。クリニックで行っている講座も好評。著書に『脳疲労に克つ』『心と体が軽くなる本物のダイエット』他