こんにちは。神奈川県在住、フリーライターの小林真由美です。ここ数年のマイテーマは「介護」。取材でも高齢者にまつわること(介護のほか、終活や相続・遺言など)に関わる機会が増えてきましたが、どこか他人事でした。それがしっかり「自分事」になった途端、驚くほど冷静さを失ってしまったのです。
過去4回の連載では、「すい臓がん」で余命3ヶ月を宣告された父との日々(看取りまで)をお話ししましたが、今回から再び「義母の介護体験記」をお届けしたいと思います!
【アラフィフライターの介護体験記】#11
▶監視カメラにまつわる妄想が徐々にエスカレートし…
引っ越し早々、認知症が進行した義母。「優しい嘘」を取り入れながら、どう向き合う?
2年半ほど前、我が家の近所(高齢者専用住宅)に越してきたお義母さん。当初は新しい住まいを気に入り、楽しそうに過ごしていましたが、すぐに認知症の症状が進行します。
脳神経外科での診断は、「認知症」(軽度~中等度)。「同じ話を繰り返す」「同じものを購入する」「常に探し物をしている」などは、“通常運転”として捉えられるようになったものの、徐々にエスカレートする妄想や幻覚の症状に対しては私たちも戸惑いが多く……。
しかし、介護ヘルパーの資格を持つ叔母やケアマネージャー、社会福祉士の方からの「優しい嘘を取り入れる」「発想力と演技力を用いる」というアドバイスにより、課題だと思っていたことを少しずつクリアできるようになったのです。
かつての記事(【アラフィフライターの介護体験記】#4)でも少しお話ししましたが、妄想の症状が強く出てきたきっかけは、高齢者専用住宅の室内に設置されている「通報装置」(※)を「監視カメラ」だと思い込んでしまったことでした。
(※)24時間コールセンターにつながり、救援や救護、体調の相談にも乗ってくれる。
▶テーブルが変な場所に移動されている。その理由は…
ある日お義母さんの元を訪ねると、これまで部屋の中央に置いてあった折り畳み式のテーブルが、なぜか隅の方に移動されています。どう考えても不自然な配置のため理由を尋ねると、「ここならカメラに映らないから、安心なのよ」とのこと……。
そこから、監視カメラにまつわるストーリー(妄想)が繰り広げられ、最終的には「とりあえず目立った行動をしないよう、静かに過ごすわ」という謎の結論に(笑)。決して恐怖心で怯えるようなことはなく、この状況をゲーム感覚で楽しんでいるようにも見えました。
▶「お風呂場も誰かに見られている!」
「お風呂場も見られているから」と入浴を拒否。カーテンを閉め、一日中引きこもる生活に
しかし、「妄想」はあらゆるところに影響を及ぼします。「お風呂場も24時間見られているから、絶対に入りません!」と頑なに入浴を拒否(実はシャワーの操作が分からない、何となく面倒といった理由もあったようですが……)。
さらに「知らない人が入って来たから、ここで見張る!」と、玄関に座ったまま動かない状態が続き、「暗いほうが落ち着くから」と日中はカーテンを閉めたまま、部屋の中でも引きこもるように。
これには夫も困り果て、かかりつけ医やケアマネージャーに相談。「昼間はできるだけ家の中にこもらず、外で活動するように」と、デイサービスの利用を勧められました。
しかし、お義母さんには「知らない人が入らないよう、家を守る」という“使命”があるため、「今は家を空けられない」と言われる始末。デイサービスに行くどころではありません。そこで夫と私は、「優しい嘘を取り入れる」「発想力と演技力を用いる」(介護のプロたちからのヒント)を実行してみることにしました。
▶▶次のエピソード 「お風呂場も監視されている」認知症による妄想から、引きこもるようになった義母。妄想を「否定せず」現状を打破した、たった一つの方法とは