閉経の前後5年を一般に更年期と呼びます。日本人の閉経の平均年齢は一般的には50歳といわれていますが、新しい研究での平均値は52.1歳とされています。となると、47~57歳の世代は更年期に当たる人が多くなります。身体の不調に苦しみ「更年期障害」の状態に至る人もいます。
私ってもう更年期なの? みんなはどうなの?
オトナサローネは同世代の女性100人がいまどのような更年期を迎えているのか、そのあり方を取材しています。(ご本人の年齢や各種の数値は取材時点のものです)
【100人の更年期#121】前編
◆アイさん 55歳
東京都在住。63歳の夫、21歳の娘と3人暮らし
49歳の不調でも「まだ更年期とは言えません」と言われてしまった
アイさんが最初に体調の異変を感じたのは、47〜48歳のころでした。
もともと寝つきがあまり良くないほうでしたが、2〜3カ月もの間、朝までぐっすり眠れない日が続いたある日、貧血を起こして救急車で運ばれることに。幸い、そのときは点滴を受けただけで帰宅できましたが、その後も睡眠の質は改善せず、病院で睡眠薬を処方してもらうことで、ようやく眠れるようになったそうです。
同じ時期に、肌荒れがひどくなり、のどにも違和感を覚えたため、耳鼻咽喉科を受診。しかし、一人目の医師には「気にしすぎるから症状が出るんですよ」と、医師とは思えないような言葉を投げかけられました。納得がいかず、別の病院で診てもらうことに。
二人目の医師は内視鏡で検査を行いましたが、結果は「異常なし」。処方されたのは婦人科の代表的な漢方薬の一つである「加味逍遙散(かみしょうようさん)」だけでした。
「胸焼けではなく、のどが焼けるような感じでした。のどの圧迫感に加えて、逆流性食道炎の症状もあったんです」とアイさんは振り返ります。
年齢的にも「更年期障害かもしれない」と考えたアイさんは、49歳のときに婦人科を受診し、エストロゲン(女性ホルモン)の検査を受けました。しかし、医師からは「まだホルモンの数値は大きく下がっていませんし、子宮内膜の厚さも十分にあるので、生理はまだ当分、ありますよ。これでは更年期とは言えませんね」と告げられました。
ここでも処方されたのは、やはり「加味逍遙散」。アイさんの不調は、明確な診断がつかないまま続いていました。
「舌がピリピリ、親指がカクカク」。手の指のこわばりで整形外科へ
世の中がコロナ禍に突入したころ、アイさんの生活にも大きな出来事が起こりました。旦那さんが心筋梗塞を起こし、入院することに。
アイさんはそのとき、50歳。目に見えないストレスが積み重なったのでしょう。その1カ月後、舌がやけどをしたようにピリピリと痺れる症状が現れました。この違和感は一時的なものかと思いきや、今もなお続いているといいます。
舌の違和感に続き、今度は手の指がこわばるようになりました。「朝起きると、親指と人差し指が痛くて……。親指がカクカクするので、バネ指かな?と思ったんです」
不安になり整形外科を受診。レントゲンの結果、骨に異常は見られませんでしたが、医師からは「薬指が丸みを帯びているので、将来的にヘバーデン結節など、指が変形する可能性もある」と告げられました。
この整形外科は家から遠かったため、もう1軒、家の近所で診てもらうことに。そこでの診断は「バネ指による腱鞘炎」。
「年齢が年齢だから、あと何年か経てば治りますよ」
寄り添うどころか突き放すような言葉に、アイさんは唖然としました。さらに、驚いたことに、医師は「治ってない人はいないでしょ?」と逆ギレまでしてきたのです。
整形外科では埒が明かないと感じ、婦人科で手の痛みについて相談。しかし、医師の反応は素っ気ないものでした。
「やりたいのならホルモン補充療法(HRT)をやりますけど、とりあえず整形外科に行ってください」
結局、整形外科と婦人科を行ったり来たりするだけで、明確な解決策は見つからず。そんな中、別の婦人科で女性ホルモンと同じ働きをする、大塚製薬の「エクオール」を勧められ、試してみることにしました。
53歳、「エクオール」を飲むと、1年で手の指の痛みが半減
大豆製品を摂取したときに腸内で「エクオール」を作れるかどうかは個人差があります。これを調べるには、専用の検査キットを使用します。
アイさんが検査を受けた結果は、5段階中の3。「腸内でエクオールを作り出せるかどうかは微妙なライン」でした。そのため、53歳で大塚製薬のエクオールの摂取を開始しました。
しかし、飲み始めてから3〜4カ月は特に変化を感じなかったそうです。それでも続けていくうちに、1年後には「手の指の痛みが、すごく痛かったのが『少し痛い』くらいに半減」したといいます。
とはいえ、痛みが完全になくなったわけではありません。
「親指の痛みはなくなったけれど、痛みが違うところへずれていったような感じがします」
並行して塗り薬や湿布薬も処方されており、毎晩5本の指に湿布を巻いて眠っていました。そのため、湿布の効果も関係しているのかもしれません。
「エクオールは2カ月で約8000円。決して安いものではないですが、わらをもすがる思いでした」
思い返せば、アイさんは出産時にも手や体のこわばりを感じていたといいます。
ネットで調べると「出産時に手が痛かった人は、更年期にも同じような症状が出やすい」という情報を発見し、自分にも当てはまるのではと考えました。
一方、のどの違和感については、漢方薬「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」を飲むことで不快感が軽減。
「今は、調べれば情報がたくさん出てくるので、本当にありがたいですね。私もネットで自分に合った治療法をいろいろ探しました」
そんなアイさんがホルモン補充療法(HRT)を選ばなかった理由は、友人の体験談でした。
「友人がHRTを始めたときに、すでに閉経していたのに、再び生理が始まったと聞いて。それはイヤだなと感じて、踏み込めませんでした」
本編では、49歳でのどの違和感を感じて耳鼻咽喉科を受診し、その後、手指のこわばりを治そうと整形外科にも通ったものの、適切な治療を受けられなかったアイさんが、最終的に婦人科で「エクオール」を取り入れ、改善を実感したお話をお届けしました。
続いての▶▶ 「更年期はいつ終わるの?」更年期後期55歳が「元気になる」と感じたある治療とは
では、アイさんが取り入れた更年期治療についてお伝えします。
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