更年期、さらに立ちはだかる「介護×仕事」両立問題。発展する「エイジテック」がフェムテック同様に介護分野を席巻する「近い未来」【woman’s×オトナサローネ】 | NewsCafe

更年期、さらに立ちはだかる「介護×仕事」両立問題。発展する「エイジテック」がフェムテック同様に介護分野を席巻する「近い未来」【woman’s×オトナサローネ】

社会 ニュース
更年期、さらに立ちはだかる「介護×仕事」両立問題。発展する「エイジテック」がフェムテック同様に介護分野を席巻する「近い未来」【woman’s×オトナサローネ】
更年期、さらに立ちはだかる「介護×仕事」両立問題。発展する「エイジテック」がフェムテック同様に介護分野を席巻する「近い未来」【woman’s×オトナサローネ】 全 1 枚 拡大写真
  

25年4月1日に「改正育児・介護休業法」が施行されました。同法は仕事と介護の両立ができず起きる「介護離職」を防ぐため、雇用主側に、従業員が仕事と介護を両立できるよう環境を整備して介護休業などの利用を促進したり、介護に直面した従業員に個別にヒアリングするなどの義務が課せられるものです。

「足りないものだらけ」と思いがちな日本の労働雇用環境ですが、実は法整備上はOECD諸国と比較しても決して劣るものではありません。なのに、働く私たちの側には「私、休んでいいのかな…?」「えぇ、あなた休むの?」「休まれちゃ困るよ…」といった感覚が依然として残っていませんか? つまり制度だけでなく意識の改革も重要なのです。

そもそもこの法改正、ご存じでしたか? 私(オトナサローネ井一)は全然知りませんでした。大きなニーズがあるのにまったくサービスが足りない状態なのがこの「仕事と介護の両立支援」なのだそうです。

更年期障害支援サイドから女性の健康課題に向き合ってきたオトナサローネ編集部井一が、16年にわたり「女性の健康市場」のリサーチ・分析・企業支援を専門に行っているwoman’s(東京・江東)代表取締役の阿部氏に背景を伺いました。

*写真はイメージです

介護とは、じつは「積み残されたまま」の女性課題のひとつではないか

阿部・2019年からのフェムテックブームで「女性の健康」市場は拡大しましたが、更年期世代が抱える環境的な困難、「介護と育児と更年期の3つが重なる」というしんどい課題がそのまま積み残されたままだなと強く実感しています。

井一・オトナサローネでもいま、小林真由美さんの連載「アラフィフライターの介護体験記」が非常によく読まれています。実はこれまで介護はあまり読まれない傾向がありましたが、思えばそれは「介護を乗り越えた人が先生役としてノウハウをお伝えする」ものだったからかもしれません。渦中の人は時間が足りないから発信まで手が回らない、でも小林さんは発信が仕事だからリアルタイムで発信しています。結果的に、いままさに進んでいるしんどさに共感しながら気持ちを分かち合える場ができており、コメントも「つらいよね」「私も大変だった」という吐き出しだけでなく、「私はいまこういうアイテムを使っている」という、まさにリアルタイムのアドバイスが集まっています。

阿部・ライターさんとなると、仕事と介護が重なる「ビジネスケアラー」ですよね。そのほか、育児と介護が重なる「ダブルケアラー」など、とにかくいろいろな責務が重なりやすいのが40代50代です。そして、データを見てもやはり負担が男女均等になっているとは言いにくいのが現状です。

ざっくり概要を言うと、要介護・要支援高齢者は690万人、その介護をしている家族介護者が653万人。うち365万人は働きながら介護をしています。これは有業者全体の5.4%で、2030年に318万人への増加が見込まれます。しかし介護休業等の制度の利用率は11.6%にとどまり、介護離職者は年10万人、経済損失は年9兆円規模に及ぶと推計されます。*・厚労省「令和4年度 介護保険事業状況報告」・総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」・経産省「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業(サステナブルな高齢化社会の実現に向けた調査)」

ちなみに、更年期障害を原因とする女性の更年期離職は3年間で約46万人、経済損失は年4,196億円と推計されています。それも衝撃的な数字でしたが、更年期世代にとっては「更年期症状に、更年期離職に、そして介護……!」と、と気が重くなる話なんです。

■有業で介護している人の数(2022年)
・女性:208万人
・男性:157万人

■有業で介護している人の就業形態(2022年)
・女性:正規 69.9万人/非正規 109.9万人
・男性:正規 86.8万人/非正規 31.3万人

井一・有業で介護をしている男性150万、女性200万。思ったよりも男性が多いですね、こんなにいるのかな。また、更年期離職も年で10万人ほどと、介護離職とそれほど解離はないのに、経済損失が約20倍も違う。これはこれで別の問題がありそうですが、それはおいておいて。

阿部・自宅に要介護者がいると答えた人の割合ですので、夫婦の場合ならばどちらが主となって介護をしているのかはわからないのです。ただし就業形態を見ると女性は圧倒的に非正規率が高いため、憶測ではありますが、介護を続けるために働き方を変えたのはやはり女性が多いのでは、と推測します

現役層はまだ「シニアになった自分自身」を経験していない。経験からサービスを作れないことも課題の一つ

井一・特に女性の場合、更年期離職同様に、やむを得ず離職するケースが多数あることは簡単に想像できます。これだけ顕著な問題なのに、なぜあまり語られてこなかったのでしょうか。

阿部・当社では、女性ヘルスケア業界に向けたビジネスメディアを運営しているのですが、「介護」と「自死」に関する記事はあまり読まれないという特徴があります。男女ともに自死の理由の一位は健康問題なので、ヘルスケア業界で解決できる事は何かしらあるとの思いから、統計をグラフ化して記事にしたりしているんですが……。とても重要な社会課題ですが、目をそむけたくなる忌避感があるのかもしれません。同様に介護についても、カジュアルな気持ちでは見つめられないのはと感じています

井一・確かに、私たちのサイトでも、例えば一定数の当事者がいることが明らかな「毒親」というテーマが読まれにくかったりと、社会的実情と読まれやすさに乖離があります。

阿部・介護についてはネガティブなイメージもあいまって、新規事業として取り組む優先順位が高くなりにくいのでしょうね。また、ビジネスサイドの現役層は、自分自身がまだ介護された経験がないという点も重要です。

井一・なるほど。たとえば更年期障害や生理の困難であれば自分自身や周囲が経験をしていることもあるけれども、要介護者はその経験を生かして事業を構築できるポジションにあまりいないということですよね。

阿部・その証左として、新規事業を企画する事業者に「なぜ高齢者向け事業を立ち上げる方向にいかないのか」と聞いてみると、自社にシニア領域のビジネス経験がない 高齢世代は寝たきり、介護、年金、孤独死などなど様々な問題も降りかかり、ネガティブなイメージもあるため、熱意と当事者意識を持ちづらい、このどちらかの声がよく上がりました。

井一・経験者の存在はとても大きいですよね。たとえば更年期障害も、退職せずに頑張ってくれた先輩たちのおかげで更年期を乗り切る働き方の知見が貯まり、「みんな辛かったんだね、ネガティブなイメージも薄めていきたいよね」という動きが同時多発に起きて、結果いま私たちが10年前よりは格段にラクに働けているのだと感じます。

阿部・そういう意味では、高齢者向け商品も「生活の中に普通にある」という点が認識され、デザインにこだわるようになってきました。現在は「フェムテック」に続いて「エイジテック」という言葉が再注目されています。このような、ワクワクして未来を感じさせる言葉を使ってみるといった「表現の工夫」も大事なのかもしれません。言葉は人を動かす力が大きいですからね。これで楽しく介護できる!と思えるような製品が次々に出てくれば、それに続く企業も増えていくと思うんですよね。そういった好循環をいかにつくりだすか?を、私たち自身も常に考えています。

井一・編集部でも「エイジテックって言葉があるんだって」と話したら大変反応がよかったんです。例えば「介護と言われると『うちの親はまだだからな』とピンとこないのですが、エイジテックは高齢者全員がラクになる技術ですよね。うちの親の困りごとが解決してもらえるいいものないかな?って俄然興味がわきます」というような反応した。要介護状態になる手前の時間も長いのですから、そこも大事なマーケットですよね。

ここまでのお話では「エイジテック」の概要について伺いました。関連する記事では「エイジテック」今後の展望について伺っています。ぜひご覧ください。

▶▶「エイジテック」が日本経済を救う?見通しがいまだ暗い中、いよいよ団塊ジュニアが「大・介護時代」に突入する


《OTONA SALONE》

アクセスランキング

  1. 「ごくせん」「仮面ライダー」出演俳優、恋人の存在を実名で公表「結婚を前提に真剣に」

    「ごくせん」「仮面ライダー」出演俳優、恋人の存在を実名で公表「結婚を前提に真剣に」

  2. 山賀琴子、美腹筋際立つビキニショット公開「バキバキでかっこいい」「完璧ボディ」と反響

    山賀琴子、美腹筋際立つビキニショット公開「バキバキでかっこいい」「完璧ボディ」と反響

  3. ME:I、雨吹き飛ばす迫力パフォーマンスで観客沸かす【「MAIZURU PLAYBACK FES.2025」ライブレポート】

    ME:I、雨吹き飛ばす迫力パフォーマンスで観客沸かす【「MAIZURU PLAYBACK FES.2025」ライブレポート】

  4. SixTONES松村北斗&田中樹、ゲリラライブ実施に意欲 構想語る「歌舞伎町でやるの良くない?」

    SixTONES松村北斗&田中樹、ゲリラライブ実施に意欲 構想語る「歌舞伎町でやるの良くない?」

  5. 板垣瑞生さん訃報、芸能界から悲しみの声止まず 元メンバー・「ハイロー」「ブラックシンデレラ」共演者ら追悼

    板垣瑞生さん訃報、芸能界から悲しみの声止まず 元メンバー・「ハイロー」「ブラックシンデレラ」共演者ら追悼

ランキングをもっと見る