「昨日の夕食、何食べたっけ……?」。40代を過ぎた頃から、そう遠くない出来事が思い浮かばなくなることはありませんか。「単なる物忘れでしょ」と思っているかもしれませんが、認知症一歩手前の症状かも。
早めの対策をするためにも、オトナサローネでは、伊藤園が主催した『最先端 抹茶サイエンス 認知症予防と共生の新たな一歩』と題したウェルネスフォーラムを取材。登壇されていた筑波大学医学医療系 臨床医学域精神医学教授の新井哲明先生に、認知症や一歩手前の「軽度認知障害(MCI)」について解説していただきました。
▶え!その数なんと1000万人越え!?
認知症一歩手前の「軽度認知障害(MCI)」。認知症と合わせて1000万人超え
人生120年時代に突入しつつある現代。長生きするほど気をつけたいのが、認知症です。認知症のリスクの一つには、「加齢」があるからです。65歳からそのリスクを調べると、5歳年をとるごとに発症リスクが倍ずつ増え、85歳を超えると3人に1人、90歳を超えると半数以上になることが分かっています。
認知症で最も多い原因が、アルツハイマー病(アルツハイマー型認知症)です。それとともに、ぜひ知っておいてほしいのが「軽度認知障害(MCI)」。MCIとは、アルツハイマー型認知症になる一歩手前の段階で、「脳が健常な状態」と「認知症」の中間のこと。
新しい家電の使い方を覚えるのに時間がかかる、前日の昼・夕食の内容が思い出せないといった症状が現れます。本人の自覚あるいは家族からの指摘はあるけれど、日常生活全般には支障がない状態なので、見過ごされることも少なくないのです。
また、MCIの原因は、アルツハイマー病だけではありません。うつ病、精神疾患、ビタミン不足、甲状腺ホルモン不足、睡眠時無呼吸症候群といった体の異常も。そのほか、睡眠薬などの脳に働きかける薬の副作用も報告されています。
▶MCIの10人に1人は認知症に移行
10人に1人はMCI→認知症に。しかし、認知機能は戻せます!
MCIは、40・50代から目立ち始めます。認知症とMCIは2022年に1000万人を超えるほどになっており、MCIを含めて認知症対策は喫緊の課題です。
MCIと診断された場合、認知症に移行する人は年間約10%で、10人に1人の計算になります。もちろん、MCIのまま進行しない人、あるいは認知機能が戻る人も。そのような人たちは、正しい知識の元にMCIの段階から早期発見・対策に努めています。認知症の予防やその後の健康的な生活を保つために、MCIのときから意識を持って行動することが有効なのです。