大森元貴「あんぱん」歌唱シーンでのミセスとの違い 俳優業への本音「非常に興味深くて」【インタビューVol.3】
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◆今田美桜主演朝ドラ「あんぱん」
朝ドラ第112作目となる本作は、国民的アニメ「アンパンマン」を生み出した漫画家・やなせたかしと妻・暢がモデル。何者でもなかった2人があらゆる荒波を乗り越え、“逆転しない正義”を体現した「アンパンマン」にたどり着くまでの人生を描いた愛と勇気の物語。主人公の柳井のぶを今田美桜、のぶの幼なじみで、夫の柳井嵩を北村匠海が演じる。
大森は、作曲家のいずみたくさんをモデルにした、いせたくやを演じる。音楽を担当したミュージカル「見上げてごらん夜の星を」で嵩が舞台美術を担当することになり、嵩が作詞を担当した「手のひらを太陽に」の作曲を手がけることになっていく。
◆「あんぱん」大森元貴、いずみたくさんと通ずる部分
― いずみたくさんとシンパシーを感じている部分、自分だからこそ表現したいことはありますか?
大森:それはもう畏れ多いです。音楽は人の心を彩るものであって、一つの娯楽に過ぎないですが、されどものすごくそこに魂をかけている。いろいろな思いを注ぎ込んでいることは、先生の自伝や作品を拝聴させていただいても感じる部分であり、僕もそうでありたいと思っています。似ていると思うのは、大変おこがましいですが、純粋に人を明るくさせようとしているところは僕も共感します。
演技の面においては、たくやはきっと寂しがり屋な一面もあるんだろうなと思います。もちろん後々大成していくというのはあるうえで、どうしたら1人の人に自分の作っているものを真摯に届けられるのかとずっとグルグルしていたのは、作中であまり描かれないですが、きっと本人としては思うことがあるんだろうなと。演劇学校を中退するので、腹を決める瞬間があるんだろうと台本を読んでいても、演じていても、刺激を受けます。
― いずみたくさんは、ミュージカルから、CMソング、子供向けの曲と非常に幅広いと思います。大森さんの活動も私たちから見ると非常に多彩ですが、目指すところや理想が近いといった感覚はあるのでしょうか?
大森:ミセスとしては、日常に当たり前に存在している大衆エンタメみたいなものを大切にしています。なかなか最近はないですが、コンビニに行ったらミセスがいるみたいなことをしようと決めていて、それは人を明るくしたいという根幹としては、通じる部分もあるのかなと思っています。バラエティーをやらせていただいたり、お芝居の現場を体験させていただいたり、もちろん自分たちの中で幅を作りたいというのもありますが、難しいことを考えるよりは、楽しんでもらえれば一番良い。そこのピュアさは通じる部分もあるかもしれないです。
◆大森元貴、1週間でピアノ習得
― ピアノを披露されるシーンがありますが、ピアノのご経験はありましたか?今回に向けてどのくらい練習されましたか?
大森:人前でプレイをすることはない前提で楽曲を制作するくらいの技術なので、実際劇中で弾くと聞いて「やばい」となりました。1週間くらい、CM撮影からレコーディングから何に至っても、楽屋にピアノを用意しといてほしいと話をして、20秒でも時間があったら少しだけ触るようにして詰め込んでいきました。
― 音楽をやっている土台があったからこそ、1週間くらいでできたのでしょうか?
大森:どうなんだろう。「こいつ作曲を生業にしているのに大したことないじゃん」と思われないか、すごく不安です。いずみたく先生も史料を拝見する限り、ピアノは独学だったみたいなので「これはいけるぞ」と(笑)。小さい頃から教わって弾いていたというよりは、きっと自分なりのフォームとペースでピアノをされていたのかなと解釈して、「これはもう史実通りだろ」という顔で弾いています。
― ピアノは耳コピで覚えられたのでしょうか?
大森:楽譜が読めないので、ピアノの監修の方に演奏していただいたものを動画でいただいたり、うちのキーボードの藤澤(藤澤涼架)に教わりました。
― 何かアドバイスはもらいましたか?
大森:「これどうやって弾くの?」と聞いたら、「これは1週間じゃ無理だよ」と言われて、「いやいや、ちょっと待てよ」と。「やらなきゃいけないんだ」という話をして、耳コピの部分もあれば、最終的にはミセスの制作のディレクターも含めて見てくれました。間違えたりもしたんですが「これは調から外れていないからセーフだと思う」とそこだけ音楽家ぶるという、気合いで乗り越えた感覚はあります(笑)。ピアノを弾くシーンはものすごくドキドキしましたし、初日だったので「最悪だ!」と思いながらも前日からドキドキして臨みました。すごく印象に残っていて、楽しかったです。
― 初日は具体的にどのようなシーンだったのでしょうか?
大森:メイコ(朝田メイコ/原菜乃華)がのど自慢の予選会に出るための練習に付き合うシーンです。そこで僕は「ブギウギ」を弾くのですが、実際朝ドラの「ブギウギ」(2023年度後期)も全部観ましたし、当時から好きだったので「お!『ブギウギ』だ」と思ってブギウギしていました(笑)。
◆「あんぱん」大森元貴、歌唱シーンで意識したミセスとの違い
― 歌唱シーンでは、ミセスさんとして歌われているときとの違いはありますか?
大森:たくやはプレイヤーではないというのが大前提にあって、歌に対してレスポンスが早いのは嘘だろうなと思っていて。人は歌うときは少しのためらいがあるので、そのニュアンスを大切にしたいです。実際ミセスはすごくキーが高いですが、たくやで歌うときはなるべくキーを抑えていたので、歌うシーンではミセスを削る作業を意識したかもしれないです。
中園さん(脚本:中園ミホ氏)から脚本をいただいて「歌う」と書いてあって「やったな、中園さん」みたいな(笑)。でもすごく面白いですし、意味は分かりますが、僕が歌うことが目立ってしまうと作品を邪魔すると思って、監督の方と匠海くんも含めて、そこは繊細に描きたいというお話をさせていただきました。実際、事務所の方々にもお話を伺って、先生は非常に出たがりだったと聞いたので、難しいと思いながら、その感じは大切に、出たがりと言いながらも、それはいつも表に出ていないからこその欲求と遊びのコントラストみたいなものは自分なりに意識したつもりです。
◆大森元貴、芝居への充実感と音楽との違い
― 制作統括の倉崎憲さんも「毎日すごく楽しそう」とおっしゃっていましたが、お芝居に対してどう感じていますか?
大森:今まではどれだけ自分であれるかと自問したり、周りに問いかけられるような生き方をしてきました。大森元貴がいかに大森元貴としていられるか、楽曲を書く面でも自分と対峙する作業が多いので、逆に誰かになる、違う形として人生を送るのは非常に興味深くてとても楽しいです。その場で生まれるお芝居のキャッチボールは、普段はないものなのですごく刺激的です。
― 演じることは、自分を消す作業をしているということでしょうか?
大森:自分にお声がけいただいた意味を非常に考えますし、それは純粋に曲をただ作っているからではなく、勝手にものすごく大きいものを背負わせていただいているという感覚でいます。始まる前から倉崎さんもすごく褒めてくださるので、非常にプレッシャーです(笑)。その意味や表現の部分も含めて考えると、自分を消すというよりは、自分である意味といずみたく先生をモデルとしているいせたくやという人物がこの作品においてどのように「あんぱん」の一つの歯車になるのか考えている毎日です。
― 芝居や音楽の仕事の日で、気持ちに違いはあるのでしょうか?
大森:違います。演技の現場の方がしっかりしていますね(笑)。音楽は自分でいることや、今日自分が何を感じているのかが、ファーストに来ますが、お芝居の現場は、用意してくださった言葉たちがあって、演出があるので、どのような形になって、どのような指示をいただいても対応できる自分であろうという思いでいます。音楽の方だと自分が指示する側なので、どっちが気が引き締まっているとかではないですが、そこが違いです。いやあるな…演技の方が気が引き締まっています(笑)。
◆大森元貴、俳優業が与えた音楽活動への影響
― 音楽活動をメインにされながら、今俳優としても活躍されていますが、音楽業に影響はありますか?
大森:作詞作曲をする部分で、実際作品に影響があるかは自分でも分からないんですが、いずみたく先生が作られた楽曲が、今日に至るまで多くの方に当たり前に知られて、楽しんでもらえている楽曲がずっと世の中に残っているのは、自分がものを作る人として、何十年後かに残るかもしれないという自覚が芽生えた部分はあるかもしれないです。いずみたく先生のすごさは語らずともですが、やっぱりものを作る人には尊敬が止まらないです。もちろんやなせさんもですが、1人の生きた人生の証が、一つの物語になって後世に残っていくのは、とてつもないことだなと日々感じながらやらせていただいています。
― いずみたくさんのご親族の方々が収録に見学に来たそうですね。
大森:いせたくやという人間と向き合って表現をする中で、それがどう伝わるかはやっぱり分からないですが、圧倒的に近くにいらっしゃった方から、いせたくやのあり方を認めていただいたような気がして感無量でした。すごく嬉しかったですし、ホッとしました。
― ありがとうございました!
(modelpress編集部)
◆大森元貴(おおもり・もとき)プロフィール
1996年生まれ。音楽家。作詞家・作曲家であり、バンドMrs. GREEN APPLEの全楽曲の作詞、作曲、編曲など、全てをプロデュースするフロントマン。2025年、「あんぱん」への出演、「#真相をお話しします」では映画初出演&初主演も務め、マルチな才能で活躍の場を広げている。
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