「お会いするだけで更年期の沈んだ気持ちが前を向く」「楽しくお話して、気づいたら心にわだかまっていた重いものが消えていました」とファンも多数の産婦人科医・小川真里子先生。昨今は女性誌でもその丁寧な解説を目にする機会が増え、嬉しいばかり! 現在は福島県立医科大学での診察のほか、週に一度東京・JR五反田駅のアヴァンセレディースクリニックで更年期外来をお持ちです。
思春期外来のご経験もある小川先生に、更年期世代が知っておきたい「子ども世代の身体のこと」について伺います。今回は「子どもの月経トラブルと病院を受診する目安」について。
【女性の身体、思春期から更年期までby小川真里子先生】
小学校2年で胸が大きくなりはじめたら要注意、「最近の子は成長が早いのね」で済ませてはならない「思春期早発」
通常より早く第二次性徴が始まる「思春期早発」。骨年齢が進み、最終身長が低くなる可能性があるほか、原因に腫瘍性疾患が隠れていることもあり軽視はできません。
◆女児の場合
・7歳6ヶ月未満で乳房がふくらみ始める
・8歳未満で陰毛やわき毛が生え始める
・10歳6ヶ月未満で初経がくる
◆男児の場合
・9歳未満で精巣(睾丸)が大きくなり始める
・10歳未満で陰毛が生え始める
・11歳未満でわき毛やひげが生えたり、声変わりが始まる
これらが診断の基準。ですが、現在初潮の平均年齢は12歳台とされますが、8、9歳で初潮がきても『最近の子は早いよね』で済ませがちだそう。
「初潮は、その前に乳房が膨らみ、陰毛が生えてきて、ある程度成長が進んでからやってきす。ですから、成長がちょっと早いなと気づいた段階で小児科に連れて行ってほしいのです」
というのも、第二次性徴がくると骨端線が閉じて骨の成長が止まってしまうから。
「まだ小中学生の子どもを産婦人科に連れて行っていいものか?と聞かれますが、生理痛、PMS、月経困難症、生理がこないなど月経回りの症状は、子どもであっても産婦人科の範囲です。思春期早発は小児科の範囲ではありますが、迷うなら産婦人科でも大丈夫です」
まだ140台のお子さんが初潮後しばらくしてから来院、母娘とも思いつめた顔で「身長はいつ伸びますか?」と聞かれるケースなどでは、医療者としては言葉がないと小川先生。
「真剣にスポーツに取り組んでいるお子さんならなおさらです。そして、親が連れて行かない限り、まず受診につながらないのが思春期早発なのです」
最近の子どもは体格がいいので「3年生になるとそろそろカップのついたブラトップが必要よね」と話した記憶があります。あまり気にせずそのままにしてしまいましたが、念のため受診してもよかった状況だなと気づきます。
「成長が基準より早いなと気になり始めたらすぐに小児科に行っていただいたほうがいいのですが、専門的な分野は『小児内分泌』。専門となさる先生は多くはないのが現状です。もし通える範囲で見つかるならば、最初から専門医に相談してみてもいいでしょう」
ここで単純な疑問です。背がある程度のペースで伸びていて、身長が止まっても大丈夫そうだなと感じる場合、仮に思春期早発であってもOKという考えでいいのでしょうか? それとも他の疾患の原因にもなる可能性があるから治療すべきなのでしょうか。
「腫瘍が原因で引き起こされる場合があるため、いちどは診察を受けてください。いちばん問題になるのは身長ですが、現在の身長ではなく最終身長を予想する必要があります。また、子ども本人の気持ちになってみると、あまりに早く生理がくることで学校で嫌な思いをする可能性もあります。治療では二次性徴を起こすホルモンを押さえる薬を使いますが、治療方針は総合的な身長や骨年齢、骨単線が閉じているかでの話し合いになります」
男児の場合は身長が先々の大きな問題となり得るほか、精巣腫瘍などの疾病が潜んでいる可能性があります。また、二次性徴が遅れるケースでも同様に受診が必要。13歳までに乳房発育がみられない、15歳までに初経がないケースが当該です。14歳でも初潮がきていなければそろそろ受診を検討してみてもとのこと。
「どちらにせよいちどは小児科に相談してください。まずは近隣の小児科に相談すれば、しかるべき病院を紹介してもらえるはずです」
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