いよいよラストの大阪万博。「見逃したくない」パビリオンについて、改めてご紹介します。この記事ではハンガリー館を。
前編記事『個人的1位は「ハンガリー館」!いつ行っても必ず聞ける美しい民族音楽、美しすぎるお食事、そして何より!』に続く後編です。
このレストランのためだけに行列する価値がある。日本国内ではほぼ食べられないハンガリー伝統料理
建物の2Fはハンガリーパビリオンの併設レストラン「ミシュカ キッチン&バー」。私が知る限り東京でも5軒あったかどうかのハンガリー料理のレストラン、これは並ぶ甲斐があります。
「ミシュカ」総料理長、料理人歴40年のヴィダーク・ゾルターンさんが、私たちがお願いしていたお料理を仕上げてくださっています。
ハンガリー料理といえば、煮込みスープの「グヤーシュ」でしょうか。世界三大貴腐ワインと呼ばれるトカイワインのほか、フォアグラ、アカシアはちみつなど、知られざる食の宝庫です。料理はパプリカをふんだんにつかう点が特徴。
トカイの土着品種、ハールシュレヴェリュ100%の白。
ハンガリーの人たちは昼間からお酒をいただくときは炭酸で割った「フルッチ」を楽しむと聞いて、さっそく作っていただきました。お料理は前菜から。
前菜はぜひぜひぜひ、鴨の名産地ならではのフォアグラを頼みたい!
ご覧ください、このスムースなフォアグラ! 添えられたリンゴゼリーは一瞬なんだろうとなりましたが、なるほど、フォアグラにはこういう爽やかな甘みを合わせるのね。ブリオッシュはおそらく過去イチくらいに美味しくて、一緒に座っていた子どもたちが瞬殺しました。
グリルしたパプリカに、キャラウェイシード、コショウ、マスタード、塩、ディル、パプリカパウダーとレモンの皮を効かせたスパイシーなチーズクリームを詰めたもの。トマトサルサは細かく刻んだトマトにスパイスとオレンジをアクセント。私がイメージするハンガリーのサラダはこういう感じかもしれないです。
羊が得意ではないのでいただかなかった1皿ですが、食べた鞠子さんが「おいしいわよ!!!」 ラムが好きならフォアグラとこれとワインだけでもイケる。
スープ、できれば2つとも試してもらいたい!意外な味だから
おそらく地元では、グヤーシュは日本のご家庭カレーのように、もうちょっと乱暴に作られて食べられているのではと想像します。とても端正で美しい、料亭で出てくるお茶漬けのような存在。こってりとさっぱりの、こってり側なのだそうです。
お二人以上いらしてスープを頼むつもりなら、これもぜひシェアしてもらいたい一皿。見た感じジャガイモのポタージュですから、そうだろうと思って口に運んだところ「想像してたのと違う!」となる味です。じつはサワークリームを使っているのだそうで、こちらはさっぱり側。
メインは6品ありますが、どれを食べても大満足です!
ショーレットは、白インゲン豆とまだら豆、押し麦、オニオンジャムをじっくり煮込んだもの。シュトゥルーデル生地で包んだ鴨のコンフィをパリパリに焼き上げてオン。さらに、卵の黄身をパン粉で包み、サクッと揚げたものもトッピング。これ、トマト味っぽく見えるけれど、パプリカベースなんですね。
玉ねぎ、パプリカパウダーとじゃがいも、カリカリのコルバース(ハンガリー風ソーセージ)チップスを加えた「パプリカ風味のポテト」のうえに、ゆっくり焼き上げた豚スペアリブが。さらに、しょうがとニンニクを効かせたピクルス風きゅうりサラダが、爽やかなアクセントに。
サワークリームとパプリカソースで煮込んだ鶏むね肉。卵入りガルシュカとは、小麦粉、卵、水で作ったハンガリーの伝統的なパスタを軽く炒めた卵と混ぜ合わせ、オーブンで仕上げた一品。これもちょっと意外な味でした。
私がいただいたのはこれ。米の代わりに大麦を使用し、野菜と一緒に炊き込んだリゾットです。オンされた豚肉のローストは絶妙に強めの塩加減で、ほこほこした大麦ととってもよいコンビネーション!
ところで、ハンガリーの毎日のお食事事情とは?
まさか、こんなに毎日豪華なお料理を召し上がっているわけではないですよね?と、ヴィダーク・ゾルターン総料理長とコロンツァイ・バーバラさんに聞いてみたところ……。
「週末は煮込み料理を仕込んだりして、お昼を豪華に作ります。しかし普段は朝はパンなどシンプルに、昼は社食と学校給食、共働きなら夜はごく軽くいただきます。グヤーシュはとても手間のかかる煮込みですから、毎日は作れないです(笑)」
ハンガリーは遊牧民としての伝統で豚料理が多いのだそう。オスマントルコ時代にはムスリムに収奪されないよう、敢えて豚を飼育していたとも言います。
「食卓に多くのぼるのは豚と鶏。あとは年中七面鳥を食べています。あひる、がちょうも食べます。よく日本の人には主食はパンですかと聞かれますが、主食のコンセプトが違います。白いご飯があっておかずがたくさんというわけではなく、まずはお肉。きょうはこのお肉だからこの付け合わせ、このお肉の調理法だからこの付け合わせというふうにメニューが決まるんです」
また、大皿から取り分けてシェアということもハンガリーではせず、常に1人前なのだそう。だから取り皿という概念がないそうです。
「写真をもういちど見ていただきたいのですが、前菜、スープ、メイン、すべての料理の上にいろいろな具が載っています。これは全部でバランスを取って食べるという考えがあるから。さっぱり、スッキリなどいろいろな味わい、食感を同時に楽しめるよう、異なるものの組み合わせを意識します。民族衣装もそうですが、これにはこれという組み合わせが複雑に存在しています」
ただし、シェアはしないながらも、グヤーシュだけは少量作っても美味しくならないため、みんなで屋外で大きな煮込み鍋で作り、自分のお皿にとって食べることがあるそうです。
また、今回はメニューに入れませんでしたが、鯉で作る「漁師のスープ」も定番。これ1品とパンがあれば本来はOKという具沢山スープな点はグヤーシュも同様で、このほかデザートはみんなしっかり食べるそうです。
また、四季に合わせた旬の野菜をみんなで食べるのもハンガリーならではの楽しみ。庭があれば野菜を育てるご家庭も多いそうです。果物も豊富で、4月のいちご、さくらんぼに始まり、もも、あんず。
「ハンガリー人はあんずが大好き、生で食べるほかジャムにもします。ももとあんずが同時期に出回りますが、ハンガリー人にとってはジャムといえばあんず、そのくらい好きです」
木いちご、ラズベリー、プラム、ぶどう、りんご……やっぱり日本とハンガリー、似ているところがたくさんありますね!
ハンガリーには温泉もあるんですって!私たちの好きなもの全部あるじゃん!
ああ満腹と思っていたら、最後に「ブダペスト市街だけで120もの温泉がある」と耳にして、再度聞き込みが始まってしまいました。
「ハンガリーの温泉はぬる湯で、水着を着て混浴で長時間入ります。温泉プールですね。基本的に治療目的で、体にいいのでリウマチの人などが処方箋をもらって入ります。最近ではウェルネス目的のスパホテルができてきて、家族みんなでプールみたいに入るところもあります」
西の法には温泉湖もあるほか、おじさんがチェスをやっている写真で有名な温泉もあるそう。みんなで1日かけてゆっくり入るのが基本です。
取材日からは3Fのスペースでビーズを使った小物づくりのワークショップもスタートして、美しいビーズ作品が展示されていました。
あまりに美しい、もうビーズも買いに行かざるを得ないため、さっそく春祭りの時季のスケジュールを都合してみます!
つづき>>>個人的1位は「ハンガリー館」!いつ行っても必ず聞ける美しい民族音楽、美しすぎるお食事、そして何より!