
高市首相、ご就任おめでとうございます。2025年9月に創業109年を迎えた主婦の友社は一貫して「家庭の幸福と女性の地位向上」を祈り出版活動を続けてきました。日本憲政史上初の女性首相の誕生を心よりお祝い申し上げます。
賛成反対、どちらの立場であれ、働く女性陣として「初の女性首相に願うこと」をオトナサローネ執筆チームがリレー連載します。
TOP写真出典/高市早苗氏公式インスタグラム
【女性首相誕生に思うこと、願うこと】#7
小学生の女の子が将来の夢に「総理大臣」と書いて笑われる時代が終わった
2025年10月21日、高市早苗さんが第104代内閣総理大臣となり、日本憲政史上初の女性総理が誕生しました。大学の頃からフェミニズムに関心がある筆者は今回の「日本初の女性総理誕生」、そして高市早苗さんという個人に大きく期待できる点がいくつもあると感じています。
高市さんが総理大臣に決まった際、一部からは批判的な声もありました。それは高市さんが“男性社会の中で生き抜いてきた男性的な思考を持つ人”であり、政治理念や政策も今までの男性総理と同じようなものになるため女性差別解消には繋がらず、女性総理を手放しでは喜べないからというもの。つまり高市さんは性別だけが女性で中身は男性であるという論調が一部から出ていたのです。
しかしそもそも中身や思考が男性的であろうと「生物学的性別が女性である人が総理大臣をする」ということは、難しいことを抜きにしても前向きに捉えていい状況だと思います。北欧諸国ではジェンダー平等を目的として企業の管理職や取締役、国会議員など決定権を持つ立場に一定数の女性を据えるクオーター制を導入しています。
実際に女性がリーダーに立つことで出産や子育て当事者が働き方や政策を考えるので、女性だけでなく社会全体が生きやすく働きやすくなることにも繋がるでしょう。そしてそれ以上に大きな効果が期待できるのは次世代です。ロールモデルがいることで「私もリーダーになりたい」、「私もリーダーになっていいんだ」と思う若年層や子どもも増えるという流れが起きていく。
現役世代の私たちが子どもの頃は「総理大臣=男性がなるもの」という認識が強かったです。しかし高市さんによって今の子どもたちは「総理大臣=男女は関係ない」という認識に確実に変わっていくでしょう。小学生の女の子が将来の夢に「総理大臣」と書いて笑われる時代が終わったということです。この日本のトップオブトップのロールモデルがいることの次世代への影響は計り知れません。
「女性は産む機械」発言にも毅然と批判した
クオーター制のように強制力を持って決定権のある立場の女性比率を上げるとなると、どうしても「能力がないのに女性というだけでリーダーに立つべきではない」という意見が起きます。ただ高市さんは能力があるから総理になったわけで“女性だから”総理になったのではないことは明白。
高市さんは両親ともに政治家ではない非世襲。また「女だから大学の費用は出さない」と言われたことから慶應義塾大学と早稲田大学に合格していたものの学費の面から諦め、実家から通える地元の神戸大学に進学。学費はアルバイトをして全額自分で稼いだという生い立ちです。
また婦人科系の疾患を患ったことから出産を諦めた経験があります。これに対して「出産も子育てもしていない人に少子化対策は期待できない」、「女性が生きやすい国を作れるのか」という意見もあるかもしれません。しかし高市さんは2004年に結婚した元国会議員の山本拓さんの連れ子を3人育て、2025年からは脳梗塞を患っている山本さんの介護も担っており、子育てや介護の大変さを十分に理解している人です。実際に2007年に問題になった当時厚生労働大臣だった柳沢伯夫さんによる「女性は産む機械」発言の際、高市さんは「私は産めない体なので不良品ということになる」と大々的に批判していました。
同じように出産経験のない小池百合子東京都知事は手厚い子育て支援を展開して都民の子育て世帯から「百合子は東京の母」とまで言われるようになっています。そこには「私美緒出産や子育てをしたから」というわかりやすい経歴や属性での政策アピールではない、強い少子化対策や子育て層を応援したい心意気が見られます。高市さんも男社会で生きてきたからこその悔しさや生き辛さも痛いほどわかっている人が総理大臣になってくれることは私たち女性にとっては大きな救いとも思えるのです。
私たち女性の政治参加がどう進むのかも問われている
子育て支援や女性優遇とも取られかねない政策をすると、必ずそれ以外の層から批判が起きます。しかし高市さんの場合は出産や子育てを経験せず、ワークライフバランス無視でバリバリ男性並みに働いているからこそわかる苦悩や見える景色もある。独身や男性からの「子育て世帯や女性ばかり優遇するな」という反発が起きないような政策も期待できるというのは、日本の政治にとって大きな進歩でしょう。
日本国内では特に女性が「どうせ誰がリーダーになっても女性の社会や家庭でのあり方は変わらない」という諦めムードが漂っている気がします。この諦めこそが女性の政治参加を減退させ、さらに女性自身が生きづらくさせている負のループへと繋がっているような気がしてなりません。
誰に投票しても自分の生活は変わらない。政治に関心を持っても決定権を持っているのは偉いおじさんなのは政治も家庭も同じ。だから自分は言いたいことは言わず、社会や旦那に従えばいい。そんな空気です。
しかし高市さんが日本初の女性総理大臣になって「女性でも能力があれば日本で政治のトップになれる」ということ、政治の中心に女性がいてもいいという証明にもなっています。「政治に参加しましょう」、「政治に関心を持ちましょう」と言われなくても自発的に政治に向き合わなければいけない、私たち女性たちの政治参加の是非が真っ向から問われるようになっていることも自覚しなければいけないでしょう。
「女性総理だから」、「ファッションやメイクが気になる」という理由でもいい。高市さんの動向に多くの女性が注目するようになるのであれば、それはこの投票率がとても低く、ジェンダーギャップ指数が先進国でも最低の日本において女性総理としての役割を果たしているとも言えるのではないでしょうか。そういう意味でも私たちは“日本初の女性総理大臣”の誕生を単純に喜んでいいと思うのです。



