
日本人女性の閉経は平均して50歳から52歳。閉経前後5年、合計10年を更年期と呼び、この時期に女性ホルモン減少を起因として起きる不調を更年期症状と呼びます。症状が強い場合は「更年期障害」の状態に至ることも。
更年期症状そのものは自然な老化現象の一部ではありますが、さまざまな対策をとることで「緩和することができる」、決して我慢してやり過ごす必要のない状態です。典型的な「ホットフラッシュ」「イライラ」のほか、不眠、肩こり、皮膚の痒みなど思わぬ症状が出現することもあり、中でも「手指の痛み・関節痛」と更年期の関連性は最近よく知られるようになりました。
今回登場するミチコさんもこれら更年期症状に苦しんだ一人。そのエピソードを伺います。
ミチコさん
50歳 夫、中1の娘と3人暮らし。税理士事務所勤務ののち社労士として独立、税理士の夫とともに事務所を営む。凝り性で、趣味の料理は先生について学び、懐石料理や西洋菓子、インド料理など幅広い分野で評判。
【100人の更年期 #138】前編
最初は「かかと」の痛みだった。坂をころげるように体のあちこちが「痛くなっていく」
私の母は現在78歳ですが、60歳ごろ関節リウマチを発症し、現在も闘病しています。先日「制御性T細胞」の研究で坂口支文先生がノーベル賞を受賞しましたが、内容を聞いた医師志望の娘が「もしかして私がおばあちゃんのリウマチを治せるかもしれない」と目を輝かせました。
このような、昔ならば「仕方ないよね」と諦めて生きていくしかなかったしんどさ、辛さが科学の進歩でどんどん「治せる」ようになっていくのは素晴らしいこと。そして、私も同じような「我慢しなくていい」体験をしたのでお話させてください。
私が苦しんできたのは「痛み」です。45歳くらいから朝起きたときにかかとがものすごく痛むようになりました。くるぶしの下、かかとの外周が左右両方痛むのです。朝起きてベッドから地上に降りた瞬間なんて、ギャッと声が出るほど痛い。しばらくすると軽減していき、出勤するころには普通に歩けて、日中は再現しません。動かないで寝ている状態から動いたときに痛みを感じるんです。
思い返せばちょうどコロナの頃、1日中家にいて家事全般をこなして、立っている時間が長かったころに悪化しました。事務所へ出勤すれば1日座り仕事ですが、家にいるとどうしても立ちっぱなしだからかな。いや、コロナ前からすでに痛みはあったかもしれない。45歳どころか42、43歳ごろから痛んでいたのかも。ずっと我慢していたから忘れていました。
妹が看護師なので相談してみたら「水分が足りないから水を飲んだほうがいいよ」と言われ、気を付けていましたが、あまり変化はありませんでした。運動不足かなと思って対策してもさほど効かず、そうこうするうち49歳で閉経するとこんどは膝の痛みが急激に悪化しました。急にしゃがめなくなって、かかとも膝も激痛です。もう電車で通勤なんてできず、やむを得ずタクシーを使うのですが、膝に力が入らないのでこんどは乗ったタクシーから降りられないのです。
1年あまりの間に「膝」の激痛にも襲われ、車の乗り降りもできないレベルに。通勤を諦めて在宅勤務に変更し…
私はいまだに大量の紙の資料を扱う仕事なので、いつも大きなトートバッグに書類を詰めて肩にかけて移動していました。が、そんな荷物は持てなくなり、小さめの旅行用キャリーバッグをころころ引いて通勤するようになりました。とはいえ日本は全然バリアフリーではないので、事務所の最寄り駅では最後にキャリーを持ち上げないとなりません。それがあまりに苦痛で、事務所に行くと考えただけで心臓がきゅっと縮まるようになりました。
これはだめだ、メンタルをやられてしまう。これまで依頼されたら絶対に断らなかった仕事も思い切ってセーブし、自宅で作業できるようにしました。私は個人事業主ですから一度手放した顧客はもう戻ってもらえない可能性がありますが、すでにそれを迷っていられる状態ではなかったのです。
とどめは肩、腕、指の痛みです。肩はもともと長時間のPC作業で凝っていましたが、今から1年くらい前かな、最初に腕が上がらなくなりました。友人に話したら「五十肩はいきなり治るから心配ないよ」と言われたものの、いっこうによくならず、続いて半年前くらいに指までしびれ始めました。もう本当、仕事を辞めないとならないと絶望しました。
何かを掴むと指がしびれます。ペットボトルの蓋は開けられないし、瓶の蓋なんて掴むことすらできないからパパにお願いするしかない。指を反らせることができず、関節もカクカクします。やがて指先が常にしびれるようになり、動かすこと自体に支障が出るようになりました。こうなると、仕事のPC作業や書類記入もさることながら、趣味でもある料理に大きな影響が出ました。
包丁で何を切るにも力が入らず、心もとない感じで、とりわけ利き手が酷い。包丁を握ることはできても力が入りませんから、かぼちゃなんて絶対無理、大根を切るのも怖い、千切りなんてもう終わりの見えない大労働です。
こうした痛みには波があって、しびれない日もあります。ただ、膝だけはずっと痛かったかな。何もしていないときは痛みもないのですが、動かすたびに痛いのです。立つときに膝を使うのがとにかく恐怖で、座敷なんて絶対ダメ。会食にお招きいただいてもトイレに立つときの激痛を考えるだけで気が滅入ります。「椅子のお席にしていただけますか」と先にお願いするようになりました。
眠れない、顔汗、頻尿、痛みで目が覚める…更年期に出る主要な症状がほとんど出ていた?
まだまだあります。閉経前後から急にトイレも近くなって、朝までぐっすりとは眠れなくなりました。夫もそうですが、朝6時までは寝ていられず、3時半か4時には起きてしまいます。子どものお弁当を作るプレッシャーもあるのですが、「眠さを感じるのも若さだったんだな」と思うようになりました。眠りそのものが浅くなったのもありますが、寝返りで体に痛みが走って起きてしまうのです。痛みで目が覚めるのはまるで拷問です。
もうひとつ、汗。閉経前から顔汗は出ていましたが、昨年は特に悪化しました。どのタイミングで汗が噴き出るかはまったくわからないけれども、いちど出始めるとぽたぽた垂れるレベルでお化粧も落ちてしまい、お客さんの前で本当に恥ずかしかった。さらに寝ている間に体が熱くなったり寒くなったりして、それでも目が覚めていました。すごく熱くなって布団をはいで、寒くなってかけて、すぐ風邪をひいて。
痛みについては母もり患していたリウマチという病名が頭をよぎりましたが、検査しても問題なしでした。妹が甲状腺にトラブルを持つので私もMRIを撮ってもらいましたが、「ちょっと甲状腺がもやもやしてる、橋本病ですね、でも3人に1人は橋本病ですし、ホルモン値の低下がなければ気にしなくていい、定期健診だけでOKです」とも言われました。「あまりに疲れやすいんですが」と聞いたら「それは年齢のせいです」と。
病院は次に何科に行けばいいのかな。恐ろしく疲れやすくて、ちょっと根を詰めて仕事をすると半日くらい起き上がれなくなるのはやっぱりおかしい。産婦人科に行ったほうがいいのかな、でもまた「年齢のせいです」とか「痛みくらいみんな乗り越えているのよ」なんて言われたら次はキレちゃうかもしれない……と思っていたときに、サプリを勧めてもらいました。
これが私の運の変わり目でした。
つづき>>>症状がよくなってみてわかる。更年期には何が起きるのかを教育しないいまの状況は女性の権利の侵害ですらある




 
         
         
         
        