麻しん感染拡大防止へ、神奈川県が接触者向け無料ワクチン接種
子育て・教育
リセマム/生活・健康/その他
麻しんは「はしか」とも呼ばれる、麻しんウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症。麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、人から人へ感染し、その感染力は非常に強いとされている。
わが国では予防接種法に基づき、麻しんの流行を防ぐために、市町村が実施主体となって定期接種を行っており、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)を1歳の1年間に1回、小学校入学前の1年間に1回、合計2回接種する。
しかし、2回の定期接種を受けなかったなどにより、免疫を持たない人や不十分な人が感染すると、ほぼ100%発症し、根本的な治療薬はなく、重症化すると死亡する場合もある。
神奈川県での発生状況は、2024年は0件だったが、2025年は11月末までに41件の感染が確認されており、麻しんの予防とまん延防止が喫緊の課題となっている。
麻しんの免疫を持たない人や不十分な人であっても、麻しん患者に接触した後72時間以内にMRワクチンの接種(緊急接種)を受けることで、麻しんの発症を予防できる可能性がある。
しかし、現状では、MRワクチンの在庫があり曜日を問わずに接種が可能な医療機関を探し出すことは困難であるとともに、接種を受ける人に自己負担が生じることが、限られた時間の中で緊急接種を行ううえでの課題となっていた。
そこで、麻しんの発症予防およびまん延防止の観点から、麻しん患者との接触者であって、保健所の調査によって対象者として特定された県民のうち、接種を希望する人が、県が指定する拠点医療機関において、無料でMRワクチンの緊急接種を受けられる体制を整備する。
実施期間は2025年12月22日から2026年3月31日まで。実施地域は神奈川県内全域。
対象者は神奈川県民のうち、次の要件にすべて合致する人。(1)保健所により特定された「接触者」に該当すること、(2)次の要件のアからエにすべて合致すること、もしくはオに該当すること、(3)妊娠をしている人などの「接種不適当者」に該当しないこと、(4)同事業による予防接種を希望すること。
要件のアからエは、ア:1972年10月1日以降に生まれた人、イ:生後6か月以上の人、ウ:麻しん患者と最初に接触してから72時間以内の人、エ:麻しんに感染したことのない人で、かつ、いずれかに該当する人。
エの詳細は、I:MRワクチン未接種または接種歴が不明の人、II:MRワクチンの接種歴が1回の人、III:MRワクチンの接種歴が2回だが、2回接種後の抗体検査により抗体価が低いことがわかった人で、その後未接種であった人。
オは「アからエ」には該当しないが、保健所において特に緊急接種が必要と判断される人。
実施場所は県内の感染症指定医療機関等で県が指定する拠点医療機関10か所。拠点医療機関については、おおむね保健所の所管区域ごとに指定しているが、通常の地域医療提供体制とのバランスを考慮して非公開とする。具体の箇所は緊急接種対象者となった人に対して保健所から個別に案内する。
また、定期接種の対象者だけではなく、医療・教育関係者や海外渡航を計画している成人も、麻しんの罹患歴がなく、2回の予防接種歴が明らかでない場合や自身の免疫が不十分なことが判明した人はワクチンの接種を検討してほしい。
なお、2回の予防接種歴または抗体検査歴が明らかでない場合、まずは抗体検査を受けたうえでワクチン接種を検討してほしい。
《吹野准》
この記事の写真
/


