
腸内環境が整うと、美肌や全身の健康などにもいい影響を及ぼすことはすでに周知の事実です。腸活というと、食物繊維や乳酸菌などが真っ先に頭に浮かぶかもしれませんが、実は「ポリフェノール」にも腸活効果があるんだとか。
今回はいま改めて注目されているポリフェノールの機能や可能性について、一般社団法人ウェルネス総合研究所が開催した「ポリフェノール研究セミナー『知られざる紅茶ポリフェノールの働き』最新知見」に参加して、甲南女子大学医療栄養学部医療栄養学科准教授の川畑球一先生にお話を伺いました。川畑先生は食品機能学を専門とし、腸内フローラとポリフェノールの機能的相互作用に関する研究に従事されています。
▶ポリフェノールが注目される理由は
今改めて注目される!強い抗酸化作用を持つ「ポリフェノール」が40代50代の救世主に
みなさん間違いやすいのですが、そもそもポリフェノールとは栄養素の名前ではありません。化学的にはフェノール性水酸基を2個以上持つ化合物の総称を指します。実は、カテキンやイソフラボンなどもポリフェノールの一種なんです。そんなポリフェノールは約8000種類以上もあると言われ、さまざまな機能を持っています。
昨今特に注目されているのが美容や老化予防、病気予防の観点で、よく耳にするようになったポリフェノールの「抗酸化作用」です。抗酸化作用とは、体内で増えすぎた活性酸素の働きを抑え、細胞の老化やダメージを防ぐ働きのことです。
私たちは呼吸や運動、ストレス、紫外線などによって活性酸素を生み出します。活性酸素は少量であれば体に役立ちますが、増えすぎると細胞を傷つけ、血管を老化させ、体内に慢性的に炎症を起こしやすくなり、老化や病気の原因になります。
ポリフェノールは酸化ストレスを抑制し、活性酸素などの有害物質を無害な物質に変える強い抗酸化作用を持ちます。
ゆえに、動脈硬化や糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病を予防することが期待されています。ほかにも、ポリフェノールの一種であるお茶に含まれるカテキン類は、タンパク質に結合することで抗がん作用などがあることが研究でわかってきました。さらには抗アレルギー作用や抗炎症作用といった多彩な機能性も持っていることが近年の論文でも発表され、ポリフェノールのさまざまな健康効果は世界的にも注目されているのです。
▶腸活効率も上げる!?
実は腸活にもいい!?「ポリフェノール」と「腸内フローラ」の密接な関係
そうした中で着目しているのが「ポリフェノールと腸内フローラの関わり」です。
ポリフェノールは小腸から吸収されて全身に循環するといわれていましたが、小腸ではほとんど吸収されないことが最近の研究で判明しました。小腸で吸収されるのはわずか10%で、残りの90%は小腸で吸収されずに大腸へ流れます。ただそのまま排泄されるわけではなく、大腸の腸内フローラと相互作用するのです。
大腸に生息する腸内フローラは、約1000種類、約100兆個もの数があります。食事や生活習慣で菌叢バランスが乱れることが病気の第一歩にも繋がることは広く知られているでしょう。
ポリフェノールは腸内フローラを安定させる機能を持っています。ポリフェノールが大腸で善玉菌のエサとなり、腸内細菌のバランスを整えてくれることで、短鎖脂肪酸(酢酸・プロピオン酸・酪酸)が産生され、血液を通じて全身に循環して免疫や腸管、脳、代謝など全身にいい作用をもたらします。
短鎖脂肪酸は偏った食事や生活習慣の乱れ、ストレスなどによって腸内フローラのバランスが崩れるとうまく作られません。しかしポリフェノールが腸内細菌叢に作用して短鎖脂肪酸の産生を促すというのが注目すべき点です。
また、ポリフェノールはビフィズス菌の増殖を助けるという研究結果もあります。ある研究では、ケルセチン(野菜や果物に多く含まれるポリフェノール)がビフィズス菌の抗炎症活性を高める効果が確認できました。これはビフィズス菌がもともと持っている抗炎症活性をポリフェノールが引き出したと考えられ、またポリフェノールが善玉菌の機能を高めてくれる可能性を示唆しています。
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