「お会いするだけで更年期の沈んだ気持ちが前を向く」「楽しくお話して、気づいたら心にわだかまっていた重いものが消えていました」とファンも多数の産婦人科医・小川真里子先生。現在は福島県立医科大学での診察と併せて、週に一度、東京・JR五反田駅のアヴァンセレディースクリニックで更年期外来もお持ちです。
長年に渡って女性特有のトラブルに向き合ってきた小川先生に、更年期世代女性が知っておきたい娘さんたちの世代についてを伺います。今回は「10代の子どもが月経関連のトラブルで産婦人科を受診する目安」です。
【女性の身体、思春期から更年期までby小川真里子先生】
親の時代とは常識が変わっています。生理は休んでいいんです！
月経困難症（生理痛）、PMS（月経前症候群）などでの受診は、親の世代とはかなり様相が変わっています。最近は高校3年生、中学3年生など、受験が視野に入ってきたタイミングでの婦人科受診が増えました。
何歳で症状がひどくなるからというより、この状態で受験と重なったら大変だと親が思うのがきっかけになるようです。月経困難が原因で成績が悪くなることもあります。受験直前からピルを飲むのは少し心配かもしれませんが、月経自体はずらすことができますので、コントロールを早めに始めたいものです。生理は休んでもいいんです。
メンタルに影響の出るPMSに限らず、単に痛いというだけでパフォーマンスは驚くほど削られます。試験など重要なシーンに重なる不安感もさることながら、単純に痛みでテストがうまくいかない、勉強がうまくいかない、生理前に眠くて手がつかないなどが多いのです。
ピルの服用を始めると、そうした症状がぐんと軽くなります。本人同士だけでなく、ママ友の繋がりで〇〇ちゃんは生理をずらしたらしいよ、試験が重ならなくてよかったらしいよと聞くと、うちもそうしたほうがいいかしらと踏み切れるようです。15歳または18歳までの医療費助成がある自治体が多いため、そうした自治体では特に意欲が高くなる傾向があります。
月経困難症の治療方針は診察したドクターにもよりますが、多くは低用量ピルか黄体ホルモン製剤を用います。PMSがあるのか、生理を減らしたいのかなど、症状及びどのような状態を目指したいのかにもよります。
子どもを月経困難症で受診させる「目安」とは？
月経関連の症状で受診する目安というものはご本人が「月経が辛いな」と思ったときなのですが、受診に踏み切れないという声をよく聞くため、私がよく説明する目安があります。産婦人科医の共通認識というわけではないのですが、このくらいを目安にしてもらえるといいなと思います。
まず、月経不順。「私は月経周期が60日なの」と語る人がたまにいますが、それは病気なので受診してください。多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）かもしれません。
月経中に夜用ナプキンが2枚必要、あるいはタンポンとナプキンが両方必要という場合も、月経量が通常より多い過多月経の可能性があるので、受診をおすすめします。月経のたびに腹痛で保健室に行くケースでも、今日はこのまま産婦人科を受診しなさいと医療につなげる発想が欲しいところです。
月経ごとに痛み止めを2日以上使うのも受診を推奨します。1日や2日痛いのは仕方ないとやり過ごしがちですが、2日も腹痛を抱えていると、年に24日間も痛みでパフォーマンスを下げてしまいます。本当は何かしら辛いことがあればその時点で受診してもらいたいのですが、どうしても目安が必要だったらこのくらいという目安です。
「生理痛は絶対あるもの、しょうがない」「痛み止めが効けばいいじゃん」となりがちですが、生理痛を我慢し続けるのは、学校や部活の成績にも影響しますし、将来の子宮内膜症のリスクにもつながります。
つづき＞＞＞診察はどのように行うのでしょうか？やっぱり大人のように内診もあるのかな、とドキドキしますが実際は？
お話／小川真里子先生
福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 教授
1995年福島県立医科大学医学部卒業。慶應義塾大学病院での研修を経て、医学博士取得。2007年より東京歯科大学市川総合病院産婦人科勤務、2015年より同准教授。2022年より福島県立医科大学 特任教授。日本女性医学学会ヘルスケア専門医、指導医、理事。日本女性心身医学会 認定医師・理事。日本心身医学会 心身医療専門医・代議員。2025年11月から福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 教授。東京・JR五反田駅のアヴァンセレディースクリニックで、毎週金曜午前に完全予約制の更年期・PMS外来もお持ちです。
