
今年は「離婚の法律」が大々的に変わることを知っていましたか?具体的には共同親権と法定養育費の導入ですが、筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦に悩み相談にのっているので、2026年は歴史的な一年になると考えています。
まず共同親権とは離婚しても元夫婦が一緒に子どもを育てるため、どちらか一人ではなく二人が親権を持つという制度です。一方、法定養育費とは夫婦間で養育費の約束がなくても、養育費を「毎月2万円」とし、相手の給料を差し押さえることができる制度です。
現状(2026年4月まで)の法律では未成年の子どもがいる場合、夫婦が離婚するにあたり、どちらが親権を持つのかを決めなければなりません(民法819条)。そして非親権者は親権者に対して子どもの養育費を支払う必要があります(民法766条)。ここでは妻が親権を持ち、夫が養育費を支払うという前提で話を進めます。
統計上(令和3年度全国ひとり親世帯等調査)母子家庭のうち、養育費を現在も受け取っているのは28%、一度でも受け取ったことがあるのは14%しかいません。一方、一度も受け取ったことがないのは57%に達しています。つまり、半分以上の父親は養育費を支払ったことがないことを意味します。そのため、法定養育費の導入で養育費の回収率が上がることが期待されています。
なぜ回収率の上昇が期待できるのでしょうか?例えば、夫が会社員の場合、会社が夫(従業員)に給料を支払う前に、会社が直接、母親の口座に養育費を振り込んでくれます。残った分は夫の口座に振り込まれますが、いわゆる給料の天引きが可能なのです。しかも一度、手続を踏めば最終回(子どもが成人年齢に達した時など)まで自動的に天引きされるため非常に便利だからです。(民事執行法151条)
どうして養育費を支払わない元夫が多いのか?
ところで養育費の支払が途中で止まる理由は何だと思いますか?上記の統計によると母子家庭のうち、養育費を受け取っていない理由として相手に支払う意思がないと思った(15%)、相手に支払う能力がないと思った(14%)以上に相手と関わりたくない(34%)が最多です。
ここで焦点を当てたいのは元夫が新しい家庭を築いた場合です。今回の相談者・蛯名陽子さん(契約社員、年収250万円)は離婚から3年間、毎月6万円の養育費を受け取っていました。しかし、ある日突然、元夫からの振込が止まったのです。元夫に連絡をとると「再婚して子どもが産まれた。今の家庭を大事にしたいから、もうお前たちに養育費を払えない」と言うのです。
実際のところ、結婚する夫婦の4組に1組は再婚です。厚生労働省の人口動態統計によると2023年の婚姻数は47万組。そのうち12万組はどちらか(もしくは両方)に離婚歴があるので全体の25%を占めています。では、元夫と現妻との間に子どもができた場合、元妻は養育費をあきらめるしかないのでしょうか?
なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦や子どもの年齢、元夫と結婚する経緯、離婚の原因、養育費の振込が止まった理由、現時点での養育費の計算方法などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。
<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>
元妻:蛯名陽子(42歳)契約社員(年収250万円)
長男:蛯名流星(3歳)陽子と隆哉との子
元夫:川田隆哉(34歳)会社員(年収850万円)
元夫の現妻:川田美穂子(28歳)職業不明
長女:川田紬(0歳)隆哉と美穂子の子
【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #17】
GPSから判明した夫の裏切り
筆者が「どのような経緯で元夫と知り合ったのですか?」と尋ねると、陽子さんは照れながら「マチアプ(マッチングアプリ)です」と答えます。さらに「8つも年下なんですが、いろいろあって…」と奥歯にものが挟まったような言い方をします。
マッチングアプリとは住所地や出身地、年収や業種、趣味や好みのタイプなどを登録し、気になった相手を選びます。まずはアプリ上でやり取りをし、打ち解けたら連絡先(携帯番号、メールアドレス、LINEのIDなど)を交換して約束を取り付け、実際に会うという流れですが、当時の陽子さんは38歳。すでに70歳を過ぎた両親に孫の顔を見せてあげたいけれど、結婚相手が見つかるかどうか分からない。そんなふうに焦っていたため(元夫との婚前交渉(結婚する前に肉体関係を結びこと)を受け入れてしまったと回顧します。
リクルートブライダル総研の婚活実態調査(2023年9月)によると婚活サービスを通じて結婚した人の割合は15%に達しています。一方、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの「マッチングアプリの利用状況に関するアンケート」(2021年12月)によると、マッチングアプリでトラブルにあった人のうち、10%は「(相手が)婚活ではなく性行為を目的としていた」と答えています。
その結果、陽子さんは妊娠。それをきっかけに結婚することになったのですが、幸せな結婚生活は長く続きませんでした。結婚2年目には夫の怪しい言動が目につくようになったのです。例えば、スマホの画面に「世界で一番、たいせつな人」「好き、好き、大好き!」「今度、いつ会えるの?」という通知が表示されているのを発見したそうです。
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筆者は「それを目にしてしまってから、どうしたんですか?」と聞くと、陽子さんは「送信主は『みーたん』。女性なんじゃないかな…って!」と語気を強めます。陽子さんはマイカーのカーナビを確認。夫が「帰りが遅くなる」と言っていた日に、毎回同じ賃貸マンションに駐車していることがGPSから明らかになったのです。それだけではありません。交通系ICの利用履歴を辿ったところ、そのマンションの最寄り駅で乗り降りしていたのです。
陽子さんは夫に対して「どういうこと!」と問い詰めると、夫は一切、隠そうとせず「ああ、そうだよ。でも彼女とは遊びじゃない、本気だから!」と開き直ったのです。彼女と知り合ったのはギャラ飲みアプリ。これは女性と一緒にお酒を飲みたい男性と、お金を稼ぎたい女性を引き合わせる仕組みですが、夫の飲み会に参加した彼女に一目ぼれ。陽子さんの悪口を聞いてもらっている間に、彼女も本気になり、「奥さんより私の方があなたを幸せにしてあげられるのに」と言い出し、夫はますますのぼせ上ったようなのです。
ちなみに、一般社団法人・日本家族計画協会家族計画研究センターが2017年に調査した結果によると既婚男性(40代)は67.5%が「不倫をしたことがある」と答えています。
そこで陽子さんが「何を言っているの?」とあきれ顔で言うと、夫は「お前との結婚は失敗だった。流星(息子さんの名前)がいなければ速攻で離婚していたよ。とにかく出会う順番が逆だったらなぁって最近はずっと思っている」と無責任な発言を繰り返したのです。
関係修復する気がない夫との決別
陽子さんは当初、夫が謝罪して反省し「二度としない」と約束してくれるなら、夫のことを許して結婚生活を続けるつもりでした。しかし、夫からの謝罪はなく、反省する様子もなく、さらには夫のほうから「離婚したい」と言い出したのです。陽子さんは開いた口がふさがらず離婚を決意。
「流星の養育費はもちろんだし、慰謝料も払ってもらうけれど、それでもいい?」と確認すると、夫は「ああ、分かった。好きなだけ払うよ」と言うので、息子さんの親権は陽子さんが持ち、夫は養育費として毎月6万円を20歳まで、そして養育費とは別に、慰謝料として毎月7月と12月にそれぞれ20万円ずつ3年間、払うことを約束し、離婚が成立したのです。
このように3年という短すぎる結婚生活にピリオドを打ったのですが、厚生労働省の人口動態統計によると2024年の離婚件数は約18万組。10年前(2014年)は約22万組だったので減少傾向です。
今まで振り込まれていた養育費と慰謝料が、ある日、突然…
離婚から3年間、養育費と慰謝料は遅れることなく陽子さんの口座に振り込まれていました。振り込まれるたびに陽子さんは元夫に「いつもありがとう」とLINEにメッセージを送っていました。
しかし、離婚から4年目。ちょうど慰謝料の支払が終了したタイミングで、養育費の振込が止まったのです。元夫に連絡をとると「再婚して子どもが産まれた。今の家庭を大事にしたいから、もうお前たちに養育費を払えない」と言うのです。
筆者は念のため、「元旦那さんが養育費を払いたくないために嘘をついているかもしれません。本当に再婚したのか、そして子どもが産まれたのかを確認してからでも遅くないのでは?」と促すと、陽子さんは市役所で元夫の戸籍謄本を手に入れましたが、そこに驚きの内容が表示されていたのです。元夫の再婚相手の名前は「美穂子」。そう不倫相手の「みーたん」だったのです。
本記事では、夫の不倫が原因で離婚をした陽子さんが、慰謝料支払いが終わったタイミングで養育費が振り込まれなくなったという経緯についてお話しました。
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