
こんにちは、再春館製薬所の田野岡亮太です。
いちばん寒くなる時期、大寒は、2026年1月20日から2月3日。
1年に二十四めぐる「節気」のありさまと養生について、ここ熊本からメッセージをお送りします。
【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
1年めぐる暦の区切りは「大寒」と「立春」の間! いまはつまり暦の年末、3日が大晦日
1年に二十四めぐる「節気」の区切りは大寒と立春の間。季節で表現すると冬から春への移り変わりの境目です。暦は旧暦(=太陰太陽暦)に基づいているので、新暦の12月31日とは少し時間にズレが生じますが、「二十四の暦もここで一区切り」「立春からは新しい年を迎えて“春”が来る」と、1年頑張ってきた身体をねぎらう良いタイミングかもしれません。
旧暦で年末にあたる大寒の時季は「1年で一番寒い」「冬から春への季節の移り変わり」「冬土用の終盤」と、腎の機能と脾の機能を気遣っていただきたい時季です。腎の機能は冷えやすい性格で、精を貯蔵し、体内の水分のめぐりを担い、呼吸を担当する肺と連携して「引き込む」働きをします。腎と表裏関係の膀胱は身体表面のバリア機能ともつながりがあるため、例えばおしっこの我慢や細菌感染などで膀胱に炎症が起きると身体表面のバリア機能からエネルギーをもらい受けることになります。そうすると、身体の表面でバリア機能を担っている気が減ってしまい、ウイルスの侵入・発熱悪寒を引き起こしやすくなってしまいます。
腎の機能は様々な役割を担いながら、身体が健やかに生きる根本を支えています。「膀胱に我慢をさせてしまうとバリア機能から援軍が来る」「その結果、身体表面のバリア機能が減ってしまう」といった、身体のエネルギーバランスを意識しながら養生すると身体が喜ぶ時季とも言えると思います。
熊本に暮らすことで知る「季節の営み」、畑と海が教えてくれたこと

再春館製薬所までの通勤道で見かけた風景の「通勤道シリーズ」では、元気に葉を広げている春大根を目にすることが出来ました。以前にも書いたことがありますが、熊本の野菜は「サイズがとっても大きい」という特長があるように感じています。ざぼんの一種で熊本特産の晩白柚(ばんぺいゆ)は子どもの頭ほどの大きさがありますが、大根もとっても大きいものが100円ほどで売られているのを店頭で目にする度に、「やっぱり野菜のサイズが大きいな」とよく思います。
通勤道に面している大根畑では、葉の形から大根であることはわかるのですが、大根の白い部分がほとんど見えませんでした。「なるほど、これだけ葉を広げて光合成を行っているから、あれだけ大きな大根に育つんだな!」と、大根の葉しか見えませんでしたが、そんなことを教えてもらえたように感じました。

また、熊本県から西の方角に広がる海は東シナ海です。寒い時季は大陸からの風をダイレクトに受けるため荒れることが多く、特に西高東低の冬型の気圧配置では強めの時化に見舞われます。時化の合間に当たる凪のタイミングで運良く船に乗れると、写真のような光景に出会うことができます。船のまわり360度、見渡す限り水平線という環境で魚釣りをしながら1日を過ごすと「自然の中で生きているんだな」と実感します。
身体が必要としている効能を持つ食材の話をすることが多い薬膳において、魚類・海鮮食材はとても大切なものです。食分野を突き詰めるにあたって、「魚の種類と旬の時季」を知っていることは少なくとも必須と思っていた頃に魚釣りと出会いました。
ちょうど真冬の冷たい空気に包まれる時季のことでした。スーパーで見かける魚は切り身ばかりですが、海のどこで生きていて、どんな餌を好んで食べて、どの時季に脂がのるのか、朝と夜どちらに活動するのか、などの生態を知ってはじめて中医学的な意味がわかる部分もあるだろうと、勉強のために1年を通して海に出ることにしました。ですが、始めて半年はずっと釣果ゼロのボウズの日が続きました。
「もしかしたら無駄な時間を過ごしているだけかもしれない」「今日でもうやめよう」と思っていた日に乗った遊漁船での釣果もゼロで、下船してから最後の記念にと仲間と堤防で竿を出したところ、なんと90のぶりが釣れてしまいました。これがきっかけとなって、海の勉強を深めることとなりました。「まだまだやめるなよ」というプレゼントを神様からいただいたのだなと理解しています。
この日のぶりは刺身でいただきましたが、90もあると1日では食べ切れず、数日間ぶり料理が続きました。3~4年間魚釣りを続けているとボウズになる理由、潮の干満、月の満ち欠け、風向きなどの“自然”の特徴もわかり始め、この時季のこの魚はおなかがすいていても餌を食べず海底でじっとしている、だから食いつかない…と、自然の営みが理解できるようになりました。
薬膳は「身体が求める効能を持つ食材を使った料理」でもありますが、「身体がそのようになる原因を自然の法則から導く」ことも薬膳の重要な要素になるので、海から学べた自然観は今に生きているように思います。
ニラごはんの黒豆&山楂子(さんざし)ハヤシライス。ハヤシは実は「この時季とても理にかなっている」

二十四節気の区切りに当たる大寒の時季に気遣いたいのは腎の機能と脾の機能。“腎・脾の機能にうれしい食材”でおススメなのは、ニラ、黒豆、山楂子(さんざし)、牛肉、マッシュルーム、トマト、ローリエ(月桂樹)、ぶり、大根、昆布、かんぴょう、ライチ、水あめなどが挙がります。これらの“腎・脾の機能にうれしい食材”を使ったおススメレシピの1つ目は「ニラごはんの黒豆&山楂子ハヤシライス」です。大寒が1年の最後の暦と捉えるならば、大寒の後半は大晦日の頃と捉えることも出来そうです。頑張った1年の締めくくりに「温かいボリュームのあるご褒美感レシピを!」という想いで作ってみました。
作り方は、黒豆(大さじ2)をフライパンで殻にひびが入るくらいまで乾煎りしてからひたひたの熱湯に浸します。玉ねぎ(中1個)は1幅に、牛バラ薄切り肉(200g)は食べやすい大きさに、マッシュルーム(50g)は半分に切ります。ニラは塩(1つまみ)を入れたお湯で約1分ゆでて絞り、みじん切りにして、炊いたご飯に混ぜ合わせます。フライパンにごま油(大さじ1)・バター(20g)を入れて中火で溶かし、玉ねぎ・牛肉を炒めます。玉ねぎがしんなりして牛肉の色が変わったら薄力粉(大さじ2)を加え、粉っぽさがなくなるまで炒めます。これを鍋に移し、水を切った黒豆・水(300ml)・トマトジュース(200ml)・赤みそ(大さじ1)を溶き入れます。ケチャップ(大さじ1)・山楂子リキュール(大さじ4)・しょうゆ(小さじ2)・コンソメ(大さじ1)・ローリエ(1枚)を加えて、ときどき混ぜながら弱火で30分煮込みます。器にニラごはんを盛りつけその上に黒豆&山楂子ハヤシライスソースをかけたら出来上がりです。
通常のハヤシライスは赤ワインを使うことが多いようですが、今回は“山楂子リキュール”の風味を生かすために、赤ワインではなく赤みそを使いました。トマトの旨味と酸味、山楂子の甘みと苦み、赤みその味の深さがうまく合わさり、しっかりとした「ハヤシライス」になりました。山楂子リキュールをみりんのような隠し味として使うことで味に広がりを持たせること出来るので、大寒の時季を通してぜひ活用いただければと思います。
ニラは「身体に熱を補って、気と血のめぐりを良くして、腎の機能を助ける」働きが、黒豆は「身体に血を補って、血と水分のめぐりを良くして、脾と腎の機能を助ける」働きが、山楂子は「飲食物の消化を促して、血のめぐりを良くする」働きが期待できます。この3種類の食材が一緒になると、「身体に熱・血を補って、気・血・水分のめぐりを良くして、脾・腎の働きを助ける」という脾・腎の機能を温める効能になるので、大寒の時季におススメの組合せになります。ニラをハヤシライスソースに入れて煮るとせっかくの緑色が埋もれて存在が消えてしまうため、緑色が映えるようニラごはんにしてみました。
ハヤシライスソースの具材に使った牛肉は「身体に気と血を補って、食欲を促して強い身体を作る」働きが、玉ねぎは「身体の気・血・水分のめぐりを良くして、食欲を促す」働きが、マッシュルームは「飲食物の消化を促して、食欲を促進する」働きが、トマトは「身体に水分を補って、食欲を促して脾の機能を助ける」働きが、ローリエは「身体の気と水分のめぐりを良くして、食欲を促して脾の機能を助ける」働きが期待できます。
これらの牛肉・玉ねぎ・マッシュルーム・トマト・ローリエは普通のハヤシライスに使われる食材ですが、「食欲を促す」「脾の働きを助ける」という点が共通しています。ハヤシライスというネーミングには諸説あるようですが、食材の効能を見ると「おなかに気遣って身体を強くする食事」として考案されたものだったように感じて、ニラ・黒豆・山楂子を加えて“大寒おススメレシピ”にしてみました。
春大根と寒ぶりの昆布巻きにも、食欲を促してこの時季の身体を強くする働きがある

2つ目も腎・脾の機能を補うレシピとして「春大根と寒ぶりの昆布巻き」を紹介します。先ほどお話しさせていただいたように、大寒の時季は冬の旬と春の旬がちょうど重なる頃です。年末に作るお節料理にもある“ぶりの昆布巻き”ですが、食材の効能を見ながら、今回は春大根を一緒にしてみました。さらに、おなかのコンディションを整える働きに優れるライチも使っておススメレシピにしてみました。
作り方は、ボウルで浸る程度の水を加えて柔らかくした昆布(15g:幅12~15cm位のもの50cm)をザルに上げて水気をきります。つけ汁は後で使うので残しておきます。かんぴょう(1本:約8g)は洗って塩少々を振ってもんだ後、塩を洗い流します。ぶり(75g)は長さ6太さ1に切り、大根(1/4本)は皮をむいて同じサイズに切ります。
昆布にぶり・大根を置いて巻き、かんぴょうで結びます。鍋に結び目を下にして並べたら、昆布の漬け汁(600ml)・りんご酢(大さじ1/2)を注ぎます。足りない場合は水を足し、落とし蓋をして強火にかけて、煮立ったら中火で5分ほど火を通します。次に、ライチ酒(50ml)・水あめ(大さじ3)・しょうゆ(大さじ1)を加えて10分煮た後、最後にしょうゆ(大さじ1)・みりん(大さじ1)を加えて5分煮含めます。そのまま冷やして、器に盛りつけたら出来上がりです。
今回のおススメレシピを構成するトリプル主役のぶり・大根・昆布ですが、ぶりは「身体に気・血・水分を補って、食欲を促す」働きが、大根は「身体の気を降ろして、おなかのコンディションを整えて食欲を促す」働きが、昆布は「身体の詰まりを通して、身体の水分のめぐりを良くする」働きが期待できます。やはり「食欲を促す」働きが重なるので脾の機能にとって嬉しい主役ですが、「詰まりを通す」昆布の働きは、冬の間に溜まってしまった詰まりを通して春を迎える準備をする大寒の時季の身体には、とても嬉しい効能です。
春大根と寒ぶりの昆布巻きの味付けで用いたライチは「身体に血と水分を補って、おなかを温めて気のめぐりを良くして、食欲を促す」働きが、水あめは「身体に気と水分を補う」働きが期待できます。しかもライチと水あめは「温性」の食材なので、1年でいちばん寒い大寒の時季におススメと感じて組み合わせてみました。
ライチ果実を冷凍品以外で見かけることはほとんどなく、なかなか身近な存在ではありませんが、「厳選したライチの実をまるごと漬け込んでつくった」と書かれているライチリキュールを活用すると、「おなかを温めて食欲を促す」有益な成分を料理から摂取することが出来るようになります。山楂子リキュール同様、ちょっと贅沢な使い方ではありますが、二十四節気でめぐる1年の大晦日の暦ですので、この時季に試していただいても良いかと思っておススメレシピとさせていただきました。
暦の上では季節が移り、次は新年、立春です。
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田野岡メソッドに触れると、スーパーの棚が「薬効の宝庫」に見えてきますよ!




