本来は個人の秘められたものとされてきた“日記”。しかし、それはいま、SNSなどで日常の思いや出来事を他人に共有する「日記界わい」と呼ばれる動きとして注目されている。いまでは誰もが閲覧できる“パブリックな表現”へと変貌している。
念願かなってヒットメーカーのミステリー作家を担当するはずだった女性編集者。そのチャンスを失ったとき、踏み入れてはいけない領域に足を踏み出す。作家が残した日記の存在を妻から教わり、その妻の長年の思いを知って、日記をより魅力的に磨き上げて出版しようと持ちかける。そうして妻は、夫が密かに胸の内を明かしていたAIと対話を始める…。
ヒットメーカーのミステリー作家が死後残した“日記”をめぐり、2人の女性が秘密の行為に出る本作。主演に夏帆を迎え、実力派キャスト陣が“創作”の難しさ、尊さとその魔力を描き出す。
キャストの役どころ&コメント
編集者・江藤恵役/夏帆
出版社「灯文舎」の中堅編集者で、編集部に残留できるかの瀬戸際に立っている。1年前、大ヒット小説家・芹澤環の小説執筆にようやくこぎ着けたが、直後に彼が事故死。あきらめきれない中、芹澤環の私生活をつづった日記の存在を知り、編集者としては一線を越えた行動に出ていく。
【コメント】演出の平(竣輔)さんと脚本家の上原(哲也)さんが温めてきたこの企画が選ばれ、映像化することになりました。おふたりともこのドラマがデビュー戦です。創作に熱意のある現場で、脚本を読んで感じた不思議な手触りが、どのように映像化されてるのかとても楽しみです。
あらすじを一読しても、どんな作品か見当もつかないかもしれませんが、このドラマにしか味わえない体験が詰まっていると思います。ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
小説家の妻・芹澤真理子役/シルビア・グラブ
芹澤環の妻。草花に詳しく、ガーデニングが趣味。亡き夫が生前に書いたという日記を江藤に読ませる。触れたくても触れられなかった夫への思いと、彼が頼りにしていた生成AIとの出会いに駆り立てられ、江藤の驚くべき提案を受け入れる。
【コメント】撮影中は夏帆さんとAIと、とても濃密な時間を過ごさせていただきました。
現代にあり得るこのAIとの関係性、まだあまり描かれていないこの世界観、演じながらとても興味深いと思いました。
みんなで愛情を込めて育てたこの作品が皆様に届くのが楽しみです。
小説家・芹澤環役/板尾創路
熱狂的なファンをもつ人気ミステリー作家。江藤の「灯文舎」での小説執筆を約束していたが、1年前に階段から転落死した。江藤に残した究極の一言が、彼女を呪縛することになる。
【コメント】芹澤環を演じました板尾創路です。一年間かけて本作の準備をしたスタッフの皆さんに報えるようにとの思いでドラマに参加させていただきました。このドラマは小説家・芹澤環に登場人物全員が思いを馳せる物語です。しかし芹澤環の場面は冒頭のシーンに集約されていて、存在感を出すにはどうすればいいか悩みました。今も完成を見るまで不安と楽しみでモヤモヤしてます。衣装、メイク、小道具すべてに神経を使って頂き現場の皆様に感謝しております。
視聴者の心に残るドラマになればいいなと思います。
編集長・林大輔役/松尾諭
江藤の上司にあたる編集部長。部としての売り上げ目標を考える中で、結果を残せていない江藤に異動の話を持ちかけ、そのことが彼女の運命を大きく変えていく。
【コメント】少し前までは、AIはどこか空想の世界の話のように語られる存在でしたが、今ではすぐそばにある身近なものになっています。かつてSFとして楽しんでいた物語が、現実の延長のように感じられる時代になってきました。
「ある小説家の日記」は、そんな変化をそのまま映し出しているようなドラマです。撮影中に感じた空想と現実の間でふわふわと浮いているような感覚は他ではあまり味わえないものでした。出来上がりをまだ観ていないので、3月8日にテレビで観るのが楽しみです。
編集部アシスタント・新木翔役/林裕太
「灯文舎」文芸編集部のアルバイト。サボりがちな現代っ子だが、芹澤環の大ファンであり、創作には深いリスペクトを抱いているという、意外な一面も持ち合わせいる。
【コメント】新木役を演じさせていただく林裕太です。描かれたものの中に描いた人の輪郭は存在するのか、そばにいる人のことを僕は理解していると言えるのか、台本を読んで、そんなことを最初に考えました。
人を理解するとは何か、思索しながら新木という役に向き合っていけたらと思います。
自分と他者について迫る作品に、素敵なキャストの皆さん、スタッフの皆さんと一緒に挑んでいけるのが楽しみです。
スタッフコメント
脚本:上原哲也 テレビドラマ初脚本
書きながら、これは言葉に翻弄された者たちの話だと気づきました。
タイトルにある「日記」は、私にとって書くことの原点です。自分が書いたはずの言葉が、読み返すと他人のもののように響く。言葉にはもともと、そういう借り物めいたところがあるように思います。
この物語を生きる人たちは、生活に追われながらも何かに間に合おうと、二度と会えない人をたどろうと、言葉に救いを求めます。その切実さの行方をどうか見届けてください。
音楽:髙位妃楊子
AIの怖さに切り込むこの作品を前に、私自身も創作に伴う「怖さ」を抱えながら制作に向き合いました。今や奇妙さもなく人の表現に綺麗に紛れ込み、時には自分でも辿り着けなかった言葉を代弁してしまうAI。自身の楽曲を模倣させる試みも重ねながら、新しい時代における音楽の価値とは何か、そして「共感」や「人間らしいいい曲」とは何なのかを問い続けています。
演出:平竣輔 テレビドラマ初演出
「一つの日記をめぐる物語をやりませんか」
上原さんにそう熱く語られたあの日から、気づけば一年半以上が経ちました。
夜な夜な企画について語り合い、好き放題に言葉を投げ、そのすべてを受け止め、形にしてくれた上原さんには感謝しかありません。
そうして生まれた物語は、すばらしいキャスト・スタッフの皆さんとの対話を重ねる中で、二人だけではたどり着けなかった場所まで羽ばたいてくれました。
創作の難しさに何度も立ち止まり、それでも創ることの喜びを感じながら、出来上がったドラマです。誰かの日記を、そっとのぞくような時間を楽しんでもらえたらうれしいです。
特集ドラマ「ある小説家の日記」は3月8日(日)23時~NHK 総合にて放送予定。
※NHK ONE(新NHKプラス)で同時・見逃し配信予定



