
こんにちは、再春館製薬所の田野岡亮太です。
雨水(うすい)の次の節気、2026年の「啓蟄(けいちつ)」は3月5日から19日。
1年に二十四めぐる「節気」のありさまと養生について、ここ熊本からメッセージをお送りします。
【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
ひと雨ごとに春ですが、まだまだ春爛漫というわけにもいかず
土の中で冬ごもりしていた虫や生き物が、穴を開いて地上へはいでてくる。啓(ひらく)、蟄(生き物)、の意味の漢字で表現される「啓蟄」とはそのような時季です。ひと雨ごとに春が近づいてくる気配が感じられる暦なのですが、最近は突然雪が降る年もありましたね。
春の到来をつげる雷、「春雷(しゅんらい)」をひときわ大きく感じられる時季でもあります。雨や雪とともに雷が轟くと、「春雷の音に驚いた虫たちがはい出してくるころ」と啓蟄の意味を捉えることもできるかもしれませんね。

熊本空港からほど近い再春館製薬所ヒルトップ、ドモホルンリンクルの製造現場である「薬彩工園(やくさいこうえん)」の前のしだれ梅です。まさに紅梅というべき優しい紅色と、春のやわらかい陽射しと青空のコントラストを目に出来ることを、毎年密かに咲くの指折りにしています。咲く時季がその年によって前後するため、少し忙しくしていると花の盛りを見逃してしまうことも。「春はゆらぎの季節」と言われますが、気温の上昇パターンなどほぼ毎年異なるので、開花の盛りに立会えた年を喜びに感じようと思います。
春、多発するストレスを一手にひきうけてくれるのが「肝」
さて、この季節に活躍する「肝」を掘り下げていきましょう。
肝の機能は全身の気の発散を調節してくれます。これを肝の疏泄(そせつ)作用と呼びます。身体の気がギュッと固まってしまいそうになると、この疏泄作用のおかげで気の流れが調節されます。
ところが、春は卒業・入学・転勤など環境の変化や出費がかさむ原因が多く、いわゆる“ストレス”に感じることが多い季節。ストレスは気をギュッと固めてしまいます。例えると、使い始めの毛糸玉はするすると糸が出てきますが、絡まってしまった毛糸玉はギュッと固まってしまってどこからほぐしたらよいかわからない…こんなカンジです。絡まってしまっても元々は1本の毛糸。落ち着いてほぐせば元に戻ります。
ストレスに感じていることが長く続き、気がギュッと固まった状態が長く続くと、肝にこもった熱が火になると中医学ではイメージします。こうなると、精神的にずっと“イライラ”した状態が続くことになります。
先ほどの「絡まってしまった毛糸」は、落ち着いて解けば1本の毛糸に戻ります。ただ、イライラした状態では、なかなか落ち着けないのが現実とも思います。そんな時は“柑橘の香り”を試してみてください。香りは鼻から入って脳への刺激に変わるので、ストレスを感じている身体のバランスに直接働きかけてくれます。春は金柑・八朔・ネーブルなどの柑橘系の果物がスーパーに並びます。スーパーでオレンジ色の柑橘コーナーを見かけたら、「あ!これは今日のイライラを解消してくれる救世主!」と思っていただいても良いかと思います。
季節と暦にズレが生じやすい“ゆらぎ”の春、ストレスを一手に引き受ける肝の機能に嬉しいレシピは
再春館製薬所の正門を入ってすぐ目にすることができる白梅。春の“ゆらぎ”で「今年は花のつきがゆっくりだな…」と感じる年もあるのですが、いつも満開の花を咲かせて見せてくれます。「梅の実は健康の秘訣」と感じて初夏の“梅仕事”を毎年の楽しみにしているので、梅の開花をとても気にしてしまいます。過去の記録を見返すと、満開が早い年からゆっくりな年では3週間ほどズレる時もありました。近年、「秋がなくなっている」と言われますが、「春の訪れのズレ」も現代の自然を反映しているのかもしれませんね。

肝の機能を助ける「えりんぎとベビー帆立の金柑煮びたし」

さて、“肝の機能にうれしい食材”でおススメなのは、えりんぎ、帆立、金柑、春菊、クコ、いわし、オレンジなどが挙がります。
これらの“肝の機能にうれしい食材”を使ったおススメレシピの1つ目は「えりんぎとベビー帆立の金柑煮びたし」です。スーパーの野菜コーナーに並ぶ“えりんぎ”が、肝の機能を助けることをお伝えしたくてレシピにしてみました
作り方は、えりんぎ(2本)を1cm厚の輪切りにして、片面に格子状の隠し包丁を入れます。金柑(5個)は輪切りにして、種を取り除いておきます。鍋にオリーブオイルをひき、えりんぎの隠し包丁を入れた面を下にして炒め、次いでベビー帆立(15個)を合せて炒めます。ここに、水(300ml)・薄口しょうゆ(大さじ1/2)・酒(大さじ1)・はちみつ(大さじ1/2)・塩(小さじ1/2)を加えた後、金柑・クコ(10個)を合せて5分間煮ます。火を止めて15~20分間置いて味をなじませた後、器に盛りつけて春菊(1本)の葉の部分を散らしたら出来上がりです。金柑の酸味・香りとベビー帆立の旨味を、はちみつの甘みが軽く包み込むおススメのレシピです。
えりんぎは「身体に気と潤いを補って、血と潤いのめぐりを良くして筋肉のこわばりをほぐす」働きが期待できます。つまり、身体の筋や筋肉がのびやかになるということです。肝の気がストレスでギュッと固まると、そのストレスは“筋肉に写し取られる”と中医学では考えています。「緊張している時には深呼吸!」と言いますが、緊張のストレスで固まってしまっている横隔膜を意図的に動かしてストレスの影響を取り除くことを推奨しているのが「深呼吸」なんですね。
一緒に合わせた“柑橘の香り”の金柑は「肝の気の流れを整えて、気の滞りをほぐす」働きが期待できます。「えりんぎで補った気を“金柑の香り”が流す」という組合せになるので、この時季におススメです。そして、えりんぎは「微温性」、金柑は「温性」の食材ですので、ちょっと寒さが気になる日にもおススメです。ちょうどお花見のシーズンですので「花冷えは大丈夫かな…」と気になる時のお弁当に持参いただくと、冷えに備えた安心感と見た目の意外性を兼ね備えたおもてなし料理になるかもです。
これもまた肝を補う「いわしのかぶ器蒸し~新玉ねぎ・オレンジソースかけ~」

2つ目も肝の機能を補うレシピとして「いわしのかぶ器蒸し~新玉ねぎ・オレンジソースかけ~」を紹介します。3月に入ると旬の食材として目にすることが多くなる“新玉ねぎ”のみずみずしくて甘い風味を、オレンジの“柑橘の香り”と合せてレシピにしてみました。
作り方は、まず“いわしのかぶ器蒸し”を作ります。いわし(4尾)は生魚で手に入るようであれば、うろこと内臓を落として3枚におろします。(手軽に作るのであれば、いわしの水煮缶を使用しても良いです。)かぶ(小4個)は皮つきのまま茎を切り落として底を平らに切り、かぶの中身をスプーンでうつわ状にくり抜きます。かぶの中身といわしをみじん切りにして合せて、塩(小さじ1/2)を加えて混ぜ合わせます。これをかぶ器に入れて、蒸し器で10分間蒸します。
次に“新玉ねぎ・オレンジソース”を作ります。みじん切りにした新玉ねぎ(1個)と薄皮を取ったオレンジ(1/2個)を合せて、塩(小さじ1)・薄口しょうゆ(小さじ2)・酒(大さじ1)・水(100ml)を加えて混ぜ合わせ、鍋でひと煮立ちさせた後、水溶き片栗粉(片栗粉:大さじ1)でとろみをつけます。
器に“新玉ねぎとオレンジソース”をひき、その上に“いわしのかぶ器蒸し”を乗せたら出来上がりです。いわしの身にしっかりと味があるので、少量の塩でうまみが引き立ちます。
いわしは「身体に気と血を補って血のめぐりを良くして、目の疲れの改善・健康な肉体づくり・精神のコンディションを整える」働きが期待でき、器にしたかぶは「身体に気を補って、五臓のバランスを整える」働きが期待できます。ストレスを一手に引き受ける肝の機能ですが、許容量を超えるような状態になることを、「肝にこもった熱が火にかわり、肝から上がった煙が頭の中に充満して目や耳から抜けようとする。目から抜けると、目の疲れとなってあらわれる。」と中医学では考えます。いわしは種類によって旬の時季が異なるためスーパーではほぼ1年中見ることが出来ますが、目の疲れだけでなく、肉体・精神のバランスにまで働きかけてくれる身体にとても嬉しい効能の持ち主です。
ソースで合せた新玉ねぎは「身体の気・血・水分のめぐりを良くして、炎症を鎮める」働きが、オレンジは「身体の気のめぐりを良くして、気の滞りをほぐす」働きが期待できます。オレンジが“柑橘の香り”で働きかける「気のめぐり」に新玉ねぎも一緒に働きかけるので、“肝に嬉しい気のめぐりコンビ”として合せてみました。
“旬の食材”と“スーパーでいつでも目に出来る食材”を組合せた、「春の不安定」にアプローチできることを願って作ったおススメレシピです。
新年度を迎えることで何かとストレスが多くなる季節の春。ストレスを一手に引き受けてくれる肝の機能に“柑橘の香り”を是非届けてあげてください。
連載中の「田野岡メソッド」が書籍になりました!
「身近にある旬の食べ物が、いちばんのご自愛です!」 田野岡メソッド連載で繰り返し語られるこのメッセージが、1冊の書籍にまとまりました。近所のスーパーで手に入る身近な食材を使い、更年期をはじめとする女性の不調を軽減する「薬膳」を日常化しませんか?
日本の漢方では「その症状に処方する漢方薬」が機械的に決められていますが、本来の中医学では症状と原因は人それぞれと捉えます。それに合わせた効果的な食事を「薬膳」とし、食で養生するのが基本なのです。
田野岡メソッドに触れると、スーパーの棚が「薬効の宝庫」に見えてきますよ!




