
こんにちは、再春館製薬所の田野岡亮太です。
春分というと春分の日、1日のことと感じますが、節気のうえでは一定の期間を指します。
2026年の春分は啓蟄(けいちつ)の次、3月20日から4月4日までです。
1年に二十四めぐる「節気」のありさまと養生について、ここ熊本からメッセージをお送りします。
【田野岡メソッド/二十四節気のかんたん養生】
夏が始まる前、春のピークの時期です

春分の日とは、太陽が真東から昇って真西に沈み、昼夜の長さがほぼ同じになる日です。物の影の長さで表現すると、冬至の日が「影が一番長くなる日」が冬至、「影が一番短くなる日」が夏至で、春分と秋分は「夏至と冬至のちょうど中間の影の長さになる日」です。
春分の日はお彼岸の中日でもあります。暑さ寒さも彼岸までと言われる、春のピーク。ここから気候は暑くなります。
再春館製薬所ヒルトップのこぶしが春分で満開を迎えました。樹齢160歳を越え、その歴史の中では直接雷に打たれたりもしましたが、今年も元気に満開の白く美しい花をつけてくれました。
3月、春に気づかってあげたい腑は「胆」。胆汁を貯めて分泌するだけでなく…

さて、春に活躍するのは肝の機能です。春の臓は「肝」ですが、肝の機能に属している臓腑は、臓は「肝」ですが、腑は「胆」になります。肝と胆はお互いに密接な関係性で、「つながる・連携する」を意味する“表裏関係”と呼ばれます。
「胆」といえば胆のうですが、その働きはよく知られている通り、「脂肪消化のための胆汁を貯める」ことです。肝臓が作る胆汁を胆のうが貯めておき、食事で脂肪の摂取が行われた時に胆のうに貯めた胆汁を出して脂肪の分解を行います。中医学ではもうひとつ「胆」には役割があると捉えています。それは「決断を司る」ことです。“肝っ玉”と表現されることが多いかもしれませんが、この肝は「胆」のことを指しています。些細なことでも決めるべきことが決められない、いつも迷ってしまう人は、もしかして胆の機能がお疲れなのかもしれません。
イライラして怒る、誰かに文句を言う、他人のせいにする…。春のストレスも含めて、このような怒り方の人は「肝」の気がギュッと固まっていると捉えます。このような人は、まわりに当たり散らすことでスッキリして、何事もなかったかのように元に戻ることが多いです。ところが、同じ肝の機能でも「胆」の気がギュッと固まってしまう人は、肝っ玉が小さいために不満を口出すことが出来ず、自分の中に不満を溜めた結果、メンタルがベタベタ・ジトジトしてしまいます。こうなると精神的に不安定な状態になるため、「不眠」という状態になることがあります。
肝についた火が、心に飛び火して心熱で眠れないという不眠がイライラさんには見られますが、ウツウツさんの場合はメンタルがベタベタ・ジトジトすることが不眠を引き起こします。春の不眠は、「他人に当たり散らしてイライラしているか」「一人で抱え込んでウツウツとしているか」の様子から、その要因をたどることも出来ると中医学は捉えています。
熊本空港からほど近い益城町に位置する再春館製薬所。黄色い花は、再春館HILLTOP(ヒルトップ)の敷地内に咲くレンギョウです。モクセイ科のレンギョウの果実を乾燥すると「連翹(れんぎょう)」という生薬になります。炎症性の熱を抑える働きと、できものをとる働きがあるため、かぜによる喉の痛みを改善する効能があります。「銀翹散」という漢方処方に配合されていて、かぜのひきはじめののどの痛みや頭痛、せきなどに効果が期待できます。また、連翹には「胆の気の流れ」に働きかける効能もあり、そうした力のある花がまさにこういう時季に咲くことに、自然とは本当によくできているなと感心します。
肝に働きかけるレシピ2つ。お弁当にも◎な「巾着たまごの甘酢ウコン煮」

肝の機能にうれしい食材”でおススメなのは、春菊、にんじん、ウコン、あさり、小松菜、ハブ茶、クコなどが挙がります。
これらの“肝の機能にうれしい食材”を使ったおススメレシピの1つ目は「巾着たまごの甘酢ウコン煮」です。「お酒を飲む前にはウコン」とよく耳にしますが、お酒用だけではなく、季節の身体を支える使い方をレシピにしてみました。
作り方は、油揚げ(すし揚げ:2枚)を熱湯で30分ほどぐつぐつと色が変わるまで茹でて油抜きをした後、半分に切ります。たまご(4個)は卵黄と卵白に分け、みじん切りにした春菊(4本)・らっきょう(5個)を卵白と合せて混ぜます。にんじん(1本)は3 mm厚の輪切りにしてから抜き型で花型にします。
巾着の中に卵白・春菊・らっきょうを入れてから卵黄をそっと入れて、つまようじで巾着の口を閉じます。鍋に巾着を入れて、水(400ml)・薄口しょうゆ(大さじ1)・きび砂糖(大さじ4)・りんご酢(大さじ2)・塩(小さじ1/2)・ウコン粉末(小さじ1)を加えて、落し蓋をして中火で10分間煮た後、器に盛りつけたら出来上がりです。
ウコンは「身体の気と血のめぐりを良くして、心・肝・胆の機能を助ける」働きが期待できます。ウコンにはいくつか種類がありますが、今回はストレスを胆に溜めこんでしまう「ウツウツさん」に働きかけることを目的としたので“春ウコン”を使いました。熊本だと道の駅で販売されていますが、お近くで販売しているところが見当たらない時はネットで「春ウコン(粉末)」をお求めいただければと思います。ちなみに、スーパーでよく目にするターメリックは“秋ウコン”でポリフェノール(=クルクミン)の含量が多い種類になります。中医学では、秋ウコンは肝と脾(=消化機能)に働きかけると捉えているので、「ウツウツさん」には“春ウコン”がおススメです。
一緒に合わせた春菊は「身体の水分のめぐりを良くして、肝と心のコンディションを整える」働きが、たまごには「身体に血と潤いを補って、精神のコンディションを整える」働きが、らっきょうには「身体に熱を補って、気のめぐりを良くして炎症を鎮める」働きが期待できます。春ウコンは身体の熱を冷ます「寒性」の食材なので、身体に熱を補う「温性」のらっきょうを合せて寒熱のバランスをとってみました。
胆の機能がお疲れぎみのウツウツさんは、常備スパイスに“春ウコン”を加えてみるのはいかがでしょうか。
旬の力をまるごといただく「あさりと小松菜のハブ茶蒸し」

2つ目も肝の機能を補うレシピとして「あさりと小松菜のハブ茶蒸し」を紹介します。3月になるとあさりが旬の時季を迎えます。スーパーの鮮魚コーナーにも連日のように並びますので、「旬の力を身体の力に」出来るようにレシピにしてみました。
作り方は、あさり(200g)は砂抜きをして洗ってザルにとり、小松菜(2束)は根元を切り落として3cm幅に切ります。鍋にお湯(500ml)・ハブ茶(小さじ1:ティーバッグに包んで)を入れて5分煮だします。フライパンにあさり・酒(大さじ3)を加えて炒め、あさりの口が開き始めたら、小松菜・ハブ茶・クコ(15個)・鶏ガラ粉末(大さじ1)・しょうゆ(大さじ1)・みりん(大さじ1)を加えます。フタをして5分間加熱した後、器に盛りつけたら出来上がりです。
あさりは「身体に血を補い、水分のめぐりを良くして、精神のコンディションを整える」働きが、小松菜は「身体に血と水分を補い、血のめぐりを良くして、精神の不安定と炎症を鎮める」働きが、クコは「肝と腎の機能を助けて、目の疲れを改善する」働きが期待できます。つまり、あさりと小松菜を組み合わせることで、「血と水分の補給・めぐりが促されて、肝・腎・精神的なコンディションが整う」ことになります。
今回はハブ茶で蒸し煮にしたので、ハブ茶の「肝・胆のコンディションを整えて、腎の働きを助けて目の疲れを改善する」働きも身体に摂り込むことが出来ます。
今回は旬の「あさり」を肝・胆に働きかける「ハブ茶」と合せる組合せでしたが、食材単体では成しえない働きが、食材を組み合わせることで出来るようになり、さらに“美味しく”食べられるところが“薬膳”の魅力の一つに感じながらおススメレシピにしてみました。
春のストレスを溜めてしまって解消しづらいウツウツさんは、「胆」のコンディションを整えることを意識してみましょう。次回も引き続き春分のお話をさせていただきます。
連載中の「田野岡メソッド」が書籍になりました!
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日本の漢方では「その症状に処方する漢方薬」が機械的に決められていますが、本来の中医学では症状と原因は人それぞれと捉えます。それに合わせた効果的な食事を「薬膳」とし、食で養生するのが基本なのです。
田野岡メソッドに触れると、スーパーの棚が「薬効の宝庫」に見えてきますよ!




