
オトナサローネで「どちらにする?小学校受験と中学校受験」という取材記事を担当している、ライターの星子です。子供の中学受験伴走で「良かれと思って言った励ましが地雷でケンカになる」。そんな自分に戸惑ったことはありませんか?
筆者にも中学受験を希望する新5年生の子供がいますが、伴走の実情は想像以上に過酷。50歳を目前に、更年期や持病、80代の親の健康問題などを前にして、さらに子供は反抗期の入り口に差しかかっています。
折しも仕事も繁忙期を迎え、ついに今年の3月にメンタルが崩壊。24時間いつでも泣ける精神状態となり、「道端で他愛のない親子喧嘩をして、母親側が無言で泣く」という失態を演じてしまいました。
そんなときに出会ったのが、漫画家・りえ太郎さんの『元SAPIXママ 中受伴走1095日』(講談社)です。布団の中で読み始めたら止まらなくなり、読み終わったら肩の力が抜けるような脱力感とともに、「あ、受験、大丈夫かもしれない」と思える「基本知識」を楽しく学ぶことができました。
今回は、そんなりえ太郎さんに、体もメンタルも弱りがちなアラフィフ母でも、首都圏中学受験を「正気で」乗り切るための秘訣を伺いました。
▶SAPIX・日能研ほか4大中受塾の比喩が秀逸すぎた!
「SAPIX・日能研・四谷大塚・早稲田アカデミー」の4大中受塾がもし王国だったら? 比喩が秀逸すぎるプロローグ


――りえ太郎さんは、数ある中学受験塾の中でも「最強」と名高いサピックス(SAPIX)に通う息子のさい君に寄り添い、2025年2月に長男の中受伴走を完遂しました。
新作漫画『元SAPIXママ 中受伴走1095日』を拝読したのですが、プロローグの「中受4大塾が王国だったら」という、「SAPIX・日能研・四谷大塚・早稲田アカデミー」を「異世界転送RPG」風に描いたページはいきなり最高でした!
少しでも中受塾の事情を知る人なら思わずクスッと笑ってしまう圧巻の比喩力と、ゲームっぽい没入感が見事で、おもしろいのに「ちゃんと各塾の特徴がよく分かる」。私の推しページのひとつです。りえ太郎さんご本人として、新作の「推しページ」はどこですか?
「ありがとうございます。じつは私自身もプロローグのページを気に入っています。『中学受験大陸の4大塾王国』、として書いた『SAPIX・日能研・四谷大塚・早稲田アカデミー』は、本当にそれぞれ異なる特色があるので、現在通っている方はもちろん、受験が終わった方々にも『確かに!』なんて、思い出し笑いをしていただけたら嬉しいです」
▶「勉強が好きになる!?」イメージと違ったSAPIXの内情
教育方針を水辺の馬に例えた「ゴウンゴウン」がネットで大人気のSAPIX。通ってみて分かった「意外な教育方針」とは
――りえ太郎さんの比喩といえば、「ゴウンゴウン」がネットで大人気ですね。大手4大塾の教育方針を、「馬を水辺に連れて行けても飲ませることはできない」ということわざになぞらえた「4匹の馬」のシーンが抱腹絶倒の面白さでした。
子鉄とハリボー190〜4大塾水を飲ませる〜#マンガが読めるハッシュタグ #中学受験 #中学受験2025 #4大塾 pic.twitter.com/OhQwJQp6Ca
— りえ太郎 (@yonedasai) October 24, 2024
我が家は近隣の小規模塾に通っていて「4匹の馬」に例えると「四谷大塚型の馬」が集う塾です。しかし周りを見渡すと同じマンションや小学校ではSAPIXに通っている子が多い印象です。りえ太郎さんが同塾を選ばれた決め手を教えてください。
「我が家は小学校1年生からSAPIXに通っていたのですが、たまたま以前住んでいたマンションの近くにSAPIXが入っているビルがあり、子供たちが元気に出てくる様子を見る機会があったんです。雰囲気が明るくて良い印象だったので、低学年で通わせてみたところ、すごく楽しんでくれました。
ネットの書き込みでは、SAPIXは難関校対策に特化しているだけに「厳しい」という声も見かけましたが、低学年のうちは勉強の楽しさを実感させる段階でもあり、先生もとても優しくフレンドリーでした。テキストも絵が多く、子供が興味を持てるように工夫されています。
低学年の頃、息子のテストの成績について相談したとき、先生が「現時点で成績を気にする必要はありません」とおっしゃったんです。『間違えたということは、分からないことを発見したということなので、良いことです』と言われて、あ、いいことを言うなって。
低学年から『成績を上げろ』『いい点数を取れ』という方向性ではないのも、意外でした」
▶SAPIXの意外な取り組みの中身とは
SAPIXは「受験傭兵育成所」ではなかった? 子供の探究心を養う農業体験も

――確かに、せっかく地頭の良い子供が勉強嫌いになってしまっては元も子もありませんよね。「受験傭兵育成所のように思われがちだが、農業体験などのイベントもある」と聞いて、個人的には意外でした。
「そうなんです。4年生のときに1年を通して農業を経験し、最終日に自分で育てた小ねぎや枝豆を持ち帰る、という体験も息子は楽しんでいました。他にも、小さな生物を解剖したり、コーヒーをブレンドして生産国の歴史を学ぶイベントもありました。
コーヒーイベントは、興味津々のパパも多く、楽しんで参加しておられて、親子のコミュニケーションとしても良い取り組みだなと思いました」
――なるほど。我が家が通う小規模塾も理科実験が特色で、子供は楽しいみたいです。やはり、いざ高学年になって勉強に集中するには、健やかな好奇心を育んで円満な家庭環境を整えることも重要になってきますし、歴史ある大手塾や、規模に関わらず結果を出している塾には「勉強って楽しい」と思わせるノウハウが蓄積されているのですね。
「SAPIX=最難関校合格率が高い=勉強一点集中」というのは誤解だと分かる意味でも、漫画を読んでよかったです。
「そうですね。そして、低学年の頃はのびのびとした方針でしたが、4年生からは本格的に受験対策に切り替わり、プリントもドカンと増えます。ただ、先生の話がおもしろいなど、楽しませる工夫はずっと続いていました」
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