
「お会いするだけで更年期の沈んだ気持ちが前を向く」「楽しくお話して、気づいたら心にわだかまっていた重いものが消えていました」とファンも多数の産婦人科医・小川真里子先生。現在は福島県立医科大学での診察と併せて、週に一度、東京・JR五反田駅のアヴァンセレディースクリニックで更年期外来もお持ちです。
長年に渡って女性特有のトラブルに向き合ってきた小川先生に、更年期時期の女性へのメッセージをいただきます。今回は「手指の痛み」と「睡眠」について。
【女性の身体、思春期から更年期までby小川真里子先生】
手指の痛みがある場合「一度は整形外科かリウマチ内科を受診してほしい」理由とは?
――メノポハンドという言葉が認識されるようになり、手指の痛みが更年期世代の症状であるとみんなが気づきました。私の周囲にも更年期の話の最初に手指を挙げる人が増えています。
閉経を前に女性ホルモンの分泌が減ることをきっかけとして手指の痛みが出ることもあり、最近メノポハンドとも呼ばれるようになってきました。日本で作られた造語で、最近では私の外来でも「先生、これはメノポハンドでしょうか」と聞かれることがあります。
更年期症状とは、除外診断です。他の病気ではないことをひとつひとつ確認して、何も他の原因がなかった場合に初めて「更年期症状ですね」と診断されます。手指の痛みの場合、「変形性関節症」「関節リウマチ」などが鑑別すべき疾患。特に「関節リウマチ」は見逃してはならない疾患です。高市首相も長年手指の痛みをお持ちで、いろいろ受診したけど原因がわからず、最後にリウマチと診断されたと語っておられましたよね。
――まずは整形外科で検査を受けて、他に怖い病気がないかを確認するのですね。
なのですが、整形外科やリウマチ内科を受診しても疾患が見つからないことがあります。患者さんは手指が痛くてしんどいのに、整形外科が診る範囲の疾患が見つからないなら、治療法もありません。結果的にエクオールを勧められました、ということもあります。
他に原因疾患のない手指の痛みに、ホルモン補充療法(HRT)が効果的なことがあります。なぜ整形外科でHRTを行わないのかと思うでしょうが、整形外科では不正出血などの副作用のフォローが難しいため、婦人科分野に知見をお持ちの一部の先生以外は処方をしにくいのだと思います。
――エクオールはダイゼイン、ゲニステインなどと並ぶ大豆イソフラボンの一種ですね。よく勧めている先生がいらっしゃいますが、どうしてなのでしょう。
エクオールは、例えていうならばとても弱いエストロゲン(女性ホルモンのうち卵胞ホルモン)のようなものです。エストロゲンと形がよく似ているので、エストロゲンの受容体にくっついて女性ホルモン様に振舞うと考えられています。
エストロゲンの受容体にはαとβがあり、身体の部位ごとにどちらが多いかが異なります。関節の受容体はβが多く、乳腺や子宮などはαが多いのです。エクオールはβに感受性が高く、またHRTのような副作用への配慮がいらないため、整形外科の先生がたがエクオールをお勧めになるのだと思います。
手指の痛みにはエクオール? HRT? 医師にどちらを相談すればいいの?
――手指の痛みで婦人科を受診する「目安」はありますか?
手指の痛みだけでなく、他に何かしら更年期特有の症状があるのかどうかが婦人科を受診する目安です。更年期に入っているかどうかという点では、月経周期が乱れているかもポイントです。本当にそれが更年期症状なのかで治療は変わります。
――本当に更年期症状なのか、この「何が更年期症状なのか」は私たちがいつも迷う部分です。よく「これって老化なの? 更年期なの?」と自問自答します。
そうですよね、すぱっとわかればいいのですが、わかりにくいですよね。まず、更年期症状とは主にエストロゲンのゆらぎや欠落によって起きるものを指します。つまり、エストロゲンの減少と関連しない症状は更年期症状とは言い難く、HRTも効かないだろうと考えられます。たとえば肩こりは更年期の症状としてよく挙げられますが、更年期の前からある肩こりにはHRTは効かないでしょう。
更年期の時期に起きる不調のすべてが更年期症状とは限らないのも、わかりにくさの原因のひとつです。というのも、中には「お腹が痛い」「便秘しやすくなった」などあまり女性ホルモンが関与しないものを更年期症状と感じている方もいらっしゃるのです。
いっぽうで、ホットフラッシュやイライラなど更年期特有と言える症状がいっしょにある場合は、HRTのメリットが大きいかもしれません。
つづき>>>更年期の手指の痛みにホルモン療法が「効きやすい」人の特徴とは?エクオール、漢方などはどうでしょう?専門医の答えは
お話/小川真里子先生
福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 教授
1995年福島県立医科大学医学部卒業。慶應義塾大学病院での研修を経て、医学博士取得。2007年より東京歯科大学市川総合病院産婦人科勤務、2015年より同准教授。2022年より福島県立医科大学 特任教授。日本女性医学学会ヘルスケア専門医、指導医、理事。日本女性心身医学会 認定医師・理事。日本心身医学会 心身医療専門医・代議員。2025年11月から福島県立医科大学 ふくしま子ども・女性医療支援センター 教授。東京・JR五反田駅のアヴァンセレディースクリニックで、毎週金曜午前に完全予約制の更年期・PMS外来もお持ちです。



