
理由のわからない不調を抱えて病院に行っても、“異常なし、ストレスですね”と告げられる。その言葉にモヤモヤしたことはありませんか。実はその「ストレス」の正体は、あなたも気づいていない出来事や、幼少期から蓄積されたストレスが深く関わっているかもしれません。
ストレスと聞くと、上司の小言や人間関係の悩みなど、ネガティブなことばかりを想像しがちですよね。でも、実は結婚や昇進、あるいは楽しみにしていた休暇といった一見「ハッピーな出来事」でさえ、私たちの心と体には大きな負荷になっていることがあるといいます。
本記事では、30年以上にわたり心療内科の臨床医としてのべ10万人以上の患者と向き合ってきた釈 文雄氏の著書から、意外なストレスの種類やリスクをご紹介します。
※本記事は書籍『わたしを「書いて」取り戻す 「謎の不調」から自分を救う本』(釈 文雄:著/かんき出版)から一部抜粋・編集したものです
自分でも気づいていないストレスの正体
そもそも「ストレス」とは、外力によって生じるひずみを意味する物理学の用語でした。カナダの医学者ハンス・セリエが、外部からの影響で身体にさまざまな変調が起きるという「ストレス学説」を唱えたことにより、いわゆるストレスの概念が広まりました。
心身にストレスを与える外的な刺激のことを医学用語で「ストレッサー」といいますが、「〇〇がストレスになる」といった言い方が一般化しており、ストレッサーも含めてストレスと言われています。
身体の不調を治療しても症状がなかなか治まらないと、多くの医師は「ストレスのせいかもしれません」と言います。
ストレスのせいかもしれないと考えるのは、間違いではありません。問題は、身体不調の元凶となっているストレスの正体がいったい何なのか?――ということです。しつこい症状を抑えるには、まず自分の心身を蝕んでいるストレスの正体を突き止めなければなりません。
何がストレスになるかは、人によって千差万別です。たとえば、上司のパワハラがつらくて円形脱毛症になったとか、大切なペットが亡くなった心痛で胃炎になった……といった場合は、何がストレスになっているのか、すぐにわかりますよね。けれど、そうしたわかりやすいストレスの奥に、もっと根深いストレスが隠れていることがあります。
心身症(心のストレスが身体にあらわれた症状の総称)の原因となるストレスは、表面に見えるものだけではなく、カビの根のようにその人の心の奥深くに、複雑に絡み合って潜んでいるのです。
心の奥底に潜んでいるストレスは、本人もなかなか自覚できません。心身症の患者さんにそのことを指摘しても、そんなことはないとかたくなに否定したり、ムッとして反発したりする人がほとんどです。
理由は、「まさか自分がそんな厄介なストレスを抱えている人間だなんて、絶対に思いたくない!」 「ストレスで病気になるのは弱い人間だけだ。自分は違う」という心理が働くからです。
しかし、自分のストレスをかたくなに認めない、あるいはうすうす気づいていても気づかないふりをすることによって、心身症はますます根深いものになっていきます。
ストレス度が高い人ほど病気リスクも高い
一般にストレスというと、ネガティブなイメージがあると思います。けれど、実際にはネガティブなことだけがストレスの要因になるわけではありません。たとえば、結婚や妊娠、仕事で業績を上げる、休暇やクリスマスを楽しむといった一見ハッピーなことでも、人によっては思わぬストレスになる場合があるからです。
ワシントン大学の研究者ホームズとレイが開発した「社会的再適応評価尺度」では、人生や日常生活を変える43項目のできごと(ライフイベント)を点数別にランキング化し、ストレス度を測る目安としています。この社会的再適応評価尺度は、厚生労働省の「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」における心理的負荷の強度基準を測る根拠のひとつにもなっています。

みなさんも、過去1年以内に自分自身に起きたさまざまなできごとを振り返って、社会的再適応評価尺度の点数に応じてストレス度の合計点を出してみましょう。たとえば、離婚(73点)を機に、引っ越して住居が変わり(20点)、生活上の変化(25点)や経済状況の変化(38点)があった場合、ストレス度の合計点は156点になります。
ホームズらの調査研究では、社会的再適応評価尺度の43項目の中で、1年以内に体験したできごとのストレス度の合計点が高かった人ほど、心身症をはじめとする病気を発症するなどの健康リスクの確率が高いことが明らかになっています。
・150点未満の人は、健康リスクが約30%
・150点以上~299点未満の人は、健康リスクが約50%
・300点以上の人は、健康リスクが約80%
もし思ったよりも自分のストレス度が高かったという人は、注意が必要です。自分ではストレスを感じていないことも、知らず知らずのうちに溜め込んでしまい、身体に負荷を与えているかもしれません。
■著者略歴:釈 文雄(しゃく・ふみお)
日本大学大学院総合社会情報研究科教授。心療内科学会専門医。旭川医科大学医学部医学科卒業。東京医科歯科大学(現・東京科学大学)大学院医歯学総合研究科博士課程修了。30年以上にわたって心療内科の臨床医としてのべ10万人以上の患者と向き合う。その経験から、近年、なかなか治らない「謎の不調」を抱える、働き盛りの世代と子育て世代の人たちが増加していることに着目。心身症に気づかず苦しんでいる人をひとりでも多く救いたいという一心から『わたしを「書いて」取り戻す 「謎の不調」から自分を救う本』 を上梓。
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