
今や「再婚」はめずらしいものではなくなりました。再婚とは名前の通り、「再び」「婚姻する」こと。過去に離婚歴があったことを意味しますが、最近はそのことが殊更、注目されることもなくなったと感じています。なぜなら、直近(2024年)の統計によると結婚全体に占める再婚の割合は24%(婚姻全体は485,092組。そのうち再婚は117,518組)つまり、4人に1人は再婚だからです。実際のところ、周囲にも再婚した同僚、友人、親戚などがいるのではないでしょうか? 同時にそれだけ離婚する人がいることを意味します。上記の統計によると2024年の婚姻数は485,092組。一方、離婚は185,904組なので3組に1組は離婚する計算です。
筆者は行政書士、ファイナンシャルプランナーとして夫婦の生活設計をお手伝いしていますが、再婚は初婚より事情が複雑だと感じています。なぜなら、「前の配偶者」がトラブルを持ち込むことがあるからです。
例えば、夫が再婚、妻が初婚の場合。今回の相談者・茜さんは3年前、夫と一緒になったのですが、夫に離婚歴があり、前妻に子どもの養育費に支払っている毎月6万円が重荷になっています。
そんななか、茜さんが懐妊。新しい命の存在に喜んだのですが、それも束の間。狭いアパートから子育てに適した戸建てのマイホームに移ったのですが、毎月の家賃7万円が住宅ローン9万円に増加。しかも、今まではかからなかったオムツやミルク代が追加され家計を圧迫。現在、茜さんは育休中で毎月12万円の給付金のみ。産休前より6万円も減っている状態です。収入が減少し、支出が増加した結果、家計の収支が3万円の赤字に転落したのです。厚生労働省の「令和6年度雇用均等基本調査」によると女性の育休取得率は86.6%。前年の84.1%と上回っています。
筆者の事務所に相談しに来たとき、すでに夫婦の貯金は底を尽きており、借金をしなければならないほど金銭的に追い詰められていました。これ以上、節約するのは無理なので、あとは前妻への養育費を削る以外にありません。そこで茜さんが「前の奥さんに連絡をとって欲しい」と頼んだのですが、夫は「ああ、分かった」と言うものの、実際に連絡をとった形跡がありません。背に腹は変えられない状況ですが、どうすれば良いのでしょうか?
なお、本人が特定されないように実例から大幅に変更しています。また夫婦の年齢や年収、子どもの年齢、離婚の原因や前妻との関係、養育費の金額、面会の有無、再婚や出産の時期などは各々のケースで異なるのであくまで参考程度に考えてください。
<家族構成と登場人物、属性(すべて仮名。年齢は現在)>
夫:氷室康孝(43歳)→会社員(年収500万円)
妻:氷室茜(41歳)→育児休業中(会社員) ☆今回の相談者
夫婦の子:氷室若葉(0歳)
前妻:中野明子(41歳)→パートタイマー(離婚時)
前妻との子:中野藍(8歳)
【行政書士がみた、夫婦問題と危機管理 #20 】
私なら前の奥さんのようにひどい態度を彼にとらないのに
茜さんは「彼からは前の奥さんの悪口を散々、聞かされました。私なら彼を幸せにしてあげられる…そう思って結婚したんです」とのろけ気味に言います。前妻は精神的に好不調の差が激しく、機嫌が悪いときは何をしでかすかわからない人物だったといいます。
例えば、夫は魚より肉が好きで、火の通っていない野菜が苦手。酸味がきいた調味料も食べられません。前妻の機嫌が悪いときは、焼き魚、生野菜のサラダ、ピクルスなど…夫が苦手なものばかり食卓に並べたそうです。それに対して、夫が少しでも文句を言おうものなら大変です。「もう作らない!」と逆ギレして大騒ぎになってしまうんだとか。法務省が公表している司法統計(2024年)によると離婚の原因でもっとも多いのは「性格が合わない」で全体の約6割を占めています。
一方の茜さんはどうでしょうか?その日によって調子の良し悪しはありますが、イライラしているからといってわざと夫が苦手な料理を食卓に並べたりしません。茜さんは「私はあの女とは違うんです!」と強調しますが、一方で「こんなはずじゃなかったのに!」と、後悔の念にかられることもあるそうです。結婚2年目で子どもが産まれ、最初こそ幸せな時間を過ごせていたものの、結婚を悔やんでいるのはなぜなのでしょうか? それは茜さんも夫も、出産や引越によって支出が増加すること、育休取得で収入が減少することについて何も考えていなかったからだといいます。
茜さん夫婦の家計収支はどうなっているのでしょうか? まず支出ですが、子どもが産まれたからの数字は以下の通り。38万円以上かかっています。一方で収入は、夫の月収が23万円、茜さんの給付金が12万円なので毎月3万円程度の赤字です。筆者は「しばらくの間、給料が増える見込みがないのなら、あとは支出を削るしかないのでは?」と投げかけたのですが、茜さんは「これ以上、どこを削れって言うんですか⁉ もう十分に節約していますよ…」と嘆きます。
<毎月の支出>
住宅ローン 120,000円
電気代 12,000円
ガス代 8,000円
水道代 6,000円
夫の昼食代 25,000円
食費 60,000円
携帯料金 12,000円
雑費 30,000円
ガソリン代 15,000円
自動車ローン 28,600円
自動車保険 5,000円
ミルク、オムツ代 20,000円
前妻の子への養育費 60,000円
計381,600円
▶このままじゃ、養育費のせいで我が家は破産してしまう⁉
このままじゃ、養育費のせいで我が家は破産してしまう⁉
このように茜さんの家計は危機的な状況に陥ったのですが、特に重荷になっているのは前妻への養育費6万円です。茜さんは夫に「前の奥さんに話して欲しい」と頼んだのですが、「ちゃんと考えているよ」「もう少しの我慢だから」「まだ動くのは早すぎる」と言うばかり。具体的な行動をとる素振りはありませんでした。どうやら前妻との結婚生活がトラウマになっている夫は、離婚から現在に至るまで前妻とは一切連絡をとっていませんでした。もちろん、前妻の子どもとは一度も会っていません。
子ども家庭庁の「令和 3年度 全国ひとり親世帯等調査」によると母子世帯で父親との面会交流の条件(日時や場所、面会方法や送迎方法など)を取り決めたのは全体の30%。取り決めをしていない理由のなかで「相手と関わりたくない」が17%を占めています。そして全体の45%は面会交流を一度も行っていません。
しかし、本当にこのまま赤字が続いて借金をすることになったら、遅かれ早かれ生活が破綻するのは目に見えています。なぜなら、借金をしたところで黒字に転換するわけではなく、相変わらず赤字のままだからです。借金を返済するお金がないので、前回の借金を返済するために今回新たに借金をする…という自転車操業に陥ります。筆者は「借金は雪だるま式にどんどん膨らむばかりで最終的には多重債務に至りますよ」と忠告しました。
茜さんが「養育費を全額払うために借金してもいいって言うの!」と激怒すると、夫は「だったらお前がやってよ!」と言い、自分のスマホを手渡しました。これは茜さんが夫のLINEを使い、前妻と連絡をとってもいいという意味です。「夫の代わりに私が交渉だなんて、そんな差し出がましいことはしたくなかったのですが…」と当時の心境を振り返ります。しかし、背に腹を変えられないと感じた茜さんは、思い切って前妻に連絡したのです。「氷室の妻です。お世話になっています。養育費のことで話があります」と。そして夫抜きで、前妻と二人で直接会う約束を取り付けたのです。
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