
世界各国に抹茶カフェができ、近年は日本茶カフェも急増中。「時代は世界的なお茶ブーム!」……のはず。しかし実態はというと、今、日本茶市場は多くの解決すべき課題を抱えているそう。伊藤園のCMキャラクターでもある俳優の有村架純さんと、芸人のなかやまきんに君さんも登場した「日本茶の発展的未来に向けて〜生産者とともに。日本茶を世界へ〜」の発表会に参加し、日本茶業界が抱える問題を聞いた。
お茶の輸出量は20年で11倍、2026年の新茶初取引額は高騰。しかし日本のお茶農家の戸数は15年間で65%も減少

「世界的な茶価の高騰と、日本の生産需要を含めた体制にギャップが生まれている」と話すのは、伊藤園執行役員マーケティング本部長の志田光正氏。現在は世界的なお茶のブーム。各国の都市では、抹茶はもちろん日本茶やほうじ茶を取り扱うカフェがどんんどん増えているそう。
需要が高まるにつれ、日本のお茶の価格は高騰する。お茶の輸出量は過去20年間で11倍に、2026年の新茶の初取引は、鹿児島、三重、宮崎などでは過去10年で最高値をつけた。「このような右肩上がりの状況は、これからも続いていく可能性が高いんじゃないか」と志田氏は分析する。
お茶の需要が高まる一方で、日本のお茶農家の減少は止まらない。ここ15年でお茶農家の数は35%にまで減少、それにともないお茶全体の生産量も30%減少しているというのだ。お茶農家が減ると、当然栽培面積も減少する。それがまず、日本が抱えるお茶市場の大きな問題点となっている。
圧倒的な生産量の中国を前に、「国産茶を海外に輸出」しつつ「国内用茶を輸入」するいびつな構図が

抹茶や日本茶のブームにより、2025年の日本から海外への緑茶の輸出量は過去最高となった。しかし一方で、海外から日本に入ってくるお茶の輸入量も過去5年で最大の量となっているのだ。
その理由は、「抹茶」の需要増加にあるという。抹茶のもととなるのは「てん茶」というお茶の種類。日本人が多く飲む緑茶のもととなるのは「煎茶」という種類なのだが、抹茶の需要が高まるにつれ、煎茶からてん茶へと転換するお茶農家が増えているというのだ。
海外への輸出を優先した結果、日本で需要の高い「煎茶」の生産量が減少。日本人が多く飲む緑茶は、海外産のものが増えているという逆転現象が今起こっているのだ。
「お茶の生産量でいうと、日本が約7万tなのに対し、中国は約300万t。輸出量は日本が約1.2万tなのに対し、中国は約30万t。その中には、抹茶の原料であるてん茶も多く含まれている」と話す志田氏が懸念しているのは、「構造がいびつになっている日本のお茶が、これから先、生き残っていけるのか」ということ。
つまり、現在の抹茶ブームが落ち着いたあと、あらためて日本人が「国産の緑茶を飲みたい」となったときに、気づけば日本のお茶は海外産のものばかりになってしまっている可能性がある、ということだ。生産者側の不安もある。「てん茶に転換した日本の生産者が、煎茶作りに立ち戻ることができない状況になっているかもしれない」ということ。ほかにも「抹茶ブームがいつまで続くのか見通せない」「お茶の値段が上がり続けると、売れなくなるのでは」という課題も抱えている。
「中国産の宇治抹茶ブランド」ってどういうこと!? 何よりもまず「日本茶ブランド」を確立することが急務
日本茶の未来のために必要なのは、「生産基盤の強化、需給構造のコントロール、日本茶の価値向上」と志田氏は話す。そのためには「てん茶か煎茶かではなく、両方の茶葉が加工できるハイブリッド生産ライン」と考え、そうしてできた商品は、生産者が希望すればすべて伊藤園が買い取る。生産者と一緒になって取り組むことで、農家の経営の安定化をサポートするという仕組みだ。
日本茶の価値向上に関しては、日本茶の「テロワール」を武器に、日本茶の質を世界に伝えていくことが急務となっている。例えば「宇治抹茶」のように、鹿児島や三重、静岡といった他の産地もそれぞれの風土を活かした個別のブランドとして確立していこうということだ。
なぜ産地のブランド化か急務なのかというと、志田氏から語られた驚きの実態がある。それは、「京都宇治抹茶という名前の中国のお茶が、中国や日本国内で販売されている」ということだ。実際それは2025年、裁判にまで発展している。
京都の老舗茶屋が発売するお茶と同名の中国産のお茶が、中国のECサイトで販売されていたことで、その茶屋はメーカーとの間に訴訟を起こした。結果は、第一審の京都地裁では、原告が敗訴。控訴したものの、裁判所の勧めで26年に和解となった。
中国国内では「宇治」という地名が商標登録されていない(あるいは保護が届かない)場合が多く、現地の法律上は「宇治抹茶」という言葉自体を商品名として使うこと自体の取り締まりが難しいのが現状ということなのだ。
日本茶にも地理的表示(GI)の導入を求める動き
そんな世界の動きも踏まえ、「望まれるのは、日本茶のナショナルGI化」と志田氏は話す。GIとは「地理的表示」の意味で、地域で生まれた伝統を有し、その高い品質が生産地と結びついている農林水産物や食品などの名称を、知的財産として保護する制度のこと。
海外だとフランスやイタリア産のワインなどが有名だが、日本でも日本酒など約170の産品が現在登録されている。
これを日本茶に置き換えると、国内産茶葉のみを使い、かつ、日本国内で加工された荒茶・仕上げ茶のみが「日本茶」と名乗ることができるようにしよう、というルール作りとなる。「他国産の茶葉を使っているのにも関わらず日本茶表示をすることは、お客様に誤解を与えるだけでなく、生産者に対する冒涜でもあると思う。お〜いお茶は、日本で生産され日本で加工された純国産茶葉100%。ここにこれを宣言します」と志田氏は締めくくった。
政府には日本茶のGIの確立を求めるともに、我々国民側としたもお茶農家が抱えうる後継者問題や労働力確保について考える必要がある。
レストランに行ったら「お茶が無料で出てきた」といった経験をしたことがある人は多いと思う。そんな環境の中で育った日本人は、「お茶=身近にある安いもの」と考えてしまいがちだ。お茶の価格が高騰している今だからこそ、お茶に対する再評価や未来について考え直してみる必要があるのかもしれない。
■伊藤園のCMキャラクター、俳優の有村架純さんが登場
「日本茶を守ろうとする熱量に安心感を覚えました」

続いて登場したのは、俳優の有村架純さんと、鹿児島県の契約農家の2名の生産者。生産者の堀口大輔さんは、「てん茶はこれからどうなっていくんだろう、煎茶はこれからどうなっていくんだろうという不安があったが、伊藤園というトップメーカーさんが本気を出して未来に向けて取り組んでいるということがわかりました。僕らがやることは、目の前のことをコツコツと続けて、仲間を増やしていくことだと思う。ピンチがチャンスになる機会かもしれない」と話した。
もう一人の生産家・堀口将吾さんは、「ナショナルGIの話もあったが、そうやって我々がやっていることをしっかりと伝えられる仕組みや権利が守られる仕組みができていっている。我々はそれに応えられる品質や量をしっかり供給していくことが義務」と力強いコメントを述べた。
それを聞いた有村架純さんも「お二人の日本茶に向けた強い思いが伝わってきました。日本茶を守ろうとしてくださっている熱量が伝わってきて安心しましたし、消費者の一人としてありがたいと思いました」と話した。
有村架純さんとなかやまきんに君の100%譲れないものとは

発表会の最後に再び有村架純さんと、「純国産」の応援団長として芸人のなかやまきんに君さんが登場。司会者がお〜いお茶の純国産茶葉100%にかけて、二人に「100%譲れないもの」を聞いた。
有村さんは「あまり自分自身に強いこだわりはないんですけど……」と前置きをした上で「しいていうならお芝居ですかね。無理をすることが必要な場面もありますし。踏ん張り時で諦めないということです、シンプルですが」と語った。
なかやまきんに君は、「30年続けている筋トレ」と即答。「17歳から始めた筋トレはずっと変わらず真剣に取り組んでいます。お笑いのお仕事は有村さんと違って譲ることばかりです。基本的にヤー!とパワー!のみ。それだけで満足感があります。無理をした時期もありましたが、してもしなくても同じでした」と笑いを誘った。
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