
こんにちは、心理学者の内藤誼人です。心の動きと社会は切り離して考えることのできない表裏一体の存在です。働く女性の皆さんに、仕事、家庭、自分自身の3つの視点から、「知っておくと人生がスムーズに動き出す」心理学の知恵をお伝えします。
研究結果から、肥満者ほど「自分が思っているよりもたくさん食べていることに気づいていない」という事実をお伝えした前編につづく後編です。
【心理学者が教える「8割がんばらない」生き方】#5後編
>>気づかないうちに量を食べている人がやりがちなこととは
「ながら食べ」をやめるだけダイエット
自分では食べているつもりはなくとも、実際に何かしらを食べているのであれば、痩せるわけがありません。というわけで、もしダイエットをするのであれば、まずは「ながら食べ」をやめてみるのはどうでしょうか。それだけでも、かなりのダイエット効果が期待できますよ。
「ながら食べ」というのは、YouTubeの動画を見ながら、あるいはテレビを見ながら、あるいは本を読みながらお菓子などを食べることを指します。「○○しながら食べる」を略して、「ながら食べ」と呼ぶのですね。ただでさえ私たちには、自分が食べた量を過小評価する傾向があるのですから(特に肥満者は)、何か他のことをしながらお菓子をつまんでいたら、どれくらい食べたのかがわからなくなります。他のことに意識が向いていると、満腹感も感じにくくなるので、ついつい食べすぎてしまうことになります。
オランダにあるマーストリヒト大学のブリジット・ブーンは、ダイエットしている56名と、ダイエットをしていない56名の女子大学生を集め、600グラムのバニラ、チョコ、ストロベリーのアイスを好きなだけ食べてもらうという実験をしてみました。
なお、ブーンはダイエットをしているかどうかだけでなく、2つの要因も追加しました。1つ目はカロリー。アイスを食べてもらう前に、「これは高カロリーのアイスです」と告げる条件と、「カロリー30%カットのアイスです」と告げる条件を設定しました。実際には、まったく同じアイスだったのですが。
もう1つ追加された要因は、ながら食べ。半数には実験室で静かにアイスを食べてもらいましたが、残りの半数にはラジオのトーク番組を聞きながらアイスを食べてもらったのです。
最後に自分がどれくらいアイスを食べたと思うのかを推定してもらうと、次のような結果になりました。
>>アイスをたくさん食べたのはどっち?
「ながら食べしない」vs「ラジオを聞きながら」
【ながら食べしない】
高カロリー ダイエット中:154.6g
高カロリー ダイエットをしていない:176.0g
低カロリー ダイエット中:186.0g
低カロリー ダイエットをしていない:175.1g
【ラジオを聞きながら】
高カロリー ダイエット中:274.6g
高カロリー ダイエットをしていない:192.5g
低カロリー ダイエット中:234.9g
低カロリー ダイエットをしていない:261.0g
(Boon, B.ら,2002より)
数値を見てもらえばわかりますが、ダイエット中であろうがなかろうが、アイスが高カロリーであろうがなかろうが、「ながら食べ」をしていると、しないときよりもたくさんアイスを食べてしまうことが明らかにされました。
ダイエットをしている人は、「このアイスは高カロリーですよ」と告げられたときには、「食べすぎに注意しなきゃ」という意識が働くのか、少しだけ抑制して154.6gしか口にしませんでしたが、ラジオを聞きながら食べるときには、そういう抑制も働かなくなることもわかりました。
>>「食べていないのに太る」などということはない。だから……
心理学的観点から、まずは「ながら食べしない」ことからダイエットをはじめませんか
ダイエットをしたいのであれば、できるだけ食べる量を減らすのが一番。食べる量を減らせば、そのぶんだけ、体重は落ちますから。そのためには、「ながら食べ」をやめることが先決です。「ながら食べ」を一切しないだけでも、摂取カロリーを大幅に減少させることができますし、自然に体重も減っていくことが期待できるでしょう。
「食べていないのに太る」などということはありません。食べているから太るのです。ただ、自分がどれだけ食べているのかに気づいていないだけなのです。どうして気づくことができないのかというと、その原因は「ながら食べ」。
「ながら食べ」をしていると、食べ物のおいしさをあまり感じることができなくなりますし、体重はみるみる増えますし、良いことが一つもありません。まさしく踏んだり蹴ったり、という結果になります。
何となく習慣的に「ながら食べ」をしているのなら、それは悪い習慣ですから早々に改めましょう。絶対にお菓子やケーキを食べてはいけない、とまでは言いませんが、せっかく食べるのならせめておいしく食べることを心がけてください。
この記事の前編>>「あまり食べていないのに太る」ってどういうこと?嘘でも勘違いでもない。心理学が解明するショックな真実
(出典)
Boon, B., Stroebe, W., Schut, H., & Ijntema, R. 2002 Ironic processes in the eating behaviour of restrained eaters. British Journal of Health Psychology ,7,1-10.
Wansink, B., Payne, C. R., & Shimizu, M. 2011 The 100-calorie semi-solution:Sub-packaging most reduces intake among the heaviest. Obesity ,19, 1098-1100.

お話/内藤誼人先生
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役。社会心理学の知見をベースに、ビジネスシーンを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。動物の飼育が趣味で、最近は人間よりも動物に好かれており、自然を愛するナチュラリストでもある。著書に、『すごい! モテ方』『すごい! ホメ方』『もっとすごい! ホメ方』(以上、廣済堂出版)、『ビビらない技法』『「人たらし」のブラック心理術』(以上、大和書房)、『裏社会の危険な心理交渉術』(総合法令出版)など多数。その数は200冊を超える。



