
「人の顔色ばかり気にしてしまう」「すぐにあきらめてしまう」「子どもに口を出しすぎてしまう」──そんな行動に、思い当たることはありませんか?
心理学をベースに経営者やアスリートなど多くの人を支援してきたメンタルコーチ・平本あきお氏は、大人になってからの感情や行動のパターンは、幼少期の体験と深く結びついていると語ります。
本記事では、平本氏の著書から、幼少期の体験が大人の感情や子育てにどのような影響を与えるのかを紹介します。
※本記事は書籍『感情は全部出し切ったほうがいい つい、自分の気持ちを我慢しすぎてしまう人のためのメンタルスキル』(平本あきお:著/日本実業出版社)から一部抜粋・編集したものです。
心のなかの「ネガティブ感情」に人生を侵食されないために
自分に強く影響を与えた体験からくるネガティブ感情は、自分が忘れたつもりでも、抑えこめているつもりでいても、向き合って解放しないかぎりは自分の人生に居座り続けます。
居座り続けるだけならまだしも、人生全体を侵食してしまうケースもあります。
私の経験から、幼少期にしんどい体験をしてきた人たち(父親が高圧的だったとか、母親が不安定のために自分がいろんなことを背負ってきたなど)は、そのときの体験が、ものの感じ方や受け取り方の土台になって、大人になってからも同じようなパターンをくり返してしまうことがよくあります。
他人のちょっとしたひと言で、イラッとする。人の顔色ばかり気になる。すぐにすねてしまう。「どうせ何を言ってもムダだ」と、すぐにあきらめる。
さらに、自分が親になったとき、今度は子どもに対して心が不安定になってしまう人もいます。
子どもの生活に口を出しすぎたり、守りすぎたり、何でも細かくコントロールしようとしてしまうケースも珍しくありません。
過去の体験が人生を左右したある男性のケース
40代のある男性の例です。
彼が子どものころ、父親は仕事ひと筋でほとんど家に帰らない人でした。父に抱きしめられた記憶も、ゆっくり話を聞いてもらった記憶もなく、「愛された」という実感は彼のなかにいっさいありませんでした。
そんな家庭環境で育った彼は、「親には頼らない」「自分のことは自分でなんとかする」と心に決め、高校生のころから自分で働いてお金を稼ぎはじめます。
商才があったのか、彼は若いころにビジネスで大成功し、富裕層の仲間入りを果たしました。「金さえあれば、すべて手に入る」と思っていた彼は、私生活では派手な暮らしを送ります。恋人も複数いました。
ところが、ある事件をきっかけに、築き上げてきた財産を一気に失ってしまいます。
人が離れていくなかで、たった1人だけ彼を見捨てなかった女性がいました。その女性と結婚した彼は、心を入れ替えて、再出発します。
それまではお金しか信じられなかったけれども、奥さんの愛情によって人間らしい感情を取り戻したそうです。
2人の間には子どもも生まれ、彼はようやく幸せな人生を手に入れます。すっかり性格も落ち着いた彼は、再びビジネスで成功して、家族で海外に移住しました。
しかし、海外で子育てをはじめたとたん、彼のなかに抑えこまれていた不安が一気に噴き出したのです。
雇っていたメイドが、ほんの少しでも自分の意図通りに動かないと、彼はひどく感情的になり、怒りを爆発させてしまいます。
「子どもを危険にさらした」と大騒ぎして、メイドを解雇。次に雇った人のことも信用できず、常にピリピリした態度で周囲に怒りをぶつけ続けました。
そんな緊張状態が続くうち、奥さんの心もしだいにすり減っていきます。どれだけ寄り添おうとしても、怒りと不安をぶつけられる毎日に、彼女はついていけなくなってしまいました。
そして最終的に、2人は離婚という選択をすることに。
幼少期に愛されなかった彼の悲しみや不安は、結婚当初は奥さんの愛情によって一時的に満たされていたのだと思います。
しかし、子どもが生まれると、その奥にしまいこまれていた感情が、別のかたちで表に出てきてしまいました。それが、子どもへの過干渉や過保護、過度なコントロールです。
「自分が満たされなかった思いを、子どもには味わわせたくない」という気持ち自体は、親としてとても自然なものです。
けれども、その思いが強くなりすぎると、子どもの安全に過剰に反応するようになり、まわりの人をも追いつめてしまいました。結果として、奥さんのほうが先に限界を迎えてしまったのです。
幼少期に満たされなかった悲しみや不安は、きちんと向き合わないかぎり、かたちを変えながら何度でも表れます。
お金や成功、社会的な評価をどれだけ手に入れても、自分の感情にきちんと目を向けなければ、人は、本当の意味では幸せにはなれないのです。
ここまでの記事では、幼少期の大人の感情や子育てに与える影響についてご紹介しました。つづく関連記事では、「本当の気持ち」についてお届けします。
つづき>>どれだけ成功しても満たされない…引退後、イライラと不眠に苦しんだ50代実業家が、涙ながらに吐き出した「本当の気持ち」
■著者: 平本あきお
エグゼクティブ・メンタルコーチ。カウンセリング、コーチング、ZONEフローの専門家。米国アドラー大学院修士、東京大学大学院修士(臨床心理)。偏差値37から中央大学を卒業後、心理カウンセラー、心理学講師を経て、1995年の阪神・淡路大震災で両親を亡くしたことを機に渡米。小学校、州立刑務所、精神科デイケアなどにコーチングを導入する。2001年に帰国・起業。現在は上場企業経営者・役員、トップアスリート、アーティスト、インフルエンサーなどのエグゼクティブコーチを務める。オリンピック金メダリスト、メジャーリーガー、サッカー日本代表、プロ野球監督、俳優、経営者など、多くのハイパフォーマーを26年間サポート。また、ソフトバンク、本田技研工業、三菱UFJ銀行、富士通など200社以上・12万人に、リーダーシップや管理職、キャリア研修を実施。著書に『すぐやるコツすぐやめるコツで全部うまくいく!』、共著に『アドラー心理学×幸福学でつかむ! 幸せに生きる方法』などがある。



