60歳を前に私は「借りを残したこと」を考えた。「今後の人生」ではなく【アラカン☆モスクワ女子大生日記】#2 | NewsCafe

60歳を前に私は「借りを残したこと」を考えた。「今後の人生」ではなく【アラカン☆モスクワ女子大生日記】#2

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60歳を前に私は「借りを残したこと」を考えた。「今後の人生」ではなく【アラカン☆モスクワ女子大生日記】#2
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60歳の定年まで残すところあと半年足らずのミリさん。「いまの私は次の10年を考えるよりも、これまでやり残したことを片付けていく1年」と語ります。

そんなミリさんが突如として26年8月末、長年の積み残しだった「ロシアへの留学」を果たしました。2026年のモスクワで女子大生を再履修するミリさんの不定期日記をお届けします。今回は前回よりも日づけを遡ります。

【アラカン☆モスクワ女子大生日記】#2

9月2日(火)晴れ モスクワ23

「私にはまったく理解できないね! この子たちみたいに若くて将来があるなら、ロシア語を勉強するのはわかるけど。『夢』『夢』って、あんた自分のこといくつだと思ってんの?」と言って私の頭をガツンとやってくれたのは、寮母だ。キルギスから単身出稼ぎでやってきたという。名前は二、三度聞いたが、長くて発音が難しくて覚えられなかった。四度目は多分怒られるだろうと聞けなかった。

14階建ての寮には1000人を超す学生が住む。そのすべてのフロアの共有の場所の掃除やゴミ出しをするのが寮母の仕事だ。当然住み込み。彼女の部屋も私と同じ2階にあるらしく、クーフニャ(台所)でよく顔を合わせる。その度に「あんたどこの部屋? 何年いる予定?」と聞かれる。私はその度に「225号室です。1か月の予定です」と答えるのだが、もうこれで5回目だ。

だから聞いた。「あの、今朝も同じ質問されたんですけど、どうしていつも同じこと聞くんですか?」と。すると寮母は答える。「ルールを犯して寮生以外の人が寮に入り込みんでいた人がいるので、何度でも聞くよ」と。

(へえ~、そうなのか)と思いつつも、クーフニャに他の若い寮生がいても聞かれていることを見たことがない。私、怪しまれてる?? なぜ?? なんとなく釈然としない気がした。

寮に入って6日目、今日からようやく大学の授業が始まった。1月に大学に申請をした時、ロシア教育省の要項には「授業は8月23日から9月20日まで」とあった。なので、まだ合格するかどうかもわからないまま、ANAのセールでイスタンブールまでのチケットを25万円で購入した。8月21日羽田発、9月22日イスタンブール発。

イスタンブールはロシアまでの飛行機がたくさん飛んでいる。だから合格が決まったところで(予定では4月にはわかるとのこと)、イスタンブールーモスクワ間のチケットを買うことにして、もしも不合格なら、イスタンブールからイタリアにでも行って憂さを晴らそうと思っていた。

これは「生涯学習」や「セカンドキャリア」といった何かとは真逆の「積み下ろし」で

話は前後する。私は今回、ロシア教育省の奨学金で、モスクワの大学でロシア語を勉強している。モスクワが多いが、ロシア全土20校くらいの大学で学ぶことができる奨学金を、この侵攻下でもロシアは外国人に出し続けている。短くて1か月、大半は1年。学部や院で学ぶのならそれに見合った年数の奨学金を出してくれる。その存在を知ったのは去年のことだった。

なぜロシア? なぜこんな時期に? なぜ留学?

言えば多くの人に聞かれるだろう問いは私自身がずっと思っている。たぶんその答えは、この1か月探し続けることになる。そしてそれはこの日記のハッシュタグにあるような「生涯学習」や「セカンドキャリア」ではない。

そういう未来に向かって積み上げていく行為ではなくむしろ逆、積み下ろしていく行為だと予感している。社会が勝手に決めた区切り“還暦”に思うところはあるけれど、でも、なら、この区切りで一回すっきりしてみよう、やりのこした(借りを残した)ことをする1年にしようと思っていた。

私の借り。ロシア文学が好きだった父の影響で、家にはたくさんのロシアの文学作品があった。時々それを読んでは、チェーホフって最高におもろい!と思い、大学はロシア語学科に入った。けれど、まったく、全然勉強しなかった。外国旅行とそのためのアルバイトに明け暮れていた。何かに打ち込むことをしてこなかった自分は、いつもどこかで何かに「借り」を感じていた。

ロシアに行きたくとも今はなかなか行けない。ロシアはいま戦争をしている。日本はロシアにとって非友好国とされている。日本人にビザは容易に降りない。しかしそんな状況下で、ロシア教育省が日本人にも門戸を開いているこの奨学制度は驚きだった。ロシアの狙いはなんなのか?いまのロシアはどんななのか?勉強は苦手だが、好奇心だけは旺盛な私に、飛びつかないという選択肢はなかった。

つづき>>>この2年で同期とそれに近い同僚が3人亡くなった。みな突然死だった。使い方を知らない有給休暇は50日以上ある。


《OTONA SALONE》

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