
子どもは体力があって当たり前。そんなイメージを持つ人は多いかもしれません。しかし近年は、片足でうまく立てない、雑巾がけで体を支えられずに転んでしまうなど、体力や身体機能の低下が気になる子どもが増えているといいます。
体力の低下は、運動能力だけの問題ではありません。運動するための体力が落ちると体を動かす機会が減り、さらに体力が低下するという悪循環にもつながります。
本記事では、整形外科専門医・フィットネストレーナーの吉原潔氏の著書から、近年懸念される子どもの体力低下の実態と、体力が向上する習慣について紹介します。
※本記事は書籍『疲れない、回復できる、速く・長く歩ける 体力低下を食い止める30秒習慣』(吉原潔:著/アスコム)から一部抜粋・編集したものです
体力のない子どもが増加中
「片足でしっかり立てない」、「床の雑巾がけができず、体を支えられずに転んでしまう」、「肩こりや腰痛がある」――。
「あー、私もだ。年をとるとねぇ……」と思ったのではないでしょうか。いやいや、これは最近の子どもの話です。
まるで高齢者が陥りやすい「ロコモティブシンドローム」にそっくりの症状です。
ロコモティブシンドロームとは、骨、関節、軟骨、筋肉、靭帯、腱、神経などの運動器機能の不全があり、体が思うように動かせなくなってしまうことです。子どものうちからロコモとは恐ろしい話です。
子どもは体力があるというのはイメージにすぎず、近年、子どもの体力低下が懸念されています。
スポーツ庁がまとめた「令和5年度 全国体力 運動能力、運動習慣等調査の結果(概要)について」によると、体力テストでの体力合計点は小中学生ともに低下傾向にあります。
とりわけ、運動する機会が制限されてしまった新型コロナ禍以降の体力低下は顕著で、いまだコロナ禍以前の水準には至っていません。
心配なのは、「運動をするための体力」が落ちているという点です。「運動をするための体力」が低下すると、体を動かす機会が減ってしまうため「健康に生活するための体力」も低下していきます。
すると、生活習慣病に罹患しやすくなります。このままでは、メタボや生活習慣病に苦しむ子どもが増えることもあるかもしれません。
体力が低下する習慣・向上する習慣
「体力をつけるために、ウォーキングをやっている」
そんな方は多いでしょう。
たしかに、歩くことが体力づくりに効果的であることに間違いはありません。なかでも、体力のうち持久力をつけるには最適です。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動 運動ガイド2023 高齢者版」には、このようなことが書いてあります。
「健康を保つために必要な身体活動の目安は、1日約6000歩以上」家事などの生活活動は、約2000歩に相当します。残りの約4000歩は、どうするか。
「毎日40分以上の歩行(約4000歩に相当)を行うことを推奨」だそうです。
もう一度くり返しますね。「毎日40分以上の歩行を推奨」です。どうですか?
すでにウォーキングをやっている方は、毎日40分以上歩いていますか? まだやっていない方は、これから毎日40分以上歩けそうでしょうか?
これはちょっと、気合いと努力が必要そうです。
それから、体力の根幹は「筋肉」です。筋肉が足りないと、ウォーキング中につまずいたり、転倒したりして、ケガの危険が高まります。
特に、お尻や足の筋肉が少ない方は、段差などでつまずいたときに、ふんばりがきかずに転倒しやすいので注意が必要です。
持久力がないと息切れもしやすいので、ひどいときは体が酸素不足になってふらつき、それも転倒につながる恐れがあります。
もちろん、何もせずに家でゴロゴロしていることほど、体力低下に直結する習慣はありません。一方で、ウォーキングは体力を向上する習慣の1つであることに疑いはありません。
ただ、残念ながら、ウォーキングには筋肉を強化する効果が少ないのです。ほかにも、屋外を長時間にわたって歩くことには熱中症の危険が伴います。真夏だけの話ではありません。
特に、筋肉量が不足している人ほど、熱中症に注意しなければなりません。実は、筋肉は水の貯蔵庫でもあるのです。
・筋肉が多い人=体の中に容量の大きな水筒を持っている
・筋肉が少ない人=体の中に容量の小さな水筒しか持っていない
こう思ってください。筋肉量の少ない人は体内に水分をためておくことができないため、熱中症になりやすいのです。
くり返しますが、健康づくりのために歩くことは、とてもよいことです。でも知っておいてほしいのは、「安全に歩く」のは想像以上に体力がいるということ。
体力に自信がない、日頃からつまずく、という方は、まずは筋肉づくりからスタートして「運動をするための体力」をつけることが先決。体力づくりの近道は、結局のところ筋肉を増やすことしかないのです。
そのために、室内でいつでもできて、もちろん40分もかからない「30秒もも上げ」が役に立ちますよ。
「30秒もも上げ」のやり方>>「1日1回30秒」で筋力アップ!50代でメタボ体形を脱却、ボディコンテストでグランプリ受賞した整形外科医が教える「もも上げ」とは?
■著者:吉原 潔(よしはら・きよし)
整形外科専門医・フィットネストレーナー。医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。日本医科大学卒業後、同大学整形外科入局。帝京大学医学部附属溝口病院整形外科講師、三軒茶屋第一病院整形外科部長、アレックス脊椎クリニック院長を経て、2024年より現職。日本整形外科学会専門医、日整会内視鏡下手術・技術認定医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会(NESTA)公認パーソナルフィットネストレーナー、食生活アドバイザー。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。トレーナーとしての信条は「ケガをしないトレーニング方法を指導すること」。50歳を過ぎてから筋トレでメタボ体形を脱し、ボディコンテストに出場、受賞歴多数。著書に『ドクターズスクワット 医者が考案した「30秒で運動不足を解消する方法」』(アスコム)などがある。



