
小谷実可子さんがシンクロナイズドスイミング(現・アーティスティックスイミング)の日本代表として夏季大会初の女性旗手を務め、ソロ・デュエットともに銅メダルを獲得したのは、1988年に開催されたソウルオリンピック。オリンピックの名場面として必ず挙がるシーンではないでしょうか。
そして、最近の大きなトピックスといえば、50代半ばからの競技復帰! 日々生活を回すだけで精一杯の40代50代の私たちからすると信じられない挑戦です。しかし、今回の取材では、私たちでも取り入れられそうな「心と体の元気を保つヒント」を伺うことができました。還暦を迎えてもなお、アクティブに活動している小谷さんは、生き方・考え方自体が「現役」なのだと、大変な刺激を受けたインタビューの一部始終をお伝えいたします。
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▶夜のストレッチはサボりたくなる日も私もストレッチをサボりたくなる日はある。でも「できない理由を探す癖」で、つまらない人生に

――現役時代から約30年のブランクがあっても、鍛え上げた筋肉や強いメンタルが土台にあるからこそ、フットワーク軽く動けるのでは?と思ってしまうところも……。オトナサローネ読者は40代、50代のゆらぎを感じる世代です。私もそうですが、「今日はちょっと体がだるい」と、言い訳を探してはやるべきことを後回しにしてしまうこともしばしば。
「 そうですね。“健康でいたい”という漠然とした目標ではなく、10分でいいから歩こう、1回だけジムに行こうと、今の自分を動かす具体的で小さな目標を掲げることから始めてみては。
やらなくてはと思いつつもベッドに横になっていた自分から抜け出し、靴を履いて外に出られた、10分歩けた、ジムで汗を流せた、一つ一つできなかったことを乗り越えて成長へとつながっていくんです。実際に私がマスターズに向けて水中でしていたことも、その繰り返し。
人それぞれ、日々向き合っている困難や目標に大小はないですよね。だから、どんな小さなステップでも、できた自分を認め、褒めてあげること。
例えば、ピーマンを嫌いな子どもが、みじん切りにしたカケラを一つでも食べられたとき、『たったの一かけでしょ』と言うのか、『すごい!食べられたね』と褒めてあげるのかで、ピーマン嫌いを克服できるかどうかが変わってきますよね。褒めてあげれば、自信がついて克服できるかもしれません。小さなことでも、成功体験を得ること、そしてそれを周りが褒めてあげて、自分でも『できた』と認めること。それによって前進できるんです」
――つい、できない理由を探してしまうけれど、できた喜びを増やしていくことが大事なのですね。
「そうです! “できない理由”を探す癖がつくと、人生がつまらなくなります。
実は私でもストレッチはさぼりたくなってしまうんです(笑)。プールは行ってしまえば楽しく練習ができるのですが、寝る前のストレッチは、やったからといって結果が数字にあらわれるわけではなく、しなくても誰にも批判されません。出張先のホテルが狭いからできないなー、今日はもう時間がないし……と、できない理由を探そうと思えば探せるけれど、ストレッチをするのとしないのとでは、眠りの質も、翌朝の疲れのとれ具合も明らかに違うので、やるんです。
できるためにどうすればいいかを考え、面倒と思ってもドラマを見る時間は開脚をする時間など、普段の生活に紐づけて、“ながら”でも習慣化できるようにしていますね」
▶人生は50歳から!と断言する理由は幸せホルモンを浴びて、「50歳はホップ、60歳はステップ、70歳でジャンプ」できたら最高!

――人生100年時代といわれるなか、50歳は折り返し。終わりに向かっていくのではなく、まだ成長できるのだと、お話を聞いていると希望がわいてきます。
「先ほども言いましたが、私も50代からは老いと上手につき合いながら、残りの人生を静かに過ごしていくのだろうと考えていました。だけど、マスターズへの挑戦を始めてから、考えがガラッと変わり、人生は50歳から!と心の底から思えるようになったんです。
これまで数々の公的な仕事にも携わり、やりがいも感じていましたが、競技に復帰してからは『楽しそう』『幸せそう』と、言われることが増えました。きっと、幸せホルモンがたくさん出ているんでしょうね。
競技をするなかでいい点数をとったり、メダルをとったりして達成感が味わえて『ドーパミン』が出ます。目標に向かって一緒にがんばれるチームメイトや応援してくれる家族、仲間がいることで、愛情や絆を感じ『オキシトシン』が出ます。練習で疲れたあとのお風呂が気持ちいいとか、ごはんがおいしいとか、空がきれいだなと思える精神的な安らぎから『セロトニン』も。
幸せを感じるホルモンを3つとも得られているんです。元気な体があって、好きなスポーツができ、支えてくれる仲間がいる。それだけでプラスの連鎖が起きて、幸せな気持ちでいられることに感謝しています。
50歳がホップだとしたら、60歳からはステップ! 70歳のジャンプに向けて、まだまだこれからです」
Profile
小谷実可子(こたに・みかこ)
1966年8月30日生まれ、東京都出身。アーティスティックスイミング(旧・シンクロナイズドスイミング)元日本代表。1988年ソウルオリンピックではソロとデュエットで銅メダルを獲得。競技引退後は、スポーツコメンテーターや、様々なスポーツ関連団体で重職を歴任。東京2020オリンピック、パラリンピック期間中は、スポーツディレクターとして大会に貢献。2023年に競技復帰を果たし、世界マスターズ水泳選手権では、2023年から2025年まで3大会連続で金メダルを獲得。2026年4月より、公益財団法人 東京都スポーツ協会の会長に就任。
撮影/沼尾翔平



