
日本のシンクロナイズドスイミング(現・アーティスティックスイミング)界を牽引してきた小谷実可子さん。華々しいキャリアは私たちにとってあまりに遠い世界の存在のように思えますが、長年指導者としても活躍してきた小谷さんの言葉は、日々ゆらぎに翻弄されながら、輝くことをあきらめがちな私たちを明るく照らしてくれるものでした。
大きな夢や目標を持つことと同じくらい大事なこと、「もう年だから」と諦めない、心と体の整え方とは?
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▶更年期は一切なかった更年期は一切なかった…「忙しくて感じる暇がなかった」という表現が正しいかもしれません

――マスターズ大会への挑戦を機に、「人生は50歳から」と思えたというお話にはとても希望が持てました。その一方で、50代になると思うように体が動かない日々が続き、落ち込むこともあります。読者世代は、更年期症状に悩まされている人も多くいます。小谷さんは、いかがでしたか?
「それが一切なかったんです。あったのかもしれないけれど、忙しすぎてほてりや不安感みたいな症状を感じる暇がなかった、というのが正しいかもしれません。周りの忙しく働いている人たちも同じように言ってましたね。『病は気から』ではないけれど、選手時代にお世話になった整形外科の先生に『例えば、腰を痛めたときに、こういう動作をしたら痛いかな、と考えすぎてしまったり、血が出てかさぶたになったところを、もう固まったかなと何度もいじってしまう。そういう気にすることが、回復を遅らせるんだよ』と言われたことがあるんです。
私が指導している子ども向けのスクールがあるのですが、お母さんたちの中にも更年期症状で送迎がつらいという方がいました。ほかのお母さんが、『子どもが練習している間、おしゃべりしませんか?』と誘い、みんなで他愛もないことで盛り上がっていたら、自然とつらい症状が薄れていったそうです。そういったコミュニケーションや楽しい時間で楽になる部分もあるかもしれません」
▶60歳には思えない!若さと健康のヒミツは食事は「母からの教え」と「良質なオイル」がこだわり。人を幸せにしたいなら「胃袋を幸せに!」
――「50歳からの進化」はオトナサローネ読者にとって、とても勇気をもらえることですが、やはり体は正直で加齢には勝てないこともあるのではと思ってしまいます。先ほど、食事管理もご自身でなさっているとおっしゃっていましたが、健康でいるために心がけていることを教えて下さい。
「腸内環境を整えることは意識しています。消化に無駄なエネルギーを使わないように、野菜から食べるようにして、食べる順番を考えています。子どものころから母に『海の物、山の物、カラフルなものをバランスよく食べなさい』と教わったので、それはずっと守っていますね。子どもたちのお弁当も、おかずの種類が少なくなってもいいから、冷凍食品は使わない、など、食事へのこだわりは強い方です。
あと私がこだわっているのは、疲労回復やパフォーマンス向上のために、良質な油を摂ること。MCTオイルやアマニ油などのオメガ3オイルは大会や出張先にも持参します。オメガ3は、脂肪燃焼効果があること、睡眠の質を高めることなど、アスリートだけでなく更年期女性にはうれしい効果が多くあります。トレーニング前にはゼリータイプをさっと飲むのが習慣になっています。宿泊先のホテルでゆっくりできるときは、持参したMCTオイルをコーヒーにポタポタッと入れる行為も好きなんです。
家ではMCTリセッタやアマニ油ドレッシングを愛用しています。ドレッシングは青のボトルの「アマニ油ドレッシング こく和風」が特にお気に入りでまわりのスイマーにもおすすめするくらい。ドレッシングは最後の1滴までしっかり使います。食事を大切にできていると人生の充実度が違いますよね。
オリンピックをはじめ大きなイベントに関わっているときは、『人に喜んでもらいたかったら、胃袋を幸せにするべし!』と思っていました。人は、お腹が空いているときにいい仕事をしないし、どんな人でもおいしいものを食べていると笑顔になって、頑張れるもの。なので、東京2020のときも、よく差し入れをしていました」
▶刺激をくれた、80代のデュエット80代のおばあちゃんも世界を目指す。プールは仲間とともに、介護など「日々の辛さ」を忘れる場所

――健康を維持するためには食事と適度な運動なんだと、お話を聞いていると痛感します。ただ、どちらもわかっていてもできないことが多い。編集部でも、「運動が大切だよね」「運動しなくちゃね」と言うのですが、言うだけで実行できない。一歩踏み出すために、何から始めるのがいいのでしょうか。
「一つは小さくていいから具体的な目標を持つことですね。「今週は5分歩く」でもいいんです。でも、その歩くこと、ジムに行くことがまずできないのであれば、運動するためのウエアを買うことから始めるのもいいかもしれません。いい素材のものでもいいし、流行りのデザインでもいい。新しい服を買うと、これを着て出かけたいと思うのと同じで、このウエアを着てジムに行こうと思えるものがいいんじゃないかな。
ポイントを活用するのも手です。東京都スポーツ協会の会長になりまして、都民のスポーツ振興に取り組んでいます。そのなかで知ったのが、東京都公式アプリを入れると、そのポイントでプールや体育館などスポーツ施設も利用できます。これは東京都の取り組みですが、ほかの地方自治体でも行われているようなので、ぜひ調べてみてください。歩数でポイントが貯まるアプリもありますよね。成果が目に見えて、そのポイントが活用できるのはお得ですよね」
――ポイ活なら続きそうです。どんどん貯まると楽しいですし。小谷さんのお話を聞いていると、「楽しむこと」が常に原動力になっているんだと感じました。
「楽しむためには、ぜひ仲間も作ってほしいですね。今、マスターズ出場のために幅広い世代のメンバーが所属している『東京リズム』というチームに所属しています。30代から上は85歳まで! 83歳と85歳のデュエットがいて、誰よりも早くプールに来て準備をし、2人でどんな演技にしようかとか反省点を話して、練習に生かしている。
先日も、私が練習を終えて仕事に向かおうとしていたら、キャップを被ったまま更衣室に座っていて、2人でおにぎりを食べていたんです。全部着替えをすましてから食べればいいのにと話しかけたら『今日は出来が悪かったから、午後も練習をするの』とおっしゃっていて。すばらしいですよ。私も80代になったときに、あのお2人のように努力を続けられるマスターズスイマーでいたいです。
プールに来る方たちは、年代的に恐らく介護問題を抱えている方もいるし、家の事情もさまざま。だけど、水着を着て帽子をかぶり、ノーズクリップをしたら、そのことは忘れて世界を目指して練習をする。目標と仲間がいるからこそ、大変なことがあってもここに来て、貴重な時間を過ごしています。
だから、オトナサローネ読者の方々にもぜひ目標と仲間を作ってほしいと思います。それと、自分を認めてあげること、褒めてあげること。自分なんか、これしかできない、ではなく、小さな目標をコツコツ達成してどんどん自分を褒めてあげてください。まだまだ私たちは進化できるはずです」
Profile
小谷実可子(こたに・みかこ)
1966年8月30日生まれ、東京都出身。アーティスティックスイミング(旧・シンクロナイズドスイミング)元日本代表。1988年ソウルオリンピックではソロとデュエットで銅メダルを獲得。競技引退後は、スポーツコメンテーターや、様々なスポーツ関連団体で重職を歴任。東京2020オリンピック、パラリンピック期間中は、スポーツディレクターとして大会に貢献。2023年に競技復帰を果たし、世界マスターズ水泳選手権では、2023年から2025年まで3大会連続で金メダルを獲得。2026年4月より、公益財団法人 東京都スポーツ協会の会長に就任。
撮影/沼尾翔平



