
秋冬の乾燥する季節は肌トラブルが増える時期。特に痛みや痒みを伴うだけでなく、仕事や家事がしにくくなる手荒れに悩む人は少なくないでしょう。そんな手荒れは近年、現代ならではの生活習慣が原因となっていることもわかってきました。そこで今回は皮膚科医の高山先生に、意外と知らない手荒れの原因と、今日から実践できる正しいハンドケアについて詳しくお聞きしました。
▶ストレス、室内の乾燥に注意ストレスも関係?「たかが手荒れ」と放置できない悪循環とは
――手荒れと精神的なストレスには関係があると聞きました。詳しく教えてください。
ストレスと皮膚炎は昔から相関性が知られていましたが最近では細胞レベルでも研究が進んできました。アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024では、アトピー性皮膚炎の痒みの誘発・悪化因子として温熱、発汗、ウール繊維、飲酒等と並んで精神的ストレスが挙げられています。特にアトピー性皮膚炎がある人は手荒れも起こしやすいため、ストレスによって症状がさらに悪化することも考えられます。
そして怖いのが、ストレスによって手荒れが悪化するだけではなく、手荒れそのものがストレスになることです。手が荒れるとかゆかったり痛かったり家事や仕事など生活上の制限も大きな負担になったりしてQOLを低下させます。さらには赤みやかぶれなど審美的にも気になってしまう人も多いでしょう。つまりストレスが皮膚炎の悪化に関係することがあり、一方で、手荒れによるかゆみや痛み、生活上の不便さがストレスになることもあります。このような悪循環につながる場合があるため、皮膚のケアとともに、日常の負担にも目を向けることが大切です。
――手荒れというと冬の乾燥や水仕事を思い浮かべますが、最近ならではの原因もあるのでしょうか。
まず挙げられるのが、エアコンを長期間使用する生活です。最近の猛暑によって夏に冷房を長時間使うことも多くなっています。室内の湿度が低くなると、皮膚が乾燥しやすくなることがあります。室内が乾燥して低湿度の環境にさらされると、皮膚から水分が失われやすくなるので、夏であろうと乾燥しやすくなります。
また、コロナ禍をきっかけに頻繁な手洗いが習慣として定着したことも手にとっては大きな変化です。手洗いの回数が増えるほど、刺激性接触皮膚炎や手湿疹といった手荒れのリスクは高くなる傾向があります。もちろん手洗いは感染症対策として大切ですが、石けんと流水による洗浄を何度も繰り返すことは皮膚への刺激になり、乾燥、かさつき、赤み、かゆみ、ヒリヒリ感、ひび割れ、出血、もともとの手湿疹の悪化などを引き起こしてしまいます。
▶同じものに繰り返し触れると皮膚炎に⁉【意外な盲点】スマホも原因に!?冬の乾燥だけじゃない手荒れの要因
――スマートフォンも手荒れに関係しますか?
スマートフォンやグリップリングなどのアクセサリーも、手荒れに関係することがあります。皮膚に触れる部分から溶け出すニッケルなどの金属によって、アレルギー性接触皮膚炎を起こす場合があるためです。また、長時間の使用による摩擦や蒸れが刺激になることも考えられます。
――今まで問題なく使っていたスマホやアクセサリーなら、かぶれの原因ではないと考えていいですか。
そうとは限らないのが怖いところで、アレルギー性接触皮膚炎では、ある物質に繰り返し触れるなどするうちに、その物質に対する感作が成立することがあります。感作とは、体の免疫システムが特定の異物(抗原)を敵として記憶し、再びその物質に触れた際に、アレルギー反応を起こし得る状態のことです。そのため、それまで長年触れていて問題がなかったものでも、ある時から突然かぶれるようになることはあります。
これはスマートフォンだけではなく、たとえば仕事でゴム手袋を使う人がゴムで荒れることもありますし、金属加工に携わる人なら金属によるかぶれが起きることもあります。突然手が荒れてしまったときには、「何年もこの仕事をしていて平気だったから」「ずっと使っているものだから」と普段から触れているものを原因から除外せず、詳しく原因や症状を見ていくことが大切です。
▶ハンドクリームは〇〇で選んで正しいハンドケアは何を塗るかよりどう塗るか!塗る量とタイミングも大切
――手荒れを予防するには、普段からハンドクリームを塗ることが大切かと思います。どんなハンドクリームを選べばいいのでしょうか。
基本的にはきちんと保湿できるものであればいいと思います。それ以上に大切なのは、無理なく続けられることです。
手荒れがあるときは、まず無香料で刺激の少ないものを選びましょう。そのうえで、べたつきなどの使用感も考慮し、無理なく続けられるものを選ぶことが大切です。ひび割れがあると製品によってはしみることもあるため、刺激を感じる場合は無理に使い続けず、皮膚科で相談してください。
――高価なものや特別な成分が入ったものを探すより、続けることのほうが大切なのでしょうか。
そうですね。そして「何を塗るか」だけではなく「どう塗るか」も非常に重要です。手洗いのたびや乾燥を感じたときには、こまめに塗り直してください。また、保湿剤は、塗る範囲全体がしっとりする程度に十分な量を使いましょう。口径約5mmのチューブの場合、人差し指の先から第一関節まで出した量が約0.5gで、成人の手のひら約2枚分の面積に塗る目安になります。製品や塗る範囲に応じて調整してください。
「ハンドクリームを塗っているのに手荒れや乾燥がよくならない」という人は多いのですが、実は単純に塗る量が足りていないケースもあります。
▶ハンドクリームを続けるコツは三日坊主にならないコツは「置く場所」。洗面所、リビング、バッグなど、あちこちに!
――こまめに塗り続ける習慣をつけるコツはありますか。
ハンドクリームを使う場所に置いておくのがおすすめです。洗面所など手を洗う場所にはポンプタイプを置き、洗い終わって手を拭いたらその場ですぐ保湿する。バッグのポーチには小さなチューブタイプを入れておけば外出中も塗れます。リビングなどスマートフォンを見る場所にも置いておけば、気づいたときにケアできます。
またハンドケアを「やらなければいけないこと」にしすぎないことも大切です。刺激の少なさと心地よい使用感、香りなども大切にし、ケアする時間そのものをリラックスできる時間にしてみてください。
30年以上の皮膚科診療の中で手荒れを訴える患者さんは後を絶ちません。手荒れとの戦いは日々の予防も含めて長期戦です。毎回完璧にできなくても、「今日はできなかった」と自分を責める必要はありません。無理なく続けながら、ハンドケアの時間は自分自身を労わるセルフケアの時間だと捉える。そうしたストレスマネジメントも含め手荒れを防ぐハンドケアだと考えてもらえればと思います。
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