裁判官が涙したあの公判 「ここで終わりやで」
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少し前になるが、検察が異例の"情状陳述"を行ったひとつの公判を皆さんご存知だろうか。被告は片桐康晴被告(54)。認知症の母親(86)と心中を図り、一命を取り留めた片桐被告は承諾殺人罪などに問われたが、懲役2年6月、執行猶予3年(求刑懲役3年)の判決を受けた。
一人息子で独身の片桐被告は、父親が亡くなってから認知症を患った母親を介護し続ける生活を5年ほど送っていた。献身的な介護も空しく、母親の症状は悪化。徘徊して警察に保護される日が続いた。仕事を退職し、昼夜逆転の介護生活をするも失業保険が切れ、生活は厳しくなる。家賃も生活費も底をついた。
ある日、「最後の親孝行を」と母親を車いすに乗せて親子の思い出の地を巡った。
僅かな小銭で菓子パンを二人で分け合い、片桐被告は「もう生きられへんのやで。ここで終わりやで」と母に告げると、「そうか、あかんか。康晴、一緒やで。お前と一緒や」と返したという。「お前はわしの子や。(お前が死ねないなら)わしがやったる」という母親の言葉で殺害を決意。母の首を絞め、自らの首も包丁で切ったという。
殺害の経緯をじっと聞いていた裁判官は涙を浮かべ、「痛ましく悲しい事件だった。今後あなた自身は生き抜いて、絶対に自分をあやめることのないよう、母のことを祈り、母のためにも幸せに生きてください」と励ましの言葉を添えた。最後に被告は「母の命を奪ったが、もう一度母の子に生まれたい」と打ち明けたという。
介護する側も体力や経済力が弱くなる"老老"介護は現代を生きる我々にとって深刻な社会問題だ。国民が疲弊してしまう前に、社会保障費の値上げなど徹底した国の取組みが急がれる。
《NewsCafe》