岩手県住田町の仮設住宅に畳が入らない理由とは? | NewsCafe

岩手県住田町の仮設住宅に畳が入らない理由とは?

社会 ニュース
東日本大震災から7ヶ月が経ちました。
宮城県石巻市では最後まで残っていた避難所が閉鎖されました。
まだ行き先が決まらない一部の被災者は「待機所」での生活が始まります。そして、ほとんどの人たちは仮設住宅に入居したり、新たなにアパートを借りたり、親類に頼ることになります。

災害救助法では、応急仮設住宅(仮設住宅)は都道府県が作ることになっています。そのため、県の判断によって差が出ることになりました。宮城県は公有地を優先し建設していましたが、岩手県は民有地を含めて仮設住宅を建てていきました。そのため、被災者が仮設住宅に移るスピードは岩手県は早かったのです。

「民有地を含めて仮設住宅を建設したのは県独自の判断です。岩手県の場合、被災地の奥にはすぐ山があります。そのため、近くには土地がなく、(民有地を含めて検討するといった)見切りが早かったと思う。私たちは一日も早く避難者に仮設住宅を提供したかった」

岩手県建築住宅課はこう述べました。

仮設住宅を巡っては様々は課題があります。初期に作られた仮設住宅はプレハブメーカー系の会社が建てました。避難所生活から仮設住宅へ移ることを最優先していました。その際、スピード感を優先したため、工法としては荒くなってしまい、雨漏りやがたつきが見られます。その後に住宅メーカー系が建てた仮設住宅は、それまでよりも快適な住宅づくりになり、雨漏りなどの苦情は耳にしません。

また、暑さや寒さ対策も重要になっています。猛暑が続く中、仮設住宅で取材した時です。多くの人から「暑い、暑い」というのを聞きました。それまでほとんどエアコンを使ったことのない人もエアコンを使わざるを得ない状況でした。また、エアコンを使わないために、日中に暑い時にはなるべく部屋にいないといった工夫をしている人もいました。

これからは冬に向けて行きます。どのように寒さ対策をしていくのでしょうか。岩手県の例を見てみましょう。岩手県では、初期に多く建てられたプレハブメーカー系の仮設住宅に断熱材を取り付けることにしています。ハウスメーカー系の仮設住宅は当初から断熱材が入っているため、対象外です。

また、岩手県は希望のある仮設住宅には畳を設置することにしました。寒さ対策と、住環境の快適さを求めたものと言えるでしょう。しかし、住田町が独自に建設した仮設住宅は対象外となったのです。ちなみに、住田町の仮設住宅(住田型仮設住宅)は、音楽家の坂本龍一さんが代表を務める森林保全団体「more trees」などが支援していることで話題となりました。

住田型仮設住宅が、畳設置の対象外になったことについて岩手県は次のように話しています。

「住田町の仮設住宅は、避難された方のために町独自で作ったものです。その際、NPOと連携するなど、町独自のやり方をして、災害救助法の適用を受けませんでした。ただ、町から要望があれば検討します」(建築住宅課)

住田町で被災者の支援をしている生活支援相談員の金野純一さん(67)は、「今は非常時なんです。どうして役所の常識を押し付けるのか。ここにいるのは同じ県民なんだから、適用範囲を広げればいい。災害救助法の枠組みを広げるように、県が国に説明すればいい」と話す。そして、「これは畳だけの問題ではなく、他に問題が生じた場合も同じことが言える」とも主張しています。

現在、仮設住宅の自治会が県に畳の設置を要望しています。しかし、県からは「町独自の仮設住宅であり、公営住宅と同じ扱い」との返事があり、現在の枠組みでは畳が設置されません。町は、自治会と県とのやりとりは知っているものの、県に対してはまだ動いていません。「町独自で畳を入れるか」と問いますと、「結論は出ていない」との答えでした。また、「町として県に要望するのか?」と聞きますと、「自治会から県に要望をしていますが、町には要望がない。要望があれば検討します」との答えでした。

もちろん、畳を入れるだけなら、町の予算でもできなくはないでしょう。また、NPOの支援や寄付などでまかなうことができるとは思います。しかし、金野さんが抱いているのは、住田町の仮設住宅に住んでいる人たちが県から見放されてしまうのではないか、という危機感です。
そうならないように、県や町が知恵を出し合ってほしいものです。

[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://foomii.com/mobile/00022)を配信中]

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