「想定外」から学ぶ | NewsCafe

「想定外」から学ぶ

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12月になると「今年の…」と言う企画が多くなる。
ユーキャン新語・流行語大賞の大賞は「なでしこジャパン」。日本漢字検定協会が12日の漢字の日に行う「今年の一字」は下馬評通り「絆」であった。

3月11日の東日本大震災のあと、多くの日本人が「一人では生きてゆけない」と感じた中で自然に出てきた言葉が「絆」だ。核家族化・孤立化の中で失われてしまった人間らしい感覚がそこに感じられる。

一方、阪神淡路大震災の年の今年の漢字は「震」と言う荒々しいものであった。それに比べると「絆」は口あたりの良い言葉。責任が果たせたような気分になるから不思議である。こんなおまじないの様な言葉で未曾有の震災被害を乗り越える勇気が出るのか…と心配になるのは否めない。

さて、一字と言う枠をはずせば、今年の流行語大賞は「想定外」だと思う。
政府、東京電力、原発問題で理屈を言う学者、出来もしない予知を言う地震学者…何かと言うと「想定外」を乱発するのでいささか食傷気味なことは確かである。
「想定外」には良い想定外もあれば悪い想定外もあり、本来は言い訳に使う言葉ではないのだが、弁解語として定着しそうなのが心配だ。いずれにしろこの「想定外」と言う言葉は、人間の知恵のお粗末さと予測のおぼつかなさを我々に教えてくれた言葉。東日本大震災の遺訓として後世に受けつがれるべき物と考える。

あの経験したことの無い無慈悲な揺れ、不気味な緊急地震速報の警報音、帰宅難民騒ぎ…。更にはその後のガソリン不足騒ぎなど想定外の出来事も、徐々に過去の出来事になりつつある。

人類の長い歴史の中で、突然の天変地異、疫病の大流行、大凶作、大恐慌…幾度となく「想定外の出来事」はあった。しかし想定外を克服し、従来にない新しいものを作る事で人類は変化し、成長してきたともみえる。

多分だが、全てが「想定内」では人類はかなり昔に行き詰まっていたと思う。そういった意味では「想定外は変化の母」なのだ。個人の生活でも、予期しない会社倒産や突然の左遷や解雇にはじまり、大病や失恋などの様々な出来事があるが、これも後で振り返ると成長の原動力になっている。

被災地の人々の率直な気持ちは、元に戻ることを望むケースが多数と察するが、一部には新しい創造を模索する動きもあると聞く。想定外の大被害を「新しい農業、新しい漁業、新しい街づくりや新しい東北」の創造につなげて欲しい…と切に願う。

寒さが厳しくなった被災地の皆さんの健康を思い、来年が希望の見える年である事を祈念して、今年の終わりとする。

[気になる記事から時代のキーワードを読む/ライター 井上信一郎]

《NewsCafeコラム》

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