生活困窮者対策も争点のひとつ
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また、「政権の枠組み」以外の、具体的な政策について一般の人々は何に関心があるのでしょうか。朝日新聞は、11月22~28日の一週間、選挙に関するツイート80万件を分析しました。Twitter上で、どんな政策課題に触れているのかを調べたのです。それによると、「原発」に関連した言葉が圧倒的で、11万206件あったといいます。次のTTP(環太平洋経済連携協定)が3万6235件ですから、3倍以上の差があったことになります。Twitterでは原発がメインの争点ということでしょう。
もちろん、原発政策は重要です。2011年3月の東京電力・福島第一原発の事故で福島県を中心に放射性物質が拡散しました。「冷温停止状態」が宣言されましたが、事故処理はまだ終わっていません。この処理をどのようなスケジュールでして行くのかは緊急の課題です。また、原発の再稼働を進めて行くのか、原発をゼロに近づけるのか、といった原発の是非についてが関心を呼ぶことと思います。
しかし、私はまた別の争点を取り上げてみたいと思います。それは生活保護制度です。憲法25条の生存権に由来する生活保護が見直しが叫ばれています。民主党政権下で「保護費の引き下げ」が検討されています。自民党もより厳しい見直しを訴えていますから、どんな政党が中心となったとしても、引き下げがやむなし、の状況です。
ただ、政権の枠組みがどうなるのかで変わる可能性があるポイントがあります。それは「現物給付」をどうするのか、といったところです。現物支給を公約で明示しているのは、自民党や日本維新の会です。自民党は「自治体における現金給付と現物給付の選択的実施」と書いています。日本維新の会は「(1)努力に応じた、(2)現物支給中心の、最低生活保障制度を創設」と盛り込んでいます。
現在の制度でも、医療扶助(けがや病気で医療機関にかかった場合)や介護扶助(要介護、要支援と認定された場合)は原則として現物支給です。この枠を拡大するかが焦点です。すでに厚生労働省は、来年度の概算要求で、住宅扶助(家賃相当分)を大家に直接振り込む形とする「現物給付」を目指しています。 そのため、住宅扶助の現物給付も「枠組み」と関係なく、実施されることでしょう。
住宅扶助の現物給付のメリットとしては、きちんと使われたかどうかは把握しやすいことになります。未払いの家賃がなくなることで、制度の目的がかなえられます。その家賃を目当てにした貧困ビジネスをチェックできるとも考えられています。一方、問題点として、大家側が、住宅扶助の限度額まで家賃を上げてしまい、かえって生活保護費を上昇させてしまうのではないか、と心配されています。また、税金を使っていることから大家の適正調査をする可能性があり、その費用もかかるのではないか、と指摘されています。
「健康で文化的な最低限度の生活」を憲法は保障しています。たとえば、食費に毎回300円かかるとして、一ヶ月で6回ほど食事を抜くと、1800円となります。その1800円で映画に行くのは、現行制度の中ではできます。しかし現物給付になると、たとえば、一定量の米が送られてくるとしますと、そうした工夫ができません。もちろん、生活保護受給者がパチンコで使っているとの批判もあったりします。しかし、精神的なバランスを保つための「遊興費」であればしかたがないと思うのです。何によってバランスを保つのかは人それぞれです。現物支給はそれを限定しまうのです。
お笑い芸人の親が不正受給しているのではないか、と今年は話題になりました。 もちろん、不正受給はなくしていかなければなりません。また、生活保護費よりも低い賃金のワーキングプアと呼ばれる人たちへの政策も別途、必要になることでしょう。こうして考えると、あまり選挙の争点としては話題になりませんが、生活保護制度をはじめとする生活困窮者対策も争点のひとつなのです。
[ライター 渋井哲也/生きづらさを抱える若者、ネットコミュニケーション、自殺問題などを取材 有料メルマガ「悩み、もがき。それでも...」(http://magazine.livedoor.com/magazine/21)を配信中]
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