事件を忘れないために「明日も喋ろう」 | NewsCafe

事件を忘れないために「明日も喋ろう」

社会 ニュース
「明日も喋ろう」という朝日新聞阪神支局の連載企画記事の取材を受けました。26年前の1987年5月3日、同支局に散弾銃を持った犯人が、小尻知博記者(当時29)が亡くなった。また、犬飼兵衛記者(68)が重症を負いました。この事件をきっかけに、「言論の自由」を守る意味を込めて同支局が続けているものです。

この事件の前、1月24日に朝日新聞東京本社銃撃事件が起き、3日後に「赤報隊」を名乗る者が犯行声明を出したのです。その後に阪神支局に、また9月には名古屋本社寮襲撃事件も起きていることから、「警視庁広域重要指定116号事件」とも、「赤報隊事件」とも呼ばれています。

1987年、私は高校2年生でした。ゴールデンウィークの、しかも「憲法記念日」に起きたということで、この事件を覚えています。報道の記者が殺害されたことは、高校生ながらもショックでした。朝日新聞社会面に毎年連載されている「みる・きく・はなす」を読むたびに、この事件のことを振り返る機会になっていました。

1993年の事件の日に、小尻記者を追悼する報告書「明日も喋ろう 弔旗が風に鳴るよう」が出されました。この報告書が阪神支局の記事のタイトルの元になりました。このとき、私は新聞社に入社一年目で、報告書を取り寄せた記憶があります。その内容を見たとき、小尻記者が狙われた理由がまったくわかりませんでした。果たして、小尻記者を狙ったものだったのか。たまたまだったのかは、事件が未解決のため、わかりません。

1995年1月17日、阪神淡路大震災がありました。この震災の取材で、兵庫県西宮市の朝日新聞阪神支局を見たのです。このとき、事件のことが頭をよぎりましたが、特に支局に寄ることがありませんでした。その後もこの事件の報道があるたびに、「阪神支局に行きたい。行かなければ」と思うようになっていました。そして2009年5月3日、新しい建物になっていた阪神支局に行くことができたのです。

事件の資料室があり、また、小尻記者たちが座っていたソファなども展示されており、事件を風化させない取組みがなされていました。私がそのとき、訪問をした感想を記していました。今年の「明日も喋ろう」は、その訪問者の記録からたどっているものでした。この連載は阪神版と、デジタル版で読むことができます。

小尻記者には娘さんがいました。その娘さんはテレビ局に勤務しています。遺族は「深い感化しみと怒りは薄れることなく、一生消えることもありません」とコメントしました。

人は日々、自分自身の日常を生きています。その人にとって重要なことが事件や事故、災害とは限りません。また忘れることで楽になる人もいると思います。事件は絶対的に風化していきます。何もしなければ、忘れてしまいます。

しかし、誰かが語り継ぐことで、そのときの教訓をいかすことができるのではないか。そう信じています。それは、東日本大震災にも通じています。だからこそ、企画の担当記者は、私が震災取材をしている現場まで足を運んだのです。

5月3日は憲法記念日。と同時に、朝日新聞阪神支局で小尻記者が銃弾に倒れた日です。それを誰かが覚え、伝えていくことができれば、と思っています。

《NewsCafeコラム》

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