『国宝』李相日監督と『ノマドランド』クロエ・ジャオ監督に黒澤明賞 第38回東京国際映画祭
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黒澤明賞は、東京国際映画祭が世界の映画界に貢献した映画人に贈る賞で、2022年に復活した。
李相日監督は、2010年『悪人』、2016年『怒り』など、社会の矛盾や人間の罪を描く作品で知られ、歌舞伎を題材にした最新作『国宝』はカンヌで話題となり、邦画の実写で100億円を超える成功を収めた。
クロエ・ジャオ監督は北京出身の脚本家、映画監督、編集者、プロデューサーで、3作目の長編映画『ノマドランド』は、2020年ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞、アカデミー賞を受賞。またマーベル・スタジオ作品『エターナルズ』を共同脚本・監督。2023年にはプロデューサーのニック・ゴンダと共に製作会社「Book of Shadows」を設立。最新作は、ジェシー・バックリーとポール・メスカル主演の『Hamnet』を共同脚本・監督し、2025年に公開予定だ。
李相日監督は「敬愛する山田洋次監督はじめ、審査委員の皆さま、並びに東京国際映画祭に感謝申し上げます。なにより、スタッフ・キャストの献身なしにこのような賞に浴すことは叶いませんでした。そして、これまでの作品に関わってくださった皆さまに深く感謝いたします。御多分に洩れず、私の中でも黒澤明という名は永久に超えられない壁として君臨しています。映画をめぐる環境がいかに変わろうとも、人間の本質に迫るその力強さは色褪せることなく、映画が社会や個々の人生に多大な影響を及ぼすことを示しています。その名を冠した賞を背負う意味を、この先も自らに問い続けたいと思います。この度は誠にありがとうございます。」と述べた。
クロエ・ジャオ監督は「本賞を受賞することとなり、光栄に存じます。黒澤明の作品には、自然の最も広大なスケールと、人間の心理の最も深い真実が共存しています。この系譜に連なることは、本当に謙虚な思いを抱かせられます。物語の語り手は、文化、国境、過去と未来、光と闇、喜びと苦痛、愛と死を結びつける架け橋です。私たちは経験を錬金術のように変容させ、それらに意味を与え、カタルシスを得ることを願っています。東京国際映画祭、選考委員会、そして観客の皆様に、私たちを支えてくださり、私たちの目的を思い起こさせて下さったことに、心から感謝申し上げます」とコメントを寄せている。
なお、授賞式は11月3日(月・祝)に帝国ホテルで開催予定となっている。
選考委員による受賞理由
■李相日監督
李 相日監督は、しばしば社会の矛盾や人間の罪の問題を扱った重厚なテーマを描きつつ、それを多くの観客の共感を呼ぶヒューマニズム溢れる人間ドラマとして昇華させてきました。最新作『国宝』はカンヌ監督週間を始めとする多くの国際映画祭で上映されるとともに、日本国内でも幅広い観客層に支持され、商業的な成功をおさめました。今後の日本映画、そして世界の映画を牽引することを期待し、李 相日監督に黒澤明賞を授与します。
■クロエ・ジャオ監督
クロエ・ジャオ監督は、通常のハリウッド映画とは一線を画した詩的かつリアリスティックな作品を発表してきました。特に『ノマドランド』はヴェネチア映画祭金獅子賞、アカデミー賞作品賞を受賞するなど世界的に高い評価を受け、その成功はアジア系女性監督たちに大きな勇気を与えました。その功績と今後の世界映画への更なる貢献を期待し、クロエ・ジャオ監督に黒澤明賞を授与します。
《シネマカフェ編集部》