この夏の猛暑日が続く中、久しぶりに叔母に電話をしたところ、なんとなく元気がありません。少し気になり様子を聞くと、体調を崩しているわけでもなく、食欲もあり、熱中症にも気を付けている。強いて言えば「暑さで外出を控えているから、友だちと会う機会が減って少し寂しい」そうです。
「最近はスキンケアが億劫」な80歳の叔母。「特別な美容」を提案してみたところ
叔母は今年80歳ですが、その生活ぶりは、完全に“アクティブシニア”。定期的に友人とカラオケや食事の時間を楽しみ、美意識も高く、出かけるときはフルメイク。
なのに、最近は、外出頻度とともにメイクをする機会も減り、「スキンケアも少し億劫になってきた」と言います。そのとき頭に浮かんだのが、6月に私(ライター小林)がセラピストの方に取材を行った「介護美容」の存在でした。
「介護美容」とは、介護を必要とする方へ美容を通じて心身のケアを行うこと。「介護」と「美容」という一見異なる2つの分野が結びつくことにより、高齢者の自立支援やQOL(生活の質)の向上など、あらゆる効果が見られるようです。
今現在、介護は無縁のように思える叔母ですが、「美容で(心が)元気になってほしい」との思いから介護美容を提案! すると「ぜひ受けてみたい。お友だちも誘いたい」と一気に声のトーンが明るく変化します。
そこでさっそく、前述の取材先でもある「一般社団法人日本介護美容セラピスト協会(株式会社ナリス化粧品100%出資)」(※)に、叔母の施術をお願いすることにしました。
“アクティブシニア”な80代はどう変わる? 心がほぐれる「メイクキュア セラピー」
(一社)日本介護美容セラピスト協会の介護美容は、施術を受ける方とコミュニケーションをしながら進める、参加型のセラピーなのが特長。日常的にスキンケアやポイントメイクで手先を動かすことは、能力維持にもつながると考え、「できることは自分で行う」といった部分も大切にしています。
今回は、オールハンドによりフェイシャルからメーキャップまでを行う「メイクキュア セラピー」(30分)をセレクト。ほかにも、「ハンド」「フットケア」「フェイシャル」「アロマ」などのコースがあります。
せっかくの機会なので私も叔母に同伴し、その様子を取材させていただくことに! 40年以上の付き合いという88歳の友人、サチコさんもお誘いし、順番に「メイクキュア セラピー」を受けることになりました。

施術前の叔母(80歳)[左]とサチコさん(88歳)
「いつも外出時はしっかりメイクをするけれど、今日は眉を描いただけ」という叔母と、「コロナ禍でマスクが習慣になってから、まったくメイクをしなくなっちゃった」というサチコさん。そんな対照的な2人ですが、「80代の肌とは思えないほど、すごくキレイ~」と、セラピストの鈴木ともみさんからお褒めの言葉をいただきました。

セラピストの鈴木ともみさん
前職はリハビリ病院の作業療法士だった鈴木さん。リハビリに美容を取り入れると自己肯定感が高まり、心も体も回復してゆく場面に何度も立ち会ったそうです。その経験から、「美容が心身の回復に与える効果」に魅力を覚え、現在の道に進みました。鈴木さんの明るい笑顔で、一気に和やかな雰囲気に。やや緊張気味だった叔母とサチコさんがリラックスしたところで、まずは「メイクキュア セラピー」のスキンケアからスタートします。
高齢者の「使いやすさ」にこだわったスキンケアアイテムの魅力
スキンケアで使用するのは、(株)ナリス化粧品の高保湿スキンケアブランド「momote(モモテ)」の泡化粧水と乳液。こちらは、実際に介護現場で働くセラピストや、高齢者の声(身体の変化に伴う化粧品の使いづらさなど)を受け、(一社)日本介護美容セラピスト協会と(株)ナリス化粧品が共同開発した商品です。

「momote(モモテ)」 泡化粧水300ml、乳液200ml/(株)ナリス化粧品
まずは乳液を使い、軽くクレンジングも兼ねたマッサージ。こちらは程よい厚みがある乳液なので、マッサージには最適なのだとか。汗や皮脂の汚れも取りながら肌になじませ、ふっくら潤いも与えます。温かく包みこむような鈴木さんの施術に「始まったばかりなのに、気持ちいいから眠くなってきちゃったわ~」とサチコさん。

肌へすーっと、なめらかにのびてゆく
特に高齢の方は、瞼(まぶた)や口元のたるみにお化粧や汚れが溜まりやすいので、その辺りは念入りに行うそう。次に、泡化粧水をワンプッシュほどコットンに染み込ませた鈴木さん。「ふきとり化粧水として使います」と、ゆっくり肌の上を滑らせるようにふきとりながら、洗顔では落ちにくい余分な老化角質を取り除いてゆきます。

「さっぱりしていいわね~」とサチコさん
過去の記事でも紹介したことのある「泡化粧水」ですが、実際に商品を目の当たりにすると、高齢者視点での「使いやすさ」があることを実感!
何といっても、容器がポンプタイプという点。負担になる蓋の開け閉めや、容器を倒して中身をこぼしてしまう心配もない。また、泡状なので「手から化粧水をこぼしてしまう」といった不安も解消されます。最近「化粧水の蓋が開けづらい」と言っていた母に、ぜひとも薦めたい!

コットンにとってふきとれば、洗顔代わりにも!
(株)ナリス化粧品は、今から88年前、1937年に初代ふきとり化粧水の「コンク」を発売。肌に塗って美しく見せる「足し算の美容」が主流の中、余分なものは「取り除き」必要なものを「与える」同商品は、スキンケアの概念を変えるアイテムとして、徐々にファンを獲得していったそう。
「ふきとり化粧水の研究を続けて88年」ということは、「コンク」はサチコさんと同い年! なんだかご縁を感じます(笑)。「ふきとりの技術」でさっぱりしたあとは、再び乳液でマッサージ。

すっかりリラックスした様子
唾液の出やすい3つの唾液腺「耳下腺(じかせん)・顎下腺(がっかせん)・舌下腺(ぜっかせん)」をマッサージすることで、口腔内の健康(乾燥の緩和、口臭予防など)にもつながるそう。こういった唾液腺マッサージを丁寧に行うのも、介護美容ならでは。
泡化粧水のベースとなったのは、敏感肌用の化粧水。これまで高齢者施設などでは「化粧品は刺激がある」として受け入れ難い部分もあったようですが、そういった声にも配慮したことで、安心して使ってもらえるようになったとか。

「肌がツヤツヤだわ~」
自らの肌に触れ「わぁ、しっとりしてる。いつもの肌じゃないみたい!」と驚くサチコさん。スキンケアによって肌の明るさはもちろん、自然と表情も変化したように思えます。叔母も「サチコさん、(お化粧する前から)すでにキレイ~」と感激!
つづき>>>いよいよメイクに進みます。「え、それ使うんですか!?」意外すぎるテクが出てきた!!!
(※)2014年4月の設立以降、心と体の美容療法®を創出。全国で、介護と美容の手法を取り入れたセラピスト(ビューティタッチセラピスト®)の養成と認定講座を開催し、2025年3月末でセラピストの認定数は3000名を突破している。